中堅・中小企業こそ労組の力で採用力を強化せよ
中堅・中小企業の悲鳴が聞こえる。人材が採れないのだ。ここ数年、新卒も中途も売り手市場化している。正社員だけでなく、アルバイト・パートの採用ですら厳しい。構造的に労働力人口は減っていくがゆえに、この問題は今後も続くことだろう。
昨今のブラック企業・ブラックバイト問題にも、影響を与えていることは想像に難くない。つまり、人が採れないがゆえに、現在いる社員やアルバイト・パートの業務量が過多となるのである。
最近、私への講演依頼で最も多いテーマは地方自治体や商工会議所からの「中堅・中小企業の採用力強化」である。セミナーは毎回、超満員となる。参加者は一生懸命にメモを取るし、熱心に質問してくる人もいる。しかし、「いくらノウハウを教えてくれたところで、ウチには応募者がいないのです」と悩みを打ち明ける人や諦め気味の人もいて、無力感を抱いたりもする。
地方の中堅・中小企業が採用活動に苦しむ中、個人的に希望となったのは石川県との仕事である。石川県が手掛ける採用力強化プロジェクト「いしかわ採強道場」の講師を担当した。半日のワークショップを6回行った。参加する企業は、連続参加が義務付けられるのだが、皆、忙しい中、業務を抜けて石川県中から金沢に集まってくれた。世界的に注目される技術を持った企業、大手企業の主力商品を支える部品を納入している企業、オリンピック選手のユニホームに素材が採用された企業など、キラリと光る意外なオンリーワン企業が参加していた。何より、採用にかける熱意が並ではなく、心が洗われた。
中でも印象に残っている企業の一つが、共和電機工業株式会社という企業である。電気電子機器、工作機械などを製造している。この企業は障がい者や女性の雇用に力を入れており、ここ数年で「石川県ワークライフバランス企業知事表彰」「金沢市はたらく人にやさしい事業所表彰」「障害者雇用優良事業所等 厚生労働大臣表彰」「白山市仕事と生活が調和する優良事業所表彰」など、ワークライフバランス、ダイバーシティー関連で数々の表彰を受けている。
労働者を、貴重な戦力として捉えているがゆえに、働きやすい環境づくりに取り組んできた。定年まで働くことを考えれば、出産や子育ての期間は短いと考えている。従業員の事情などを聞きつつ、数々の制度改革を行ってきた。この働きやすさが女子学生に支持され、金沢大学、富山大学といった地元の名門大学からの採用に成功している。
「1億総活躍」なる言葉が登場しているが、実態はどうだろうか。この企業のように、従業員確保のためにもいきいきと働いてもらうために、従業員に支持される制度づくりと運用がこれほど求められている時代はない。
このような働きやすい環境づくりの提案は、人事部だけでなく、まさに労働組合が声を上げるべきことだと考える。人材獲得が構造的に困難な時代となる中、企業の発展のためにも労働組合からの建設的な提案がこれほど求められている時代はないのではないか。
大手だけでなく、中堅・中小企業こそ、労働組合は声を上げるべきだし、経営側も耳を傾けるべきだろう。