常見陽平のはたらく道2024.07

叱らず、認める、褒める連鎖を

2024/07/12
厳しいだけでは育たない。「育て方」のあり方が大きく変化している。ではどうすれば?

この秋、地元の中学校の同窓会が開催される。約10年ぶりの開催だ。数年前に急逝した同期の追悼イベントを兼ねている。

一方、当時のことを思い出すと、楽しいことばかりではない。恩師との再会は楽しみなのだが、当時は生徒が傷つくような厳しいことを言う、怒鳴る、さらには体罰も当たり前だった。

先生と生徒の関係だけではない。部活動や生徒会活動においても、先輩の当たりは厳しく、ときには暴力もよくあることだった。その部活動のトレーニングも、厳しいプログラムなのか、単なるシゴキなのか、よくわからない。

学校は安全な場所とは言い難かった。おびえ、緊張感が漂っていた。尾崎豊ではないが、早く自由になりたかった。人生で最も勉強に取り組んだのは中学時代だったが、それは自由になるための闘いだった。深夜ラジオを聴きながら、ときに雑誌をパラパラと読みながらダラダラと受験勉強する時間がむしろ自由な時間だった。

SNSで「パワハラは必要だ」という論が拡散し、炎上しており、ゾッとした。到底、肯定できない。厳しい指導と、高い負荷をかけろという話に読めなくもない。ただ、それが成長の実現につながるかというと、疑問が残る。「厳しい指導」というが、求める当たり前の基準が高い、仕事の基本を丁寧に教えるというのなら、まだわからなくはない。ただ、単に当たりが強く、高圧的なだけだとしたら、人は萎縮してしまう。難易度の高い仕事に立ち向かうことで、成長することもあるだろう。ただ、あまりにも難易度が高い場合や、負荷が重い場合は疲弊するだけだ。

「育て方」のあり方が大きく変化していると感じる。厳しく、叱って指導すれば伸びると思ったら大間違いだ。その人が、その人らしくいられる最高の環境をつくる、承認する、褒める。これがポイントだ。目標も自ら決めさせる。自ら課題を発見することを推奨する。上司や教員、親はサポート役にまわる。大学の体育会などでも、試合のビデオを見て自由に意見を言い合う場をつくる、トレーニングの目標を自ら設定する、互いに褒め合うなどを推奨している。

「それでも厳しい目標を与えなくては育たないのではないか?」「打たれ強くなるためには、叱らなくてはならないのではないか?」という批判もあるだろう。ただ、つぶれないようにするためにも、適度な負荷の目標に挑戦してもらう、失敗をしてその振り返りと再挑戦をすると人は伸びる。

労働組合幹部は育て方の変化と真摯に向き合わなくてはならない。組合は職場のハラスメント問題などに立ち向かうわけだが、気を付けないとブーメランが飛んでくる。組合自体も上下関係が厳しくないか、人に対する当たりが強くないかという批判はないか。ただでさえ、組合について「怖い」という印象を若者は持ちがちだ。もちろん、深刻な問題に向き合うがゆえにシビアな話をすることもあるだろう。ただ、人への当たり方は気を付けなくてはならない。組合は、すべての組合員が自由闊達に意見を言える場でなくてはならない。ましてや運営上で圧などあってはいけない。

この手の話は「私の若い頃は厳しく育てられた」など思い出話、さらには説教に終始しがちになる。何がベストなのかを考えたい。叱らずに、認める、褒めるは少なくともベターな選択肢だろう。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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