常見陽平のはたらく道2016.10

学生と貧困とブラックバイト
若者搾取の連鎖に歯止めを

2016/10/21
貧しい若者が増えているという現実を直視し、貧困の負の連鎖を止めなければいけない。

大学1年生の頃、カップヌードルとカロリーメイトで1週間過ごしたことがあった。ほしいものを買いあさったがゆえに、食費を節約せざるを得なかった。いかにも「清貧の時代」の思い出である。記憶の中では美しく書き換えられてしまっている。

しかし、今思うとこれは「貧乏ごっこ」にすぎない。ほしい物を買うなど贅沢をしたからだ。別に仕送りと奨学金でやっていけなくはなかった。今やこれらの食品すら若者にとっては贅沢品である。「贅沢貧乏」ではなく、より深刻な貧困が若者を襲っている。

「学生の貧困」は、今、そこにある問題である。このテーマはメディアでもよく報じられるので、ご存じの方も多いことだろう。18歳人口の約5割が大学に進学する時代になった。しかし、保護者の収入が十分ではない学生も一定の割合いる。奨学金を借りる者や、週5日のペースでアルバイトをしなくてはならない層が出現している。学業に支障をきたしている者もいる。アルバイトが忙しいので、大学で何かイベントを企画するのも一苦労だ。

学生たちから「お金がない」という話をよく聞く。まともな食生活をしていない者も散見される。安い物を含め、何かをごちそうすると、こちらが恐縮するくらいに喜ぶ。本当に食べることに困っているのだ。ファストファッションなどで安くおしゃれをしているから気付かないが、彼らの一部は立派な貧困状態である。

「自由で、遊んでいる」という、バブル期のようなイメージで若者を捉えるのはやめにしよう。現在の学生生活は、単位の取得条件も厳しく、生活に困窮している層もいる。将来の不安もそうだが、まずは目の前のことでいっぱいいっぱいなのだ。

学生を使い潰すブラックバイトが、若者の経済事情にうまくつけこんでいるのも明らかだ。生きるためには働かなくてはならない。学生たちにとっては、働く機会を提供しているという意味で、ブラックバイトであれバイト先は有り難い存在だ。勉強が嫌いな者にとってはアルバイトの方が楽しいとも言う。店側も人材マネジメントに長けており、学生たちのモチベーションを上げるのがうまい。学生たちはブラックバイトだと認識しておらず、むしろ学校よりも楽しい場だと解釈してしまっている。大学教員としてはそんな職場には怒りの感情すら抱いてしまうのだが。

働く機会を提供することは、企業が果たすべき大きな社会的な役割である。働くことで、人は生活をすることや社会に参加することができる。喜びを得ることもできる。

しかし、貧しい者を見下し、安い賃金で使い潰す連鎖はなんとしてでも阻止しなくてはならない。社会に負の連鎖が広がる。若年層の数はどんどん減っていく。その若者を使い潰すのは、社会を不幸にする行為だ。

貧しい若者が増えているという現実を直視し、貧乏だから仕事をやるという態度ではなく、彼らがより良い環境で働き、少しでも豊かになることを応援しなければこの国の未来はない。まずは自分の職場を直視し、若者搾取企業になっていないか点検すること、訪れた店のアルバイト風の若者に優しく接することから始めよう。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学専任講師。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所客員研究員。『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『普通に働け』(イースト新書)、『僕たちはガンダムのジムである』(ヴィレッジブックス)、『「できる人」という幻想』(NHK出版新書)など著書多数。
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