「組織拡大」強化のススメ
仲間をつなぎ仲間を増やすLINEのグループチャット機能を活用
「押し付けない」姿勢が加入につながる
テレビショッピング番組「ショップジャパン」でおなじみのオークローンマーケティング社に「ショップジャパンユニオン」が結成された。同労組はLINEのグループチャット機能を利用した加入活動を展開し、契約社員やアルバイトを含む職場の約7割の賛同を得て組合活動をスタートした。仲間づくりはなぜうまくいったのか。成功例を紹介する。
オークローンマーケティング社は、NTTドコモグループの企業。情報労連の組織拡大オルグは労働組合の立ち上げ前から会社対応を行い、管理職などに情報労連の活動を説明してきた。こうした会社対応はスムーズな組合づくりや結成後の活動に生きている。
その上で、組合づくりの「核」となったのは、現・委員長の菊池さんと書記長の小笠原さん。2人は、情報労連の担当者から労働組合結成の話を始めて聞いたとき、こう感じた。菊池さんは「砂漠の中で水を得たような気持ち」と振り返る一方、小笠原さんは「知らない商品を売り付けられる気持ちでした」と率直に打ち明ける。「最初は労働組合に関する知識はゼロでした。自分で調べてみると職場を良くしていけるし、それは会社のためにもなると感じました」と振り返る。
組合加入の対象者は200人強。その大半は契約社員やアルバイトだ。職場のコールセンターは、24時間稼働のシフト勤務制。働く時間はばらばらで、加入活動を一度に行うのは難しい。こうした環境で菊池さんは、「『1対1』の対面の加入活動では逆効果を生むのではないかと考えました」と話す。その理由は「業務外の時間を取られたくない、組合加入を強制されたくないと考える人が多いから」だ。直接のコミュニケーションが難しい中で、加入のためには違う方法が必要だと考えていた。
そこでLINEのグループチャット機能を活用した。グループに登録してもらうために、会社の許可を得て二次元コードを掲載した巨大なポスターを休憩室に張り出した。グループチャットは口コミで広がり、約150人が登録してくれた。
グループチャットには労働組合の情報をすべて掲載し、チャットで質問できるようにした。寄せられた質問には組合メンバーが情報労連の協力を得て回答するが、その回答はチャットに登録したメンバー全員に伝わるようになっていた。一方、情報労連の担当者が対面の相談会を開催し、オンラインとオフラインの両面で加入活動を展開した。その結果、対象者の約7割の賛同を得て労働組合が結成された。結成後も組合員は増えている。
仲間づくりが成功したポイントは何か。小笠原さんは、組合加入を押し付けないことだと話す。「入ってほしいと勧誘すると相手は引いてしまいます。だから情報はきちんと提供する一方で、組合に加入するかどうかは自分で判断してくださいというスタンスを取りました」。こうしたスタンスの背景には日常の業務経験が生きている。テレビ通販などでは表現を少し変えるだけで商品の売り上げが変わるからだ。
こうした工夫がありつつも、土台になっているのは、やはり人間関係だ。組合づくりの「核」になったメンバーが、職場の人たちから信頼されていることが、仲間づくりの基盤になっている。
菊池さんは、「自分たちの経験を他の労組の人たちとも共有したい」と話す。成功体験の積み重ねが、大きな成果に結び付くはずだ。