働く人のためのワークルール見直しを
労働基準関係法制の見直し論議のポイント裁量労働制の適用拡大などに反対
健康や生活時間確保のための規制強化を

労働法制局
裁量労働制拡大の問題点
労働基準法の見直しに関する議論が昨年2月から厚生労働省の労働条件分科会で行われています。議論の開始以降、労使の意見は平行線をたどっています。
主な論点は四つあります。一つ目は裁量労働制や時間外労働の上限規制といった労働時間規制の見直し。二つ目は、副業・兼業における労働時間の通算の扱い。三つ目は、連続勤務日数の規制や勤務間インターバルといった労働からの解放に関する規制。四つ目は、集団的労使コミュニケーションにおける過半数代表のあり方についてです。
項目ごとに課題を見ていきます。
まず裁量労働制についてです。裁量労働制の見直しは、8年前の不適切データ問題でいったん見送られたものの、使用者側の強い要望で再び取り上げられることになりました。経団連は、企画業務型裁量労働制の対象範囲の拡大とともに、過半数労働組合がある事業場では、対象業務を労使協議で柔軟に決められるよう求めています。
裁量労働制は、あらかじめ定めた時間を労働したものとみなす制度です。労働時間管理がおろそかになり、長時間労働を招きやすいという問題が指摘されています。実際、裁量労働制の実態調査では、みなし労働時間より実労働時間の方が長いという結果が明らかになっています。また、実態調査では、自分の仕事に裁量があると答えた人の割合は、裁量労働制の適用者と非適用者では大きな差がないという結果も出ています。つまり、制度適用者であっても実際の裁量が大きいとは限らないということです。
さらに実態調査では自身に適用されているみなし労働時間を知らない労働者が半数を超えていました。こうした状態で、与えられた業務をこなそうとすると、結果として労働時間が長くなるという課題があります。
経団連は裁量労働制適用労働者の満足度は高いと主張していますが、年収が高いほど満足度は高くなる一方、年収が低いと不満の割合が増えることから、満足度は必ずしも制度適用に対するものとは言えないと考えています。したがって、「企画業務だから一律に企画業務型裁量労働制を適用する」という考え方ではなく、個々の労働者にどの程度の裁量があるのかを確認し、本人の同意を得て適正に運用することが重要だといえます。
他方、使用者側からは過半数組合がある事業場では、労使で対象業務を決められるようにすべきだという要望も出されています。しかし、労使対等といっても、実際には会社側の意向が強く働く場面もあり得ます。柔軟な働き方は現行制度の活用で実現可能です。制度の拡大ではなく、現行制度の適正運用の徹底を図るべきです。
時間外労働の上限規制
次に、労働時間の上限規制についてです。いわゆる「働き方改革」で時間外労働の上限規制が導入されましたが、一般労働者の総実労働時間は年間2000時間前後で推移しており、労災件数も過去最高となっています。働き方改革から約6年が経過しましたが、労働時間は大きく減っていないのが現状です。一方、「もっと働きたい人もいる」という声が聞こえてくることもありますが、その理由の多くは残業代を増やしたいという声です。こうした課題には基本給の引き上げで対応すべきです。
現在の時間外労働の上限規制に対し、月45時間・年360時間という原則の上限を引き上げるべきという意見があります。ただ、連合の調査では特別条項を結んでいる組合が約97%に上り、原則の上限だけで運用している職場は多くありません。原則の上限を引き上げれば、事情の有無にかかわらず時間外労働を延長できるようになるため反対です。特別条項を結んでいる場合でも月45時間・年360時間に近づけることが重要です。
労働時間規制は、労働者の健康確保だけでなく、家庭生活、社会生活といった仕事以外の時間を確保するためにも大切です。長時間労働が評価される職場では、「長く働かなければ評価されないのではないか」と考える人が増え、職場全体が長時間労働に向かいかねません。だからこそ最低基準としての労働時間規制の存在が不可欠です。
兼業・副業の課題
次に兼業・副業についてです。議論の中心となっているのは、労働時間の通算の扱いです。
現行制度では、本業と副業の労働時間を通算して管理することになっています。その合計で時間外労働が発生した場合には、本業・副業いずれの事業主であっても割増賃金を支払う必要があります。これに対して使用者側は、健康確保の観点から労働時間の通算は維持するものの、割増賃金の算定における通算は見直すべきだと主張しています。
兼業・副業を行う理由を見ると、最も多いのは「収入を増やしたい」というものです。連合としては、本業で生活できる賃金を確保することが重要であり、その上で本業と副業の労働時間を通算し、割増賃金を含めて適切に支払う現在の制度を徹底していくことが必要だと考えています。
労働時間からの解放
次に、「労働時間からの解放」に関する論点です。労働基準法では、例外として「4週間で4日以上の休日」とする4週4休の制度が認められています。しかし、この仕組みでは休日の配置によって長期間の連続勤務が可能となり、36協定と組み合わせれば理論上はほとんど休みなく働くことも可能になります。2週間以上の連続勤務は非常に強いストレスを伴うことが指摘されており、精神障害の労災認定基準でもあります。こうした状況を踏まえ、連続勤務日数について現行制度の見直しを訴えています。
もう一つの論点が、勤務間インターバル制度です。現在の導入率は約6%にとどまり、導入を検討していない企業も約8割に上るなど、制度の普及は進んでいません。一方、導入している企業では、11〜12時間程度のインターバルを確保している例が多く見られるため、連合としては制度の義務化を訴えています。
労使コミュニケーションのあり方
最後の論点が、過半数代表と労使コミュニケーションのあり方です。現行制度では、過半数労働組合、または過半数代表との労使協定により、労働基準法の一定の例外が認められる仕組みになっています。しかし、過半数代表の選出については、会社が指名するなど不適切な事例も指摘されています。そのため、労働側としては、過半数代表の選出ルールを法律で明確にするとともに、関与する制度の範囲についても見直す必要があると主張しています。
政府が日本成長戦略会議の下に設置した労働市場改革分科会で、労働時間規制に関する議論が始まっています。連合は昨年12月に労働基準法の見直しに関する特設サイトを開設し、議論の状況について情報発信を行っています。今後の情勢によってはさまざまなアピール行動などが必要になる場面も想定されます。情報労連の仲間の皆さんとともに、運動を展開していきます。
(本稿は1月23日に実施した学習会の内容を編集部が再構成したものです)
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