「時間主権の確立」と「多様な正社員」の実現をめざす
「働き方改革」─。なんと聞こえの良い言葉だろうか。
現政権は、これまでも「女性活躍推進」「一億総活躍」など言葉を並び立てる一方で、「経済成長」の名のもとで労働分野を岩盤規制と称し、労働契約法(第18条:無期転換申込権)に特例措置を設け、間接雇用を常態化させる労働者派遣法の改悪を強行してきた。さらに裁量労働の拡大などを企図した労働基準法の一部改正や解雇の金銭解決制度の導入も検討している。
2016年6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」で安倍政権は、『経済成長の果実なくして、分配なし』と明記し、「成長と分配の好循環」のメカニズムとして、(1)子育て支援の充実(2)介護支援の充実(3)高齢者雇用の促進(4)非正規雇用労働者の待遇改善(5)最低賃金の引き上げ─を政策に掲げ、最大のチャレンジは『働き方改革』とした。この中で、「多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換しなければならない」とし、(1)同一労働同一賃金の実現(2)長時間労働の是正(3)高齢者の就労促進─を掲げた。
政権のこうした方向転換の本質は、「格差拡大」や「貧困問題」が政権にとって命取りになるのではないかと気づき、取り上げざるを得なくなった結果ではないかと勘繰りたくなる。
情報労連がめざす社会像
非正規雇用が4割、年収200万以下の労働者が1000万人を超え、不払い残業を含む長時間労働や過労死などの現状等を踏まえれば、まずは、不安定雇用から安定した雇用への転換促進や労働時間の上限規制、勤務間インターバル規制の法制化を謳うべきである。また、「配偶者控除」をやめれば女性の社会進出が進むと主張する前に、女性を取り巻く環境改善と性的役割分担意識の払拭に全力をあげるべきであることは論をまたない。
情報労連は、「21世紀デザイン」でめざす社会像として「個々人の自立・自律と協力・協働に基づく暮らしやすい社会」を掲げ、その実現に向けた三つの政策((1)総合労働(2)社会保障(3)情報福祉)と新たな行動を提唱している。
その一つである総合労働政策として、企業内社会中心に費やされる労働時間を見直し、誰もが仕事と生活の両立に向けた「時間主権の確立」、現行の正規/非正規といった雇用区分をあらため、安定した雇用形態の枠組みの中で働き方の多様化を実現する「多様な正社員」という考え方を示している。
日本が直面する現状や課題を踏まえれば、まさしく「21世紀デザイン」で提唱した「暮らしやすい社会」の実現に向けた取り組みが一層求められていると再認識する。