特集2026.03

2026春闘の要求実現へ──(2)「『つながらない権利』確立に
向けたガイドライン」を発刊
加盟組合で積極的な活用を

2026/03/13
インターネット技術の発展で柔軟な働き方が可能となる中で、情報労連は「『つながらない権利』確立に向けたガイドライン」を発刊した。活用方法などを紹介する。
永渕 達也 情報労連中央執行委員

「つながらない権利」とは

デジタル技術の進展により、私たちの働き方は大きく変化しています。テレワークやモバイル端末の普及によって、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が可能となる一方で、勤務時間と生活時間の境界は曖昧になっています。とりわけ、生活時間中(勤務時間外)であっても業務連絡が届く状況は、長時間労働を助長するだけでなく、労働者の生活時間や心身の健康に深刻な影響を及ぼしかねません。連合の調査では、勤務時間外の業務連絡に対して「ストレスを感じる」と回答した人が6割を超えており、さらに「連絡を拒否した場合に人事評価や処遇に影響が出るのではないか」という不安を抱えている労働者も少なくありません。本来、勤務時間外は仕事から離れ、休息し、生活を営むための時間であるにもかかわらず、現実には多くの労働者が心理的にも業務から切り離されない状態に置かれています。

こうした課題の解消には「つながらない権利」の確立が重要だと考えられます。「つながらない権利」とは、労働者が勤務時間外や休日・休暇において、上司や同僚、顧客からの業務連絡に応答せずに済む権利を指します。欧州諸国では既に法制化が進んでおり、労働者の基本的権利として認識されています。日本では、現時点で「つながらない権利」を直接規定した法律は存在しませんが、労働基準法に基づく労働時間規制や、労働契約法に定める安全配慮義務、労働時間の適正把握の観点から見れば、勤務時間外の連絡対応を事実上強制したり、黙認したりすることは許されないはずです。しかし、職場に具体的なルールが存在しなければ、現場では「暗黙の了解」や「職場の空気」によって、連絡への応対が常態化してしまうのが実態です。

ガイドラインの活用方法

このような状況を踏まえ、情報労連は「『つながらない権利』確立に向けたガイドライン」を発刊しました。本ガイドラインの最大の特徴は、単に理念を示すだけでなく、各職場で実効性のあるルールを労使でつくり上げていくためのプロセスを明示している点にあります。具体的には、まず職場内で勤務時間外の連絡状況や労働者のストレスを把握する実態調査を実施し、その結果をもとに労使で協議を行うことを提案しています。協議では、原則として勤務時間外の連絡を禁止する一方、自然災害やシステム障害など緊急性の高い場合の例外規定を定め、誰がどのような手段で連絡するかを明確化します。また、勤務時間外に対応した時間は労働時間として算定し、あわせて休息時間(いわゆる代償休息)の付与など、労働者の健康を確保する措置の必要性にも言及しています。

さらに、ルールの実効性を高めるため、社内外への周知徹底や研修・啓発活動の重要性も指摘しています。管理職を含む全従業員に理解を促すことで、「つながらないこと」への心理的な抵抗感を減らし、権利行使への安心感が醸成されます。これにより、勤務中の集中力向上や業務効率改善にもつながり、企業にとっても生産性向上やコンプライアンス遵守の観点からメリットがあることも訴えています。

定期的な労使協議が重要

各加盟組合においては、本ガイドラインを参考にしながら、職場の実態に即した「勤務時間外の連絡ルール」の確立に、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。重要なのは、原則論の確認にとどまらず、就業規則や労働協約などで明文化し、実効性を担保することです。そして、制度をつくって終わりにするのではなく、定期的な点検と見直しを行い、働き方や業務環境の変化に対応していくことが不可欠です。

「つながらない権利」は、私たちが掲げる「時間主権の確立」を具体化する取り組みでもあります。すべての組合員が、安心して働き、安心して休める職場を実現するために、ガイドラインを積極的に活用し、労使で丁寧な協議を重ねていきましょう。

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