トピックス2016.01-02

絶望はしない 民主主義社会だから最後まで政治に参加する

2016/01/26
民主主義ってなんだ!。2015年夏、国会前に若者の声が響き渡った。彼・彼女たちの言葉は、私たちが政治に向き合うことの大切さをあらためて伝えてくれた。労働組合の言葉はたくさんの人に伝わっているだろうか。一人ひとりが政治に言葉に向き合おう。
野田 三七生 (のだ みなお) 情報労連中央執行委員長 奥田 愛基 (おくだ あき) 1992年、北九州市生まれ。明治学院大学4年生。2013年12月、特定秘密保護法に反対する学生有志で「SASPL」を結成。15年5月3日、「SEALDs」創設。同年12月に政策提言シンクタンク「ReDEMOS」を設立した。

東日本大震災のこと

野田

奥田さんは九州のご出身ですね。私も九州・熊本の生まれなんです。九州という土地柄は三池闘争などがあって社会運動に対する独特の感性がある地域だと思っています。ただ、それが若い世代に引き継がれてきたかどうか。

多くの人々がSEALDSの活動に勇気づけられたと思うのですが、最初に奥田さんがどのような思いで活動してきたのか伺えますか。

奥田

自分が生まれたのは北九州で、父はホームレス支援をしていて、家にホームレスの人たちが出入りするような環境で育ちました。なので中学校の雰囲気と違い過ぎるというか、ついていけないじゃないですけど、家が嫌になって、政治的なものに距離を置きたいというか、はすに構えたところがありました。

けど、震災(東日本大震災)があって、その頃から社会のことをもっと考えないといけないと思うようになって。高校時代はもう少し内向きな人間だった気がしてて、社会の問題にしてもそれをポジティブに解決しようとするんじゃなくて、絶望している方が当たり前というか、いっそ戦争が起きた方がいいみたいなことを考えたりとか、今の若者にはそれぐらい余裕がなかったりすると思うんです。

そういう中で社会のことを考えづらくなるって、わからなくもないんです。だけど、そういう中で震災があって、そうも言ってられないというか。本当にひどいことが起きて、津波でたくさんの人が亡くなったり、原発事故で家に帰れない人たちが数多くいたりする現状を見ると、本当にそういう出来事が起きると悲しいんだなって。そういう出来事はもう起きてほしくないって思ったんです。

中立を装っていていいのか

野田

そうした中でTAZ※というグループをスタートにSASPL※からSEALDSへと変遷してきたのですね。

奥田

僕らがTAZというグループで活動していたときは、賛成も反対もなく原発について考えてみようというスタンスでした。2011年から2012年頃はテレビで原発はどうするかとか、エネルギー政策はどうするかとか、そういった議論がまだあったと思います。それが安倍政権になってからそういう議論すらピタッと止まってしまったというか。で、それって一体何なんだろうと。

それで「賛成も反対もなく議論しよう」というスタンスではダメで、自分たちが何を求めているのか本音で話さないといけないんではないかって。確かに賛成も反対もなくみんなで議論しようっていう呼びかけは大事なんですけど、それでも、自分たちが何を求めているのかを訴えて、その言葉に責任を持たないといけないんだと思ったんです。

イエスかノーかを言うことはリスクを背負うことなんですけど、あまりにもそれをやらなさすぎたというか。賛成も反対もなくと言い続けていたら、例えば原発がほとんど再稼働しても「また次回も議論し続けましょう」って繰り返すんだろうなって。それで特定秘密保護法が可決されたときに「これじゃだめだ」とすごく思ったんです。議会のバランスが「右」にずれているときに賛成も反対もなくと言い続けていたら、スタンダードが右にもっとずれてしまうというか。

実際、安保法制のときも最高裁の元長官まで違憲だと言っているのに、自民党がつくった動画では、賛成派と反対派が同数で描かれていて、憲法的には議論が分かれますって書いてあるんです。中立的に見ているようで実はどちらかに偏っているということがここ数年で起きているんじゃないかなって。そうした中で、批判を受けるかもしれないですけど勇気を出して、賛成・反対を言うんだと。

労働組合をどう思う?

野田

皆さんの本を読みました。奥田さんと牛田さん※はいいコンビですよね。牛田さんは理論家で彼の言っていることは私にはちょっと難しいんですけど(笑)。

奥田

彼の方が頭がいいんですよ。難しい哲学の本とかいつも読んでて。けど、まとめる能力っていうか現実的なアイディアとか皆無なんで(笑)。その辺は僕がやってます。

野田

私たちも平和については自分たちのこととして真面目に取り組んできたつもりです。けれども労働組合の殻にこもって社会にメッセージを発信できなかったという反省があります。今回の安保法制でも、集会や学習会を開いたり、機関誌で訴えたり労働組合の中ではかなり力を入れてやってきたつもりです。それでも社会全体の運動をリードできなかったことに申し訳ない思いがしています。そうした中で皆さんが大きな流れをつくってくださったことはとても素晴らしいことだと思っていて、できれば今後もこの運動を広げてほしいと思っています。

奥田

僕たちがデモをやったりするときにトラメガを貸してくれる人がいました。後で気になったのですが、それをどういう思いで貸してくれたんだろうとか、デモの現場で明らかに慣れてる人とかいるんですよね(笑)。実際に、今年の夏も労働組合や、それに参加した経験があった人たちが運動の下支えになっていたと思います。それってとてもいいことだと思いました。持ってるものをお互い持ち出して今年の夏があったというか。実際SEALDSがどうのこうのというより、みんなができることをやったという感じ。労働組合には組合員に対するサービスがある一方で社会的に開かれたものであってほしいですね。

小さな幸せを壊されたくない

奥田

僕らのことでいうと、次の選挙に向けて安保法制のほかに大事なイシューが欠けてるなと思っていて、生活の問題をもっと言っていくべきだと思っています。だから次の選挙は安保法制や立憲主義が大きな争点になるのはもちろんなんですが、生活の問題も大きいと思っていて。立憲主義のそもそものコンセプトは個人の権利を守るということで、権力者に個人の尊厳を守れと命令している。戦争するな、命を守れというのはそういうことだと思うんです。今晩のごはんをどうするという強いリアリティーがあるわけで、日常の小さな幸せを壊されたくないから、安保法制に反対しているところがあると思ってます。

そういう意味では自分たちの日常そのものがもっと政治の争点になってもいいんじゃないかって。労働環境を無視して利益を上げるグローバル企業に反対するデモが世界中で起きてて、日本でも近いうちにそういう運動が起きるんじゃないかって。

安保法制のデモにリアリティーを感じられなかったり、身近に感じられなかったりした人もいるかもしれないんですけど、今回の動きのすごく重要な点は個人の日常を守りたいから、安保法制だったり、立憲主義の崩壊に対してノーだって言っているという感じがしてます。SEALDSメンバーのスピーチにもその人のバックグラウンドとか生活感が出ていて、安保法制のことも生活のことも同根なんじゃないかなと。

若者たちの鬱屈

野田

おっしゃることにとても共感しますし、私たち労働組合も同じことをめざしていると思います。

生活者の課題を争点にすべきというのはまさにその通りで、私たち労働組合も「働くことを軸とした安心社会」というキャッチフレーズのもと、社会的包摂をテーマに活動してきていますし、戦争は個人の人権を最も侵害するものです。そう考えると私たちの運動とも非常に接点があります。

安倍政権の政策は、労働者や生活者・納税者の立場に反する政治だと思っています。次の選挙に向けて市民の声を集約していくことが大切だと思っています。

奥田

変な言い方ですけど、安倍政権ですら「新3本の矢」や最低賃金引き上げのようなパッケージを出してきていて、そうした中でリベラル派はそれを冷ややかな目で見ているだけでは足元をすくわれかねないし、一方で野党が何を打ち出すのかが問われています。今のところ強く打ち出せていないって思っていますが、09年の政権交代のときに言っていたことに自負を持って打ち出してほしい。国民のための、個人の尊厳を大切にする政治であってほしい。

やっぱり、5人に1人が貧困と言われていて、僕の地元でも就学援助を受けている人がたくさんいるし、地方の大学に入って奨学金を借りていた人はそれを返すために都会に出ざるを得ないみたいな感じになっていて、本当は地元に残りたいのに、何のために勉強しているのかなって。あと結婚を考えてもある程度稼いだあとでとか、出産や育児のこととか、少子高齢化とか地域活性化とかいうけど全然反対のことをやっているじゃないかと思ってしまいます。

30代も含むかもしれませんけど、若者たちのそういう鬱屈した感じというのと、労働組合が何となく遠く感じるというか。労働組合は必要だなって思うんですけど、それだけじゃ回らない社会になっているというか。

伝わる言葉と伝わらない言葉

野田

連合や情報労連といった労働組合も非正規雇用労働者の組織化を進めてきましたが、まだまだ弱いと言わざるを得ないと思っています。

格差・貧困問題の解決がなければ日本の将来はないと思っています。その点も共通していると思っていますが、労働組合はもっと開かれた運動をしなければいけませんね。

奥田

僕も労働組合の国会前の集会に呼ばれたのですが、雰囲気が不思議な感じがしたというか。人はものすごくいっぱい来ているんですけど、後ろの方にいくと何か早く終わらないかなっていう雰囲気があって、何でそう感じたのか考えたんです。

僕らがめざしているのは、デモを全然知らない友達に見せられるようにというか、日常でも受け入れられやすい言葉を使うというか。労働組合の人のスピーチを聞いて何か雰囲気が違うなって感じて。自分の友達や知人でも誰でもいいので、自分の外のコミュニティーの人たちにどうやって見られているかとか、それをやっていて本当にこれだと言えるかとか、そういうのが大事じゃないかと思ってて、それさえあればクオリティーが高いと言えなくても、もっと次はこうしようとか出てくるんだと思うんです。

野田

すごくよくわかります。私たちもそういう運動をめざしているし、自分たちの身の丈で語る運動が大切だと思っています。皆さんの運動はそれをあらためて教えてくれた。自分の言葉で語ることを誰かがやってくれるだろうとどこかで避けてきた部分もあると思うんです。それを気づかせてくれたことに皆さんのすごさを感じました。

奥田

やっぱり運動をやっていくうえで、自分や周りの環境が変わっていく楽しさがあって、それはトップダウンでやらせていたら、みんなはそういう感覚にならない。自分で動いて変えていくことの実感というか、「今回のアクションはよかったよ」って言われてうれしいとか、そういう目線を持てるかどうかだと思うんです。身の丈かもしれないですけど。

覚悟を持って発言する

野田

これからどんな運動を展開していきたいですか。

奥田

SEALDSとしては、野党共闘を呼び掛けていきます。それと投票所をもっとつくってほしい。それから各地域で政党に縛られない独自候補を出せないかとか。選挙の対立軸ということであれば、生活のイシューをもう少し推していくべきだと思っています。

野田

労働組合もそれを出しているつもりですが、弱さがあるのでしょうね。

奥田

何というか、最後は人が大事だと思うんですよね。どんな社会でもたった一人の人が自分に対して責任を負うことから始まるというか。何かこう覚悟を決めて個人のレベルでもっと言っていいんじゃないのかなって。そういう人がいないと物事は動かないというか。組織は一人ではつくれないけど、一人の人が行動しないと組織は始まらないというか。

野田

おっしゃるとおり市民運動にも覚悟が必要で、政治と向き合っていかないと。いろいろな課題は政治抜きには語れませんね。私たちもそう伝えているつもりで、伝えきれていないところがある。

奥田

良いことを言っていても成果が出ないとどうにもならないというか、やっぱりクオリティーを高めることは必要なんだと思うんです。政治学者のダールが言うには、選挙に行くのとデートに行くのとは天秤に掛けられている。楽しいことに負けられないくらい魅力的なものをつくっていかないといけないと思っていて、それくらい厳しい目で見られているというか。変な話ですけど、デモに行くことや選挙に行くことが、スターウォーズと比べられているわけです(笑)。そう考えると、甘えは許されないというか、もっともっと挑戦しないとですね。

野田

私たちのやり方もどんどんクオリティーを高めないといけないですね。

絶望せずに生きていく

野田

奥田さんは日本をどんな社会にしたいですか。

奥田

デモが起きている社会はいい社会じゃないというか、問題があるからデモをやっているわけで、そう考えると、問題だらけの社会を生きるタフさとしたたかさが必要なんだろうなって思います。自分の発言に対して責任を持つというか、レスポンシビリティとか応答する力。

自分はこの先、社会が明るくなるとは一ミリも思ってないんですけど、下手したら日本がギリシャみたいになったり、戦争だっていつ起きてもおかしくないし。その中でも絶望せずに生きていくんだと思えるかどうか。民主主義社会だから最後まで責任あるし、参加しなきゃいけないんだって言えるかどうか。そういう社会であってほしいと思います。できることをひたすらやっていくつもりです。

野田

皆さんを見習って私たちもがんばります。言いたいことが言える社会、個人の自由と尊厳が守られる社会が大切だと思っています。これからもともにがんばっていきましょう。(11月30日実施)

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