「組織拡大」強化のススメ
仲間をつなぎ仲間を増やす仲間を増やし「2万通建」を達成
目標達成のポイントは?
──目標よりも早く「2万通建」が実現しました。取り組み強化のきっかけは?
原きっかけの一つは、グループ会社の合併でした。労働組合のある会社とない会社の合併で、労働組合のある会社が吸収される側だったので、その組合をどう維持するかが課題になりました。一般的に、吸収される側の労働条件が悪くなりがちで、組合活動を存続できるのかという不安もありました。そこで組合のなかった会社に労働組合を結成し、両方に組合がある状態で合併しました。
通信建設業界では2010年代から企業再編が続いています。合併などで労働条件がどう変わるのか組合員は不安を抱えています。会社の説明が不十分でも、労働組合があると不安が解消されることも多く、労働組合の必要性を強く感じました。当面の目標は、グループ会社100%組織化です。
茂木私たちも同じです。実際の職場では、元請け企業とグループ会社の従業員が同じフロアで一緒に仕事をしています。その点からもグループ会社の組織化は長年取り組んできた課題でした。その中で企業再編は組織化を促すきっかけになりました。
増本コムシスでもグループ企業間の人材異動が非常に増えています。その中で出向や転籍をする社員の労働条件が課題になっています。特に休暇・休業制度や定年退職年数のような労働条件がばらばらだと、異動する組合員は不安になります。労働組合としてはグループ企業間での規定の統一を繰り返し訴えています。このことが労働組合をつくるきっかけの一つになります。
茂木労働組合があると新しい会社の労働条件について会社と協議することができ、組合員の労働条件を守ることにつながりますね。
橋川私たちも協力会社の合併が組織化のきっかけになりました。合併した協力会社から労働相談があり、それが組合の結成につながりました。
──組織化はどのような取り組みから始めましたか?
原まず企業訪問から始めて、会社の幹部に労働組合の活動などについて説明します。労働組合の結成後に円滑な組合活動を展開するためには、会社の理解はとても重要です。これは労働組合をつくる、つくらないにかかわらず定期的に行っています。
通信建設企業の幹部は、NTTとつながりのある人が多いので、労働組合というとNTTの労使関係をイメージする人が多く、おおむね好意的に受け入れてくれます。
会社の理解を得る活動と同時に、さまざまなネットワークを生かして組合のまとめ役となる人を探します。仕事でつながりのある人や、会社の過半数代表者が多いですが、労働相談から組合の結成に至ったケースもあります。まとめ役を探す作業は、組合結成の中で非常に重要な作業ですが、同時にとても大変です。
茂木結成後の活動をスムーズにするためにも、企業の理解を得ることは大切です。会社には次のように労働組合の役割を説明しています。職場の意見を労使で共有して問題解決を図れるとか、組合役員を経験することで人材育成につながるとか、福利厚生が充実するとか。
その上で、職場のまとめ役となる人を探して、職場説明会を行うというステップを踏んでいます。職場説明会には、結成後の活動への理解を得るため、会社の管理職にも入ってもらっています。
大変なのはやはり、まとめ役となる人材を探すことです。組合のリーダーになってもらうだけに、周囲から信頼されていることが大切です。会社や仕事上のつながりの中から探していきます。
増本比較的規模の小さい会社と話していて評判がいいのは、福利厚生です。小さい企業にはそうした制度がない会社が多いので、共済の話をすると喜ばれます。
ある程度の規模の会社には、労働組合を通じた労使コミュニケーションのメリットを話しています。企業合併などで社員数が増える場合などはなおさらです。
橋川組織化した協力会社には、私たちの会社から出向している組合員がいたので、その人のネットワークを使ってオルグ活動を展開しました。会社の役員も共通しているのでコミュニケーションは比較的取りやすかったと思います。
──加入活動で一般の従業員に説明する際の課題はありますか。
原課題はたくさんあります。説明会では、労働組合をまったく知らない人たちに話をすることがほとんどです。若い人たちが口をそろえて言うのは、「労働組合は会社とけんかしているんですよね?」「会社とはもめたくない」ということです。
若い人たちは、労働組合に「会社に背いている人」という印象を持っています。だから説明会では必ず、「会社と労働組合は対立的ではなく、労使協調であり、労使ともにめざすところは同じで、企業の発展を求めている。労働組合の活動は、会社員としてマイナス要素ではなく、むしろプラスの活動をしている」と強調しています。そうしなければ、会社と単にけんかする存在だと思われてしまうからです。同時に多くのグループ会社に労働組合があることを説明して安心感を持ってもらうようにしています。
また、説明会でよく質問されるのは、組合費を払うメリットは何ですかということです。回答としては、会社の制度に従業員の意見が反映されやすくなるとか、福利厚生が充実するなどの説明をしますが、理解してもらうまでには丁寧な説明が必要です。
その上で直面するのが、「フリーライド」問題です。組合に入らなくても同じ制度が適用されるのなら、加入しなくてもいいという人が必ず出てきます。そういう人への対応としては、周りの人に組合に加入してもらい、その人だけが未加入になるような状態をつくります。そうすることで、「みんなが会社を良くするために協力してお金を出し合っているのに、自分だけはその恩恵を受けて協力しなくてもいいですか」と考えてもらえるようになります。そう考えてくれれば、多くの場合、組合に入ってくれます。要は、外堀を埋める作戦です。
──そのためにはどんな工夫を?
原加入説明ではあらゆることをしています。個別のオンライン説明会や動画のアーカイブ視聴、アンケートフォームの設定など、とにかく稼働がかかります。
同時に、「最後の一人まで切り捨てない」をモットーにしています。そのため、一人のために専従者が説明に行くことも嫌がらず、丁寧に対応するようにしています。たとえ最後の一人が加入してくれなくても、その人にきちんと説明をしたという実績が後で生きてきます。
茂木加入説明の際は、メリットをしっかり説明するようにしています。職場の身近な問題解決につながること、職場のコミュニケーションが活性化すること、福利厚生が充実することなどです。
加えて、春闘の結果を具体的な数値を使って説明しています。グループ全体の賃上げ結果などを示して、グループ会社の労働条件の底上げを実現してきた実績を示しています。
一方で、フリーライダー問題には同じように直面します。その際は、「数は力」であることを説明します。労働組合が成果を勝ち取るためには、100%近い人が組合に入り、「みんなの総意」として要求することが重要です。それによって会社に思いが伝わります。
新規結成した組合でもオープンショップで約90%の従業員を組織化しています。組合の必要性をきちんと理解してもらった上で加入してもらうことは、労働組合の意見を強くする意味でも大切だと考えています。
増本オープンショップ制の方が、会社に対して自由に発言しやすいですよね。
茂木オープンショップだからこそ、組合活動にも会社との関係にも一定の緊張感が生まれると思います。
──「メリット論」を聞かれることが多いようですね。
増本新入社員の組合加入のハードルも年々上がってきています。以前と比べて組合加入のメリットを聞かれることが増えました。そのため、今年の新入社員説明会でちょっとした工夫をしました。単なる「委員長あいさつ」にするのではなく、その場でアンケートを取って相互コミュニケーションを図りました。最初は、「今どんな気持ちですか?」という質問から入りつつ、「会社に対して何を求めていますか?」などと質問しました。すると、ワーク・ライフ・バランスなどの項目が上がりました。そこで「皆さんの実現したいことのために労働組合がありますよ」という話をしたら、反応も良く、理解度が高まったのではないかと思います。
原会社の制度を知らない人が多いですよね。グループ会社の説明会では、会社の制度が従業員に伝わっていないとよく感じます。そこで労働組合から伝えると感謝してもらえます。春闘でのグループ会社の賃上げも従業員に伝わっていないことが多いです。
橋川私は組合のデメリットを最初に説明して、それからメリットについて話すようにしています。ただメリット論だけでは難しいと感じることも多いです。周りの信頼できる人からのフォローがあると組合加入も広がっていきやすいと感じます。
──最後に今後の展望について教えてください。
原当面の目標は、グループ会社の100%組織化です。グループ会社の組織化を進めていって、労働組合のない方がおかしいという状態にしていきたいです。
その上で現在の課題は、結成後の組合運営です。労働組合結成後の運営を当該の執行部だけに任せてしまうと孤立してしまいます。しばらくは手厚いサポートが必要です。その際、大切なのは、学習会というよりも、もっと手取り足取りの丁寧なフォローだと思います。新しい執行部のメンバーは、団体交渉を設定する方法もわかりません。そういう実務レベルのサポートが大切だと思います。
茂木グループ会社100%組織化をめざしていきます。また、エクシオさんと同じように新しく加わった仲間のフォローが大切だと考えています。組合ができただけではなく、組織運営がきちんとできるように支援していきます。労働条件の面では、時間外協議や労働安全衛生委員会などの取り組みをグループで統一できるようにしていきたいです。
橋川新規結成した組合は、今は支部扱いなので、ゆくゆくは単組として自立できるようにサポートしていきたいと思います。
増本人手不足の中で、若手組合員の離職率が高まっています。転職が当たり前になった若者に対して、終身雇用が前提の企業別労働組合の役割が問われるようになっていると感じます。転職しても組合員であり続けられるような枠組みも必要ではないかと感じています。