人手不足と労働組合「離職率が低い」企業説明会を開催
自治体と労働局が連携し創意工夫
「低離職率」の企業説明会を開催
大阪労働局が「離職率10%未満」など、労働環境の良さに着目した合同企業説明会を今年3月に開催した。
参加した企業は大阪府内の中堅・中小企業40社。(1)直近3事業年度に採用した新卒者の離職率が10%未満(2)ワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでいる─の両方の基準を満たしている企業が参加した。学生の注目も高く、平日の午後にもかかわらず132人が訪れた。
「普通の企業説明会では求職者が集まりづらくなっています」
こう説明するのは、大阪労働局職業安定部職業安定課の大木隆久課長。同労働局では、人手不足時代に対応した戦略的な取り組みを展開し始めている。
大阪府内の完全失業率は、2010年7~9月期に7.7%だったが、2016年4~6月期には4.5%まで回復。有効求人倍率は今年7~9月期に1.40倍となり、1974年9月(1.45倍)以来の高水準となった。
「リーマン・ショック時は、求職者がハローワークに殺到し、一人でも多くの人に就職してもらおうと目の前の求職者にとにかく対応しました。しかし、今は雇用環境の好転や少子高齢化の影響などで求職者が減る一方で、求人数は増えています。こうした中でハローワークの存在意義をリーマン・ショック時と同様に社会に示すためには、私たちも知恵を絞らないといけません」と大木課長は話す。
こうした取り組みの一環として、前述した合同企業説明会のほかに、同労働局は「世界シェアNo.1」や「世界初」「オンリー1」など世界的に活躍する企業を集めた合同企業説明会を2015年度に開催した。この説明会には537人が参加。参加企業も「予想を超える参加者があった」と感想を寄せた。また、夜勤のない介護職の求人を集めた就職面接会や、「モノづくり女子」を集めたセミナー・面接会─を開催するなど、これまでにない取り組みを同労働局では展開してきた。大木課長は、「付加価値を見いだした上で積極的にPRしないとハローワークに求職者が集まらない時代」と指摘する。
WLB重視の求職者が増加
こうした状況で求職者の意識も変化しいている。
「若い人の大手志向は今も変わりません。ですが、それと同じくらいワーク・ライフ・バランスや福利厚生を意識するようになってきています」(大木課長)
求職者は「ブラック企業」という言葉や労働条件に敏感になっている。冒頭の離職率の低い企業の合同説明会にたくさんの学生が集まったこともそれを裏付けている。ワーク・ライフ・バランスがとれている労働環境は、企業の付加価値の一つになっていると言えそうだ。
「今後は、就職後の定着率という指標がとても大切になってくると思います」と大木課長は分析する。定着率向上のためには、求職者が就職後に「こんなはずではなかった」と早期退職しないことが要となる。そのためには求人内容と実際の労働条件が異なる、いわゆる「求人詐欺」は、解消されるべき課題となる。
大木課長は、「求人内容と実際の就業現場の条件の違いをなくしていくことは労働行政の使命です。ハローワークでは、いただいた求人票に記載されている求人条件が労働法令に抵触していないか必ずチェックしています。特にトラブルの生じやすい固定残業代を採用している企業には、制度の内容を必ず説明しています。これらのことには、かなり力を入れています」と話す。
「ハローワークは、かつて職安と呼ばれていた頃から、サービス内容がずいぶんと進化しています。労働組合の皆さんにはそのことをぜひ周知してほしい」と大木課長は力を込める。
労組の役割発揮を
労働局の取り組みの一つに、自治体と労働局が締結した雇用対策協定がある。全国の自治体と地方労働局が協定を締結し、地域特有の課題を共有することで、連携して対策に取り組むことが目的だ。大阪府内では大阪府をはじめ堺市、東大阪市、高槻市、吹田市、柏原市で締結されている。
協定は、労働局と自治体、それに商工会議所などが加わって締結されることが多い。人口流失を防ぎたい自治体、管内の求人者に求職者を結び付けたい行政、人材を確保したい企業。各々の期待が合致する取り組みだ。
ただし、今のところこの協定に労働組合は加わっていない。求職者がワーク・ライフ・バランスなどの労働環境を重視する時代に、労働組合の役割は大きい。地域の雇用環境の向上に向けて、労働組合の参画を検討したい。