特集2016.12

人手不足と労働組合「ホワイト求人労働協約」を締結
安心提供で採用増に効果あり

2016/12/15
今年8月にエステ業界最大手のエステティックTBCと「エステ・ユニオン」が「ホワイト求人労働協約」を締結した。背景やその後の成果を会社担当者に聞いた。

「ホワイト求人労働協約」とは?

今年8月にエステ業界最大手のエステティックTBCと「エステ・ユニオン」が「ホワイト求人労働協約」を締結した。

この「ホワイト求人労働協約」。企業の人手不足を解消する有効策であるとともに、ブラック企業の淘汰にもつながる画期的な労働協約だ。

その内容を見てみよう。ポイントは三つ。(1)職場環境の情報公開(2)求人条件表示の共通化・明確化(3)求人条件以下での労働契約締結の禁止─の3点だ。

まず(1)では、採用者数・離職者数■平均勤続年数■月平均所定外時間■有休平均取得日数■育休取得者数■役員・管理職の女性比率割合─など、若者雇用促進法と女性活躍促進法の情報公開項目をすべての求人媒体で主体的に公開する。

(2)では、各固定残業代に関する計算方法などを明記し、各求人媒体での文言を統一する。

(3)では、労働契約が求人情報を下回らないことを各求人媒体に明記するとともに、内定時に労働条件通知書を交付する。

これらが協約の骨格だ。これほど情報公開を約束した労働協約はおそらく日本初だろう。

新興企業の乱立が背景に

この協約は、労働市場健全化の第一歩となる力を持っている。正確な情報公開により、求職者がより良い労働条件の企業を選ぶという市場原理を働かせる要因となるからだ。

企業にとってこれらの項目を全公開するには決断が必要だ。背景にあったものは何だろうか。TBCグループ株式会社の長南進亮・執行役員に話を聞いた。

「15年ほど前は、他業種の一般企業が採用を絞っていたこともあって、応募者数はかなりありました。その後、徐々に減っていったのですが、大きく減るというわけでもありませんでした」

「それが、5年くらい前から脱毛専門サロンを展開する企業が乱立してきました。それらの企業は当社より約5万円も高い月給で人を集めだして、求職者がそちらに流れました。採用計画に対して毎年50人ほど足りない状態がここ数年続いています」

新興脱毛専門サロンの高い給与額は、「固定残業代」を含んだ金額だ。いわば見た目の賃金が高いだけだ。そこに求職者が引き寄せられた。これでは労働条件向上の好循環は生まれない。むしろ負の連鎖につながる。長南執行役員は、「見た目の競争力を担保するために当社でも導入するしかなかった」と振り返る。

教員からの好評 採用数増

─なぜ協約締結に至ったのですか?

「ユニオンからは、業界全体の問題ではないかと意見提起されました。それで当社の表記は適正にしようという話になったのですが、それでは当社だけ競争力が低下しかねない。そこで、世間に向けてアピールするために労使で考えた結果、労働協約を締結しました」

─協約締結の効果はありましたか。

「専門学校や高校といった学校経由での採用で、とても良い評判を得ています。高校生の応募が非常に増え、来年は数年ぶりに採用計画の人数を達成できそうです」

─成果が出ていますね。

「学校の先生からの評判がとても良いと聞いています。当社の採用担当者が学校で説明する際には、学生の皆さんに情報公開の項目・数値を見せるようにお願いしています。高校では特に保護者が絡みますので、そういう点が安心材料になっているのではないでしょうか。また、美容系の専門学校では以前から内定時に労働条件通知書を渡してほしいという要望がありましたので、これもとても評判が良いですね」

協約の長期的な効果

長南執行役員は、「エステ業界は一にも二にも人です。従業員が技術を身に付けてお客様に提供する。そのために定着率を上げることはとても大切です。ですから、当社に入ってもらう前にまずミスマッチをなくしていきたい。当社はこういう会社ですよというのを示して、それを選んできてくれた人の方が定着率は高くなります。会社側も求人広告を出したり、研修したりするのに費用がかかりますから」と話す。

エステ・ユニオンの佐藤学さんは、「協約はまず入り口です。協約で人が採用しやすくなれば、休憩が取りやすくなったり、残業を抑制したり、働きやすい環境につながります。それが、コンプライアンス順守や定着率の向上ひいては企業の発展に結びつくはずです」と訴える。

「ホワイト求人労働協約」の取り組みはまだ始まったばかりだ。労働条件向上の好循環に向けて、画期的なこの協約を他産業・他労組にも展開していきたい。

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