常見陽平のはたらく道2016.05

ブラックバイト対策は入学前とその直後から

2016/05/18
「ブラックバイト」にハマる前に対策を打つことこそ、大学生活を実のあるものにする第一歩である。

新学期だ。本学にも新入生たちがやってきた。設立2年目の学部で教えている。初年度は定員割れで、悔しい思いをしたが、今年度は定員を超える76名の学生を迎えることができた。新入生たちは実に素直で一生懸命だ。2年生も後輩を迎え入れて、活性化している。

ここで、本学におけるブラックバイト対策の取り組みをご紹介しよう。私の所属する学部は定員75名に対し専任教員が10名となっている。少人数教育がウリの学部である。

しかし、初年度に直面したのはまさにブラックバイト問題だった。週5回、1日7~8時間のアルバイトをしている学生たちが散見された。そこまでいかなくても、かなりの頻度でアルバイトをしている学生がいる。学生たちの放課後は、アルバイトと自宅からの片道60~90分の通学で消耗していく。講義中ぐったりしている者だけでなく、移動時間やアルバイトの休憩時間にスマートフォンで課題をやる者なども現われた。講義時間外のプロジェクト活動などを行うのも一苦労だ。BBQなどのレクも、かなり早めに告知をしなければ成立しない。ブラックバイト問題が、実に憎らしかった。

昨年度の反省を生かし、今年度はブラックバイト対策を万全にした。入学前の保護者も同席するガイダンスで、この問題について紹介し、警鐘を鳴らした。

入学後は私が担当しているキャリア教育の講座で、学生生活とアルバイトの現状を紹介しつつ、ワークルール教育なども行う。土屋トカチ監督による学生向けワークルール教育ビデオの傑作『ブラックバイトに負けない!』の上映会も開く。高校時代からアルバイトをしている学生の中には、シフトの強要、サービス残業などを当たり前のこととして捉えている者もいる。自分たちの「バイトの常識」がいかに「非常識」であるかを気づいてもらう。

ただ、ここまでの話は、言ってみればよくあるキャリア教育、ワークルール教育の取り組みにすぎない。今年度からさらに工夫したのは「アルバイト」という枠を超えて「学生とお金」というテーマでの講座を設けたことである。学生にとって得する話をすることによって、そもそものアルバイトとのつきあい方を見直してもらうのだ。

最初は、私が学生時代に一時、手取り月収25万円を達成した話で興味をもってもらう。その上で、「あなたにとってお金とは何か?」「なぜ、アルバイトをするのか?」という問いかけをする。さらには、アルバイトをしなくてすむように、節約のノウハウを伝授する。学生は「俺、金ないっす。だから、いつでもコンビニ弁当っす」なんてことを言う。だから、お金がたまらないのだ。節約のコツを話すことによって、アルバイトをあまりしなくてもよい状態にするのである。

何より、教職員は講義をはじめとする大学での時間を楽しいものにするための努力をしなくてはならない。学生がブラックバイトにハマるのは、その手の職場が実はモチベーションの管理などにたけているからである。大学をアルバイト以上に面白いものにしなくてはならないのだ。

このようにブラックバイトはハマってからでは遅い。早期から予防しなくてはならないのだ。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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