復興の力
人の力が復興の源復興を支える人とネットワーク
日常の「小ネタ」を積み重ねて


時間の経過とともに変わる課題
東日本大震災のような大規模災害が起きると、当初は、「雇用調整助成金」をはじめ、さまざまな公的支援が緊急措置として実施されます。ただ、そうした支援は、期限付きであることが多く、それに伴い、雇用機会も減少していくため、公的支援に頼らない自立的な復興が求められるようになります。
他方、復興の過程では産業構造も変化します。災害直後は建設やインフラ関連の需要が高まり、それに伴う雇用も増加しますが、復旧が一定程度進むと、そうした仕事も減っていくため、新たな仕事を見つける必要があります。
その一方で、被災地に対する社会からの関心の低下という課題もあります。被災地には震災直後、全国から応援の声がたくさん届きます。ただし、そうした社会の関心も時間の経過とともに薄れていきます。そのことは、被災地で暮らし、頑張って働く人たちに不安をもたらします。被災地の人たちが繰り返し口にする「忘れないでほしい」という言葉は、そのことを物語っています。公的支援の終了だけではなく、社会的な関心低下も必ず復興の課題になります。その点でも、情報労連のような情報に携わる労働組合が、その思いや状況を伝えていくことは大切です。
地域を守るリーダーの存在
人口減少や産業振興が復興の課題としてあるのは確かです。しかし、地域には仕事がないわけではありません。課題は、単に産業振興にあるわけではなく、地域において雇用を守り、地域を支えようとしているリーダーがいるかどうかにあるといえます。過疎地と呼ばれる地域でも、UターンやIターンする人が増え、子どもたちが生き生きと暮らしている例があります。そこには決まって「この人と一緒に働きたい」と思わせるような、地域を牽引するリーダーの存在があります。そうしたリーダーを応援することも災害からの復興にとって重要だと思います。
最近、責任の重いリーダーにはなりたくない、管理職にもなりたくないという人が増えているといわれています。労働環境の厳しさを考えれば、そうした気持ちもわからなくないですが、復興の過程では、「私がやります」という人が出てこなければ、自立的な復興は困難です。さらには、地域が回復したり、持続するためには、そこで頑張る人を応援する必要があるということです。
平時のネットワークづくり
災害からの復興には、発災前からの地域のネットワークづくりが大きく影響します。災害が起きてから「どうするか」と初めて話し始めるのと、平時から地域の中で信頼関係を築いているかでは、結果もスピードも変わってきます。
そのことを示す事例として私がよく取り上げるのが東北の「津波てんでんこ」の話です。この言葉は、津波が来たら自分の命を守るために各自がばらばらになって逃げることを意味しています。しかし、実際に津波が来たら、家族や近所の人が気になるのが人情です。だからこそ「あの人が助けてくれているはず」「ちゃんと逃げているはず」という信頼関係を事前に築いておくべきという教訓も同時に込められています。復興も防災も日頃からの信頼構築が大切なのです。
そこで一つ活用できそうなのが、労働組合のレクリエーション活動の応用です。レクリエーションという言葉は、もともと「リ・クリエーション」、つまり「再び創り出す」という意味があります。遊びや体験を通して、職場の人間関係をつくり直す、再創造するということです。日常の職場を少し離れ、自分自身を見つめ直したり、働く仲間との関係性をつくり直したりすることには、信頼関係構築の意味が込められています。そうした日常からのネットワークづくりは、防災や復興においても参考になると思います。
そこで暮らすことの意味
こうしたネットワークは、「ソーシャル・キャピタル」という考え方にも結び付きます。これは復興支援のあり方を検討する上でも大切な考え方です。
災害後、インターネットなどでは「これを機に仕事のある都市に行った方がいい」という意見が散見されます。しかし、人は簡単に自分の住んでいる場所や仕事を変えることはできません。なぜならそこには、収入や仕事だけでは測れない、人とのつながりや地域との関係性、すなわち「ソーシャル・キャピタル」があるからです。災害をきっかけに雇用を流動化し、生産性の高い部門へ移動させればよい、といった言説もありますが、その人がその場所で暮らし、働いていることの意味をしっかり考えた上で対策を練る必要があります。一面的な利便性や効率性ばかりを重視して復興を考えるわけにはいかないのです。
大変だけど楽しくやる
コロナ禍以降、テレワークが広がりましたが、メリットの半面、働く人が孤立して悩みを共有できないという課題も顕在化しました。私がかかわった調査では、従業員の声をまとめて代表する仕組みがある職場の方が、従業員の満足度や主観的な生産性が高いという結果が見られました。つまり、「自分一人の悩みかな」と思うようなことを周囲と共有できる場がある方が、組織の力を高めていたのです。このことは被災地にも通じると思います。被災後でも、人々はばらばらになりがちです。被災者の声を束ねて支援機関へ伝える組織の存在が、労働組合を含めて、重要になるのだと思います。
ただ、中間団体のような取り組みを平時から続けていくには手間がかかります。だからこそ、「このくらいなら続けられる」と思えるかたちでルーティン化(習慣化)していくことも必要です。この点は、組合活動と共通します。大切なのは、「大変なんだけど、楽しそうにやる」ことです。
ドイツには「ユーモアとは、『にもかかわらず』笑うことだ」という言葉があります。かみ砕いていえば、「苦しい時こそまず笑ってみる」というニュアンスです。苦しいことがあっても、悲しいことがあっても、くじけずに笑ってしまおう。そう歌った『ひょっこりひょうたん島』の歌詞に通じるものがあります。労働組合の活動もそうあってほしいです。
「小ネタ」理論
私が講演などでいつも言うのは、地域には「小ネタが大事」ということです。苦しい状況にあると、どうしても一発逆転のホームランや抜本的な解決策を求めたくなります。震災からの復興では、当初の復旧中心の話題から、次第に人口減少や産業衰退などの大きな問題にすり替わっていきます。すると、なおさら劇的な打開策が期待されがちです。しかし、そうした「大ネタ」は、たいていうまくいきません。「大ネタ」に振り回されるのではなく、地道で日常的な「小ネタ」を積み重ねることが何より大事です。
人口減少だけで地域はすぐになくなりませんが、「小ネタ」が尽きると、地域は急速に衰退していきます。目の前にある「これやってみない?」という「小ネタ」に対してみんなで手を動かし、「できた!」と言える小さな成功を積み重ねることが、地域の復興にとっても欠かせないのです。
![情報労連[情報産業労働組合連合会]](/common/images/logo_ictj.png)

