特集2016.04

一人ひとりを大切にする社会へ「一人ひとりを大切にする国」をめざし、国民の皆さんに選択肢を示す

2016/04/20
民主党は、「共生社会創造本部」で「一人ひとりを大切にする国」の社会像を提示した。この提言は民進党の基本政策に引き継がれた。「共生社会創造本部」本部長代理を務めた長妻昭衆議院議員に聞いた(3月9日インタビュー)。
長妻 昭 衆議院議員 民進党代表代行

─「共生社会創造本部」を設置した経緯は?

私たちは「共生社会」「一人ひとりを大切にする国」をめざしています。その実現に向けた道筋を示すため、岡田代表を本部長に、私を本部長代理にして昨年2月に「共生社会創造本部」を設置しました。

民主党はこれまで有権者の皆さんから「何をめざしているかわからない」と言われることもありました。政党の本来の役割とは、国民の皆さんにめざす社会像を提示し、競い合い、選択してもらうことです。私たちは皆さんに、私たちのめざす社会像をしっかりと示すために、このプロジェクトをスタートしました。

─どのような社会をめざしますか?

私たちがめざすのは、「一人を見捨てる国」ではなく、「一人ひとりを大切にする国」です。私たちは、そのような社会を実現するために、まずは現在の社会にある障壁を取り除く必要があると考えました。その障壁とは「格差の壁」です。私たちは今、「格差の壁」が日本社会で厚く高くなっていると考えます。相対的貧困率は先進国ではアメリカに次いで2番目に高く、6人に1人が貧困状態にあるという深刻な状態です。このような「格差の壁」は、経済成長を阻害します。これはOECDやIMFも指摘することです。

こうした前提に立って私たちは三つの「格差の壁」を取り除こうと訴えています。すなわち「教育格差」「雇用格差」「男女格差」の三つの壁です。これらに加えて女性の社会進出を阻み、少子化などの元凶となっている「長時間労働の壁」を取り除くことを訴えています。

─「格差の壁」はなぜ高くなってしまったのでしょうか?

一つには、予算配分の歪みがあります。日本は子育てや教育関連の予算がGDP比で先進国中最低レベルです。また、労働政策では雇用を柔軟にすれば国際競争力が高くなるという新自由主義的な発想の下に規制緩和がされてきました。

日本は税の再分配機能が先進国で最も弱くなっています。所得に余裕のある皆さんには、所得税や資産税を含めてもう少しご負担いただきたい。しかしそれは高所得者の皆さんも含めて社会全体にプラスになるものです。

貧困や格差問題の解消は、「かわいそうだから」やるのではなく、その壁を取り除くことが社会全体のプラスになるからこそすべきものと考えています。

─安倍内閣はアベノミクスの効果を強調しています。

安倍総理は格差拡大に関する私の質問に対して、「(格差は)基本的に横ばい」だと答えました。世論調査では7割もの人が格差拡大を実感しているのに、一国の総理の認識がこうしたものでは経済運営を誤ると懸念しています。

金融緩和でカンフル剤を打ち続けても、富裕層や輸出型の大企業に恩恵があるかもしれませんが、GDPの6割を占める個人消費には効果がありません。むしろ雇い止めしやすく、コストが安い非正規労働者を増やしてきたことは労働生産性の面からいっても間違っていたと言えます。

─雇用に関する「格差の壁」を壊すための具体的な政策は?

安倍総理は「世界で一番企業が活躍しやすい国」にすると言いましたが、順番が逆で、「世界で一番働きやすい国」にしないと企業も活躍できないはずです。そういう問題意識から私たちは雇用政策の一つとして、「最低賃金を2020年までに時給1000円(全国平均)」を掲げています。

二つ目は、「すべての労働者の厚生年金への原則加入」です。民主党が要請した厚生労働省の調査で、厚生年金の加入資格があるのに未加入の人が200万人いることが判明しました。将来の年金額に影響する問題です。

三つ目は、「有期雇用における入り口規制」の導入です。期間を定めた雇用契約は合理的な理由がある場合に限るように検討していきます。「同一価値労働同一賃金」の実現もめざします。

また、長時間労働の壁を壊すために、労働時間に上限を定める法案の提出を検討中です。具体的には勤務間インターバル(休息)規制の導入や、労働時間の上限規制の法定化を訴えていきます。これは企業にとっても働き方の効率化をもたらし、生産性の向上につながります。長時間労働は、女性の社会進出を阻み、介護や育児に支障をきたし、少子化の流れを加速させる元凶です。こうした働き方を変えていく必要があります。

─安倍内閣は「最低賃金の引き上げ」「同一労働同一賃金」などのテーマを持ち出しています。

安倍総理がこうしたテーマを持ち出したからには、私たちが掲げている本当の「同一価値労働同一賃金」に引き込んでいく必要があります。しかし、安倍内閣が総額人件費を変えずに「同一労働同一賃金」を実現しようとすれば、全体の底上げにはつながりません。私たちは仕事の価値を測るまっとうな基準をつくって、不合理な格差をなくすこと、あくまで底上げをめざします。

─参院選に向けてこの取り組みをどうアピールしていきますか?

安倍内閣は、「この道しかない」と日本を一つの道に染めて、金融緩和でカンフル剤を打ちながら、戦前回帰のようなきな臭い動きを見せています。それは一見強そうな国ですが、社会の変化には、ぽきっと折れやすいものです。

私たちは、多様な価値観を認め合いながら、格差の壁を取り除き、誰もが支え・支えられる力を育む、柔軟で強い社会をめざします。それは優しそうに見えても、竹のようなしなやかさを持つ社会です。

共生社会の神髄は、支える側と支えられる側を区別せず、互いが支え・支えられる関係をつくることです。「高齢者と若者」のように分けて考えず、格差の壁を取り除けば、お互いがお互いを支え合う関係を築くことができます。持続可能な社会を生み出すには、多様性の価値観を大切にした支え合いのネットワークが求められています。

格差の拡大と自己責任論の広がりは、お互いの立場を思う想像力を働かせずに、社会を分断していきます。私たちはそのような社会を望みません。

参院選では一人区で与党との一騎打ちに持ち込む協議をしています。野党5党で話し合い、民主・維新が一緒になって、さらに大きな選択肢を国民の皆さんに提示できるように努力していきます。

(3月9日インタビュー)

共生社会創造に向けた民進党11の提案(共生イレブン)《概要》

民進党の「次の内閣」会議は4月5日、民主党の共生社会創造本部最終とりまとめに関して、その内容を引き継いだ「共生社会創造に向けた民進党11の提案」を了承した。

1.児童扶養手当の大幅拡充

一人親家庭に対する「児童扶養手当」の第2子以降に対する給付額を1万円に引き上げる。支給年齢も20歳まで引き上げる。

2.渡しきり(給付型)奨学金の創設

GDPに占める公財政教育支出の割合をOECD平均並みに引き上げることを目標に給付型奨学金を創設する。

3.有期雇用の入り口規制を導入する

法律により雇用は「期間の定めのない直接雇用」を原則として、有期雇用は合理的な理由がある場合に限ることを定める。

4.最低賃金を引き上げる

2020年までに時給1000円(全国平均)に引き上げる。地域間格差を是正する最賃制度の仕組みの見直しを進める。

5.介護職・保育職の待遇を改善する

介護職・保育職の賃金を他産業並みに引き上げることを目標に立法をめざす(介護職月1万円、保育職月5万円)。

6.社会保険の適用拡大

法改正によって適用拡大を進め、被用者は原則厚生年金に加入できるようにする。

7.「同一価値労働同一賃金」の法定化

欧米の事例を参考にしつつ、日本の雇用環境に即した「同一価値労働同一賃金」を法定化する。

8.選択的夫婦別姓を実現する

女性自身の尊厳を傷つけ、キャリア形成の障がいとなる壁を取り除くため選択的夫婦別姓の実現をめざす。

9.低年金者に対する支援

高所得の年金受給者に対する国庫負担部分の年金給付を減額し、これを財源に低額国民年金のかさ上げを実施する。

10.労働時間規制の強化・インターバル(休息)規制の導入

月もしくは四半期単位の例外なき労働時間規制の法定化。勤務間インターバル規制の導入。

11.金融所得課税の引き上げ

既存歳出の見直し、所得課税・資産課税の累進強化を含む税制の見直しを進めていく。

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