渋谷龍一のドラゴンノート2024.08-09

【第7編】労働組合〜ジェンダーギャップ最劣悪国でどうしますか〜クミジョの「壁」

2024/08/19

クミジョ増員計画を立ててクミジョを増やそうにも、引き受ける女性がいない。頼んでも断られた、候補者が尽きた、といった事態はどうして起きるのか。

そりゃ、セクシズムやトークニズムが原因だよ、とカンター流に言えるあなたは素晴らしい。ようやくクミジョ論議が現実味を増してきます。しかし、労働界のみんながカンター理論を知っているわけではありません。クミジョになるのを打診された女性の立場や心情を理解するのはなかなか難しいものです。

改めて、クミジョが増えない原因を探ろうとして、クミジョにとっての「壁」は何かを問うとします。ハードルは何なのか。そもそも女性組合員が少ないから、と言い切れるのか。

連合栃木総研『とちぎクミジョ白書2019』によると、まずクミジョの家庭責任の重さがあります。家庭と仕事で精いっぱいなのに、労組までは絶対に無理! なぜ二重苦にあえぐ私が、三重苦を引き受けなければならないのか?

同白書は、クミジョとそのパートナーの家事負担を明らかにしています。クミジョの孤軍奮闘ぶりがわかります。しかも、パートナーがいない、パートナーはいるが子どもはいない、パートナーと子どもがいる、の順番でクミジョは見事に少なくなります。あなたの労組ではどうですか。

ついでにバリバリ仕事をしているクミダンに目を向けてください。どうしてクミダンのハードルは低いのか。ケアされる側だからでしょう。俺たちのようになれ、早く追い付け、と言われてもシラケるのは、当たり前です。クミジョになる前からそれに気付いているのです。

なぜ? そんなことは会社と同じだからです。女性管理職を増やしたい、と言われても…。しかも、会社の方が一歩も二歩も進んでいて、ちょっぴり理解力があって、いくらかマシです。

それに気付かないか、重視しないクミダンがいます。置いてきぼりになっているクミダンたちがクミジョの壁になっています。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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