特集2026.03

復興の力
人の力が復興の源
迅速なトップの判断が重要
日頃の備えが決断を支える

2026/03/13
熊本地震から10年。インフラなどの復興は進んだが、その後も熊本では自然災害が頻発している。いざという時に求められる判断のために、日頃からの備えが重要だ。災害対応にあたってきた連合熊本の山本会長に聞いた。
山本 寛 連合熊本会長

復興進む

熊本地震から10年が経過しようとしています。この間、いわゆるハード面の復旧はほぼ終わりました。特に被害の大きかった益城町では、片道4車線化された災害対策兼用の道路がいよいよ3月20日には開通します。阿蘇方面の交通インフラもJR豊肥本線が震災から約4年後の2020年に全線開通し、同年10月には国道57号線の「現道ルート」と「北側復旧ルート」が開通しました。また地震で崩落した阿蘇大橋に代わる新阿蘇大橋が2021年3月に完成しています。

また、仮設住宅については、2017年5月に2万255世帯、4万7800人とピークを迎えましたが、その後、転居や住宅再建などが進み、2023年4月には最後の仮設住宅が閉鎖されました。この時点で99.9%の人が転居などをしていました。

文化財の復旧も着実に進んでいます。阿蘇神社は、部材を再利用した復旧が進められ、2023年12月に神社全体が完結しました。熊本城も石垣を含め部材の再利用を基本に復旧が進められており、2021年には天守閣内部の公開が一部再開されました。完全復旧は2052年を見込んでいます。

このようにハード面全体で見れば、生活に直結するインフラの復旧は着実に進みました。全体として、比較的早いペースで復旧が進んだように感じます。

繰り返し起きる自然災害

次にソフト面ですが、熊本地震の直接的な影響を聞く機会は少なくなりました。日常生活の中では地震の記憶は徐々に薄れつつあるのかもしれません。ただし家族を失った方や被害を直接受けた方たちの傷が消えることはありません。そのことを忘れるわけにはいきません。

私たち熊本県民は、熊本地震の経験から、防災・減災意識は確実に高まったと感じます。現在では防災インフラの整備も進み、ハード・ソフトの両面で備えは強化されました。地震から10年。この節目を捉え、その経験を風化させてはいけないと考える人がたくさんいます。

熊本では地震の後も自然災害が続いています。2020年には県南地域で豪雨災害が発生し、今も約50人の方が仮設住宅で生活しています。その影響で人吉市につながる「くま川鉄道」は長らく不通が続いていましたが今年の夏、6年ぶりに全線開通の見込みです。また、昨年8月にも熊本県内各地は豪雨被害に見舞われました。熊本では自然災害が繰り返し起きており、災害への備えの重要性をあらためて感じています。

熊本地震での経験

熊本地震発生当時、私は情報労連熊本県協議会の事務局長を務めていました。そのときの経験をお話しします。地震発生直後にまず最優先したのは、組合員の安否確認です。熊本県協議会に加盟する地場組合の組合員はもちろん、退職者も含め、すべての方を対象に安否確認を徹底しました。熊本地震は前震と本震があり、その間も含めて緊迫した状況が続きましたが、一人ひとりの安否確認に全力を尽くしました。

次に、救援物資への対応です。全国の仲間から水や食料をはじめとする多くの支援物資が届きました。それらを会社とも連携しながら、組合員の皆さんに配布しました。配布にあたっては、物資を詰め合わせにして配りました。公平を期すためです。当時は交通がまひしており、組合員の自宅まで届けることは困難だったため、熊本市内を中心に4カ所に拠点を設け、会社に来てもらう形で配布しました。安否確認と生活を支えるための対応に最初の1週間から10日間、特に力を注ぎました。

次いで力を入れたのが、生活再編に必要となる共済の案内です。請求に必要となる被害状況の写真を必ず撮るよう、すべての組合員に周知しました。あわせて公的な罹災証明書の取得方法なども案内しました。加えて、社協が実施するボランティアの情報も周知し、支援が必要な場合の連絡先や手続き方法を伝えるよう努めました。

また、全国の仲間から多くの義援金が寄せられました。義援金の配分については本部と調整を重ねながら進めましたが、細かなルールづくりには苦労もありました。被害状況の申告には、公平性を確保するため公的な罹災証明書の提出を必須としました。一日でも早く組合員や退職者の会会員に届けたいとの思いで、対応を急ぎました。

ボランティア活動の展開

組合員の多くが「被災者」となったことから、情報労連熊本県協議会としての社協などへのボランティア派遣は見合わせました。まずは、組合員自身の生活再建を優先しました。

一方、連合では2016年5月4日から6月30日にかけて、全国から延べ2000人の仲間が連合のボランティア活動に駆けつけてくれました。情報労連の仲間もたくさん参加してくれています。本当に感謝しています。この際、現地の連合熊本は、全国から駆け付けた仲間の受け入れ対応を中心に担いました。

このほか、熊本県南域を襲った6年前の豪雨災害では、コロナ禍で県外からのボランティアが制限されていたため、連合熊本を中心にボランティア活動を展開しました。約2カ月間で延べ600人以上が復旧作業に携わり、情報労連からも多くの組合員が駆け付けてくれました。このボランティアでは、平日を中心に人員を派遣しました。組織力あってこその対応だったと思います。

経験を通じて学んだこと

熊本地震の経験を通じて強く感じたのは、状況に応じてが迅速に判断することの重要性です。防災マニュアルの存在は大切ですが、実際に災害が発生すると、対応マニュアルをその都度開いて確認している時間はありませんでした。現場では、リーダーがその場の状況に応じて判断することが求められます。最終的にはトップが迅速に決断し、「これでいく」と明確に示すことが重要です。そのためにも、平時のうちにマニュアルを読み込んでおくことが重要だと感じました。そうすれば、状況ごとに異なる条件を整理し、的確な判断につなげることができるのではないでしょうか。

また、会社や社協などをはじめ、地域でのネットワークが平時からあった方が、物資配布やボランティア活動などを迅速に展開できることがよくわかりました。安否確認のためにも組織内のネットワークを構築しておくことが大切です。

あらためて、熊本地震から10年という節目を捉え、あらためて防災・減災の意識を高める取り組みを進めていきたいと考えています。

全国の仲間へのメッセージ

熊本地震の際、私たちは物心両面にわたり、情報労連の仲間に支えられました。震度6の余震が続く中、まさに命がけで救援物資を運んできてくれた仲間、その物資を提供してくれた仲間、義援金に協力してくれた仲間、そして温かい言葉で励ましてくれた仲間。本当に感謝しかありません。心から「ありがとう」と申し上げます。

「万が一に備えて」とよく言われますが、万が一とは0.01%の出来事です。しかし熊本では、10年前に大地震を経験し、6年前と昨年には大水害にも見舞われました。いま、自然災害の脅威は確実に高まっていると感じています。

自然災害は必ず起こります。自然と戦っても、人は勝つことはできません。だからこそ、まずは自分自身の命を守ってほしいと思います。それは家族のためであり、地域のためであり、社会のためでもあります。そのための事前の備え、そして何より日頃の心構えが最も大切だと強く感じています。

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