特集2016.12

人手不足と労働組合安価な労働力と捉えない
外国人労働者がモノを言える権利の擁護を

2016/12/15
人手不足が顕在化する中で、外国人労働者受け入れを求める声も高まっている。しかし、安価な労働力としての受け入れは、来日する外国人労働者だけでなく、日本で働く労働者のためにもならない。基本的な権利保障が何より重要だ。
指宿 昭一 弁護士
日本労働弁護団常任幹事

本音を隠した受け入れ

日本の外国人労働者は二つの類型に大別できます。一つ目は通訳や料理人などのように在留資格によって仕事の内容が決まっている人たち。二つ目は、日系人や永住者のように、どんな仕事でもできる人たちです。

日本政府は、未熟練労働者の受け入れを認めてきませんでした。けれども1990年代から未熟練労働ではないという建前で外国人労働者を受け入れてきました。日系人を「日本にゆかりのある人たち」、技能実習生を「国際貢献」として受け入れ、前者は約36万人、後者は約21万人がすでに日本で働いています。

さらに、建設・造船分野で東京オリンピック・パラリンピックに向けて元技能実習生を労働者として受け入れる制度や、国家戦略特区での家事労働者の活用などが実施されることになっており、さまざまな形で未熟練労働者の受け入れが広がっています。

人権侵害の博物館

日本は90年代から本音と建前を使い分けた外国人労働者政策を採ってきました。しかし、その使い分けはすでに立ち行かなくなっています。政府の「働き方改革実現会議」は、外国人労働者の受け入れを検討項目に挙げました。その前段では自民党の特命委員会が外国人労働者の受け入れを提言しています。これは、安倍政権が外国人労働者を「労働者」として正面から受け入れざるを得ないと認めたものだと理解しています。

しかし、これらはあくまで経営者目線であることに注意すべきです。そもそも、奴隷労働との批判もある現行の技能実習生制度の総括をせず、新制度を作ることは大きな誤りです。にもかかわらず、政府は技能実習制度を廃止するどころか技能実習生受け入れを拡大する技能実習適正化法を成立させました。

技能実習制度は人権侵害の博物館と言われるほど大失敗の様相を呈しています。最低賃金は払ってもらえれば良い方で、時給300円とかもザラ。寮費や光熱費などを不当に天引きされ、手取りの賃金が月2万~3万円という人もいます。長時間労働による過労死もあります。問題を挙げればきりがありません。

この制度には大きく三つの問題があります。

一つ目は制度の目的を偽っていること。安価な労働力の確保が目的なのに、国際貢献などと嘘の目的を掲げています。

二つ目は、職場の移動の自由がないこと。職場に不満や違法行為があっても、移動できない現実があります。

三つ目は、受け入れシステムの問題です。送り出し側と受け入れの監理団体とで、二重に搾取される構造があります。例えば、渡航前費用として多額のお金を取られる。また、送り出しの段階で日本人と話してはいけない、寮から出てはいけない、恋愛してはいけないなどの不当な条件を付けられることもあります。

二つの視点が大切

この三つの転換が必要です。すなわち、労働者として受け入れること、移動の自由を認めること、国が制度として責任を持って、求人と求職を行い、民間団体による中間搾取を許さないことです。これが最低条件です。

にもかかわらず、技能実習適正化法に基づく新制度はこの問題をまったくクリアしていません。相変わらず国際貢献を名目にし、受け入れ範囲と人数を拡大しています。管理体制を強化するものの、問題の解消とは程遠いものです。

この問題を語る上では、(1)来日する労働者の権利保護(2)日本で働く労働者の権利保護、雇用確保の観点─という二つの視点が大切です。

例えば、人手不足が深刻な建設分野なら、問題の改善は本来、職場環境の改善で対処すべきです。ところが外国人労働者の受け入れで解決しようとすると、環境改善の芽が摘まれてしまう。低賃金の外国人労働者を受け入れ続けるだけでは、業界の健全な発展も望めません。日本語能力の低い労働者の受け入れは、労働災害のリスク上昇にもつながります。

労働力人口が減少する中で、外国人労働者は受け入れざるを得ない、受け入れるべきだと私は思っています。ですが、安価な労働力として受け入れるのには反対です。人権保護と雇用・労働条件の質の維持が何より重要です。

モノを言える権利

外国人労働者問題の根源には、彼・彼女たちがモノを言えない労働者だということがあります。実習生が抗議したり、改善を求めたりしたら暴力的に帰国させられる実態すらあります。

日本の労働法は、労働者がモノを言えるように整えられています。労基法をはじめ、労組法は労働者が集団的にモノを言える権利を憲法で保障しています。しかし、外国人労働者のようにモノを言えない労働者が増えると、うるさい日本人労働者の代わりに、黙って働く外国人労働者を連れてこようと考える経営者も出てくるでしょう。これと同じように日本人労働者にモノを言わせないようにしようという発想が社会に広がるでしょう。

だから、外国人労働者が日本で働く以上、彼・彼女たちが団結してモノを言う権利を保障することは、彼・彼女たちのためだけではなく、日本で働く労働者のモノを言える権利を守るためにもとても大切だということです。日本の労働組合は、こうした視点から外国人労働者の団結を手助けする責任があります。彼・彼女たちは日本の労働法の知識がほとんどと言っていいほどありません。ですから、外国人労働者の組織化とともに、外国人労働者に対するワークルール教育にもぜひ取り組んでほしいと思います。

インド料理店シャンティの従業員たち。賃金不払い・倒産などの問題から組合を結成した(写真提供・指宿弁護士)
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