石橋議員と若手組合員が語り合う!政治に参加するって どういうこと?
若者の政治参加に注目の年
石橋
情報労連組織内議員の石橋みちひろです。本日の座談会は、若い世代の代表の方々に参加していただきました。今年は、選挙権年齢が夏の参議院議員選挙から18歳以上へと引き下げられることもあり、若者の政治参加に注目が集まる年です。若年層の“政治離れ”が叫ばれる中、若い世代の皆さんが政治に関心を持つ方法を一緒に考えていきたいと思っています。まずは、簡単な自己紹介とあわせて、これまで選挙にどの程度参加してきたのかを率直に教えてもらえますか。
宮森
KDDI労働組合の宮森祐子です。会社では、スタッフ部門に所属しており、代理店様からの問い合わせを受け付けるサポートセンターへの入電や応対品質等の傾向分析を行っています。組合での役職はなく、一般の組合員です。2年前に広島から東京へ異動になりました。住民票の住所が広島のままになっていることもあり、東京に暮らしはじめてからは選挙に行けていません。
小松
アイネス労働組合の小松貴大です。2015年の10月から専従で書記長を務めています。これまでは政治活動とのかかわりが薄かったこともあり、選挙に行ったことは1度しかありません。書記長に就任したこともあり、政治活動にも積極的にかかわっていきたいと思っていました。今日は、石橋議員との座談会を楽しみにしていました。
宮田
通建連合サンコムユニオンの宮田恵実です。会社ではコンプライアンス法務部に所属していて、法律や契約関係の業務を行っています。組合では執行委員を務めていて、今年は女性の活躍を推進する取り組みに力を入れたいと思っています。選挙には、選挙権を得た20歳の頃は興味をもって行っていましたが、最近は参加できていません。
前田
全統一労組生活クラブ全評議会ユニオン支部の前田歩美です。生活クラブ東京で広報を担当し、情報誌やウェブサイトの制作などを行っています。選挙には、ほぼ毎回参加していて、投票日に用事があるときは期日前投票をしています。
高原
NTT関連サービス労協の高原霞です。電通共済生協の共済推進部に所属し、共済への加入を促進する業務などを担当しています。D&Y労組(電通共済生協・ユアサポート労働組合)では執行委員として広報・女性担当を務めています。選挙には、特別な用事が入らないかぎり、参加しています。
自分の1票で何が変わる?
石橋
皆さんの中でも、選挙に参加した経験や政治に対する意識もかなり濃淡がありましたね。皆さんの組合や職場では選挙や政治に関する話題は、どの程度出るのでしょうか。
小松
職場で選挙の話はほとんど出ないのですが、同期の仲間がツイッターに投稿していて、その発言に影響を受けたことはあります。「投票率の高い高齢者の意見が政治に反映されるのは当たり前だ。若者の意見を通したいのなら、自分の一票を投票すべきだ」という内容を見て、意識の高さに驚かされました。
高原
D&Y労組は選挙の周知活動に力を入れる風土があって、政治の話題が普段の会話に出てくるのは珍しくないですね。私自身も組合活動にかかわるようになってから、政治や選挙に関心を持つようになりました。
石橋
組合活動に参加していると政治や選挙に対する意識が高くなるということは確かにあるでしょうね。皆さんも、組合活動を通じて選挙に行くことを勧められた経験があるかと思います。反対に、若手組合員に対して投票を促す立場の方もいるのではないでしょうか。それぞれの立場のときの反応を教えてもらえますか。
宮森
私の場合は、「選挙には行くもんだよ」と、信頼する人から言われれば、「投票に行ってもいいかな」と素直に受け取れると思います。逆に、普段は交流のない人から「投票に行ってほしい」と選挙の時だけお願いに来られても、気持ちが引いてしまうような気がしますね。
宮田
若手組合員に選挙について話すと「労働組合はなぜ民主党を応援するの?」という質問が返ってくることがよくあります。政治に対する疑問に丁寧に答え、納得させられなければ、若者の投票は促せないかなと思います。
石橋
お二人の意見を聞き、単に労組からお願いするだけでは、若者の投票行動は促せないことがわかりますね。それでは、そもそも若い世代の投票率が低い理由は、どこにあるのでしょう。何が原因だと思いますか。
高原
「自分が投じた1票では、何も変わらない」という思いが強いのかもしれません。政策に共感して投票したとしても、選挙後にその政策がガラッと変わってしまうケースがあったりして、そうなると、「私の1票はどうなったんだ」という気持ちになります。裏切られた経験があるので、「選挙よりも自分の用事を優先させたい」という気持ちになる人が多いのだと思います。
小松
マニフェストを守っていないとか、公約を満たしていないとか、ネガティブな情報のほうが目立つところもあると思います。フェイスブックなどから流れてくる情報は、政治に対して批判的なものほど誇張されて伝わってくるので、SNSに触れる機会の多い若者は、政治に対して後ろ向きな情報が入りやすい環境にあるでしょうね。
はじめの一歩が大切
石橋
小松さんのご指摘のように、政治に関する否定的な情報のほうが目立ちやすいという傾向はありますね。言い訳をするつもりはありませんが、民主党が2009年の政権交代にときに掲げたマニフェストも、できなかった項目ばかりが宣伝される傾向はありました。社会保障や労働法制などではかなり前進的な改正を実現したのですが、プラスの情報はなかなか伝わらないジレンマがありました。若者に正確な情報を伝えていくことも、政治や選挙に関心を持ってもらうためには重要になりそうですね。
宮田
石橋議員が言うように、政治や議員に関する十分な情報が得られていないとは感じます。議員が街頭演説などをしていても、忙しければ足を止めて聞く余裕はないですし。また、ネットに政策などの情報が公開されていたとしても、関心がない人であれば自分から見にいくことはないでしょうね。ある程度、強制的にでも情報に触れる機会をつくったほうが効果的なような気がします。
石橋
私自身も、ホームページに政策等を掲載するなど、情報に触れやすい環境をつくるように努めてきました。これからもICTなどの情報通信を活用し、できる限り多くの情報を発信していこうと思っています。ただ、宮田さんのご指摘のように、サイトなどにアップされた情報を見にいくという第一歩がなければ、それらの情報は届きません。政治に興味のない若者を一歩前進させる環境をつくることが、大事なのかもしれません。
前田
その一歩が一番大事なのですが、その一歩を踏み出させることが、一番難しいですよね。私が選挙に行く理由は、現在の政治に対して問題意識を持っているからです。私の納めた税金が、どのように使われ、何に役立っているのかを見届けたい、という思いを持っています。そのような関心があるから、政治に興味が沸くし、選挙にも足を運ぼうという気持ちになるのだと思います。
社会とのかかわりをきっかけに
石橋
確かに、前田さんが税金に対して問題意識を持ったように、自分にとって関心があることが入り口になって、政治に興味を持ち始めるケースはあるでしょうね。何かほかの例で、若者が政治に関心を持つきっかけになることは思いつきますか。
前田
生活と社会とのかかわりから話を始め、政治に結びつけていく展開はあると思います。朝起きて、夜寝るまでの間に、政治とかかわりのないことはほとんどないような気がします。例えば、何かの商品を購入するとして、自分が購入した商品は、製品メーカーもかかわりますし、輸入品であれば原産国との関係もあるでしょう。消費税などの税金もかかわってきます。そのお金の流れを一つひとつ見ていくだけでも、自分たちの生活と政治は切り離せないことがわかってくると思います。
石橋
自分が購入するもの、お金の流れから政治を考えるというのも良いアイデアですね。今日は女性の参加者の皆さんが多いのですが、女性の働き方について問題意識を感じることはありますか。女性管理職の比率を30%にするという目標が、旗を振っている政府自らによって引き下げられてしまう流れも出てきましたが。
高原
女性管理職を30%にする目標自体が、無理に定めた数値のような気がします。私の実感からすると、女性管理職になりたい、という要望は、若い世代にはそれほど多くないように感じます。もちろん、女性管理職をめざす人には、その道を開いていくべきだと思いますが、その意思がない人に対して職務だけを押し付けても、困惑するだけのような気がします。
石橋
高原さんが言うように、女性も男性もそれぞれの価値観があって、幸せの感じ方も、キャリアの捉え方も違います。それを一律に3割という目標を定め、女性の管理職を増やしていくという発想は無理があるのかもしれません。「女性活躍推進法案」の議論があったときに主張してきたのは、「管理職になることに対し、女性が幸せを感じづらいのはなぜか」という根本の部分を直視すべきということ。働き方自体を変えずに、無理に管理職を押し付けても本人がパンクしてしまうだけです。例えばヨーロッパでは、女性の管理職比率が高いのですが、それは決められた勤務時間の中で結果を残せば、きちんと評価される環境が整っているからです。管理職が率先して定時で帰宅したり、有給休暇を取得したりするわけです。日本的な働き方を残したまま女性管理職を増やそうとしても、無理が生まれてかえって女性が苦しむだけです。職場の働き方自体を是正するという視点が欠かせません。
ところで、本日は若手の方々が多いのですが、奨学金について何か感じていることはありますか。
宮田
奨学金の返済が負担になっている若者はかなりの割合でいるような気がします。奨学金は何十年間にもわたって返済しないといけないので、そのこと自体にプレッシャーを感じるケースもあると思います。親の負担を減らすために、奨学金で教育費を補っている状況なので、本人の負担感が重くなりすぎないほうがいいような気がします。
石橋
ヨーロッパ諸国では大学まで授業料が無償というケースも珍しくないし、家計の状況にかかわらず進学できるのが一般的です。現在、日本ではその流れに逆行する動きがあり、国立大学等の授業料をさらに引き上げる議論がなされています。10年後、20年後、富裕層でなければ大学に進めなくなる可能性もゼロではありません。学費の問題に限らず、教育のあり方に対しては私も問題意識を持ち続けています。例えば、日本の教育課程では、政治にかかわり、政治に参加することの重要性を学ぶ機会が少ないんです。海外では、小学校の時から子どもたちが授業で身近な政治課題について議論したり、家庭で両親と政治について会話をするのが当たり前でした。政治と身近な環境に育つことで、政治の大切さが自然と身に付いていきます。日本でも選挙権が18歳以上に引き下げられますが、若年層が政治や選挙に興味をもつためには、教育の改革も必要だと思っています。
21万4000人の仲間の力を結集
石橋
最後に労働組合と政治の関係についてお聞きしたいと思います。先ほど高原さんの意見の中で、「自分の一票で何が変わるのか」という指摘がありました。おそらく若い世代の方々の多くは、同じような思いを抱いているのかもしれません。視点を変えて、自分の一票として捉えるのではなく、労働組合、情報労連という組織の単位で見てみたらどうでしょう。情報労連には、全国に21万4000人の仲間たちがいます。その仲間が結集することで、何かができる、何かが変えられる、とは思いませんか?
宮森
確かに、21万4000人という仲間の力が合わさり、それが票数になれば、社会的な影響は大きいと思います。個人の一票ではできないことでも、それぞれの一票を集約することで、国会に議員を送り出すことも、政策提言することも可能になるかもしれませんね。
石橋
宮森さんが言うように、一人では変えられないことでも、情報労連という21万4000人の仲間がいるからこそ、実現できることがありますよね。働きやすい職場へと変えていくためには、働く者の立場から声をあげなければなりません。今、政治が決めることによって暮らしが最も左右されるのは、皆さんの世代、若年層です。一人ではない、私たちには21万4000人の仲間がいるんだ、ということを知っていただければうれしいです。
本日は貴重な時間をありがとうございました。
一問一答 石橋議員に聞いてみよう!
議員になろうと思ったきっかけを教えてください。
海外でさまざまな国の国民生活を見てきて、政治の重要性を痛感したのがきっかけです。政治が誰のほうを向いて、どのような政治をめざすかによって、国民の生活は180度変わってきます。ILOの専門官として多くの国々で仕事をしましたが、政治にかかわり、政治を良くしなければ、その国を良くできないことを痛感しました。それが議員になろうと思ったきっかけです。
石橋さんが訪れた55カ国のなかで、どの国の影響を最も受けましたか。
両極端の状況にある国から影響を受けましたね。一つはパキスタンです。パキスタンのある地域で、子どもが借金を抱えて奴隷のように働かされている現場を目の当たりにしました。しかしその横では、権力を握った大金持ちが優雅な暮らしを謳歌しているのです。政治の貧困こそが、こんな不正義な状況を生み出している根源だと感じました。また、ヨーロッパでの生活を通じて、当たり前だと思っていた日本の働き方が、実は異常なものだったということに気づかされました。このヨーロッパでの経験が、労働法制や労働組合運動のあり方、さらには働き方の価値観を見直すきっかけになりました。
政治を一言で表現すると?
正義です。
50歳とお聞きしましたが、若々しさと輝きの秘訣はなんですか?
常に情熱と緊張感を持って生きてきたので、それが秘訣なのかな・・・。その時々で、今やっていることに全力を尽くすことに一生懸命だったような気がします。ちなみに、子どもの頃はスポーツ小僧で、体育の授業のときだけ全力を出してましたね(笑)
消費税を10%に引き上げる際に複数(軽減)税率を設けることに対して、どのように考えていますか?
反対です。複数税率では、低所得層の負担軽減にはならず、富裕層こそメリットを受けてしまいます。しかもその財源が、総合合算制度の導入取り止めや子育て給付金の打ち切りなど、社会保障給付の削減で手当てされることを考えれば、まさに本末転倒です。また、外食と加工品の線引きで混乱を招き、店舗にもコストが重くのしかかってきます。やはり、マイナンバーの導入に合わせて、給付付き税額控除を導入し、真に支援の必要な人たちに必要な支援を実施すべきです。