渋谷龍一のドラゴンノート2017.04

第6話 心の「スイッチ」が入る時

2017/04/18

女性が再び働くといっても多くは正社員ではなく主婦パートになります。確かに企業は母親の採用に躊躇し、若年者に目を向けますが、一方でその母親が出産で退職したのは、なぜですか。子育てしながら正社員を続けるのが無理だと判断したからでしょう。

子どもを保育園に通わせながら正社員で働くことはできますが、子育てがなくなるわけではありません。急に病気やけがをしたり、園の行事や役割もいっぱいあります。企業にいづらい体験ばかりが続きます。「子どもが急に……」と仕事の途中で帰る。翌日はお休みになりがちです。くどいですが、正社員で働くことはできます。しかし、職場の人たちは早帰りもなく、翌日のお休みもなく、他人の分まで迷惑をこうむる格好になりますから、この母親と同じ評価なら納得しません。だから、子育て女性は低い評価になり、昇格や昇進ができないか後回しになります。

ここがポイントです。そうなることがわかるから辞めたのですか。本当はそうではないでしょう。「世の中はそういうものだ」「妻が辞めないと子育てができない」と思い込んでいたから辞めたんでしょう。

最初は気にとめていませんが、子どもが病気になっても、勤め続けている夫が休むわけでもなく、あなたがずっと看病してへとへとに疲れた時に気づくのです。どうして、夫が勤め続けているのだろうか。なぜ私が辞めたんだろう。夫の人生が以前とまったく同じなのに、あなたの人生は激しく揺れ動いています。

それでも働く必要があれば、いまの状況を壊さずに済むのは主婦パートだけです。その選択には、さまざまなものが付着してきます。「私はどうして辞めちゃったんだろう」という後悔があります。「それしかなかった」という自嘲があります。「あきらめるしかないでしょう」という方便があります。「一生懸命に働いているんだから」という、言い聞かせがあります。

渋谷 龍一(しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
『女性活躍「不可能」社会ニッポン原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)で2016年貧困ジャーナリズム賞を受賞。
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