渋谷龍一のドラゴンノート2024.11

【第7編】労働組合〜ジェンダーギャップ最劣悪国でどうしますか〜クミジョの「崖」

2024/11/15

労働組合で信じられないような経験を重ねるうちに、モチベーションが下がっていきます。

さらに落下を続け、一刻も早く逃げ出したい、と思うようになります。すぐ辞められないのなら任期までやり過ごすしかない。これがクミジョの「崖」です。

どうしてそうなるのか。まず、労組の作法に足がすくみます。男性流のタテ型組織の肩書主義や前例主義になじめず、スクラム、ハチマキ、団体交渉、機関紙、ガンバロウ三唱も抵抗感が強い。同調圧力の中で、感情労働が増え、ストレスが満々となります。

過労もクミジョを襲います。男女平等、共同参画、女性活躍などの会議や活動はクミジョに集中します。なぜだが、女性のことは女性がやれ、と当然視するクミダンが多いのに嫌気がします。

クミダンの好意的差別と敵意的差別が、やたら気になります。思いやりが過ぎて、そんなに無理しなくていいよ、ご主人に悪いから、と言われて不快になったと思ったら、やっぱり女じゃ労組は無理だ、女性だけの集会に行って変な知恵を付けてくるな、と浴びせられ、恐怖感でいっぱいになります。

クミダンなら難なく通る意見も、クミジョが言えば、ちょっと違うんだよなあ、と言われます。練りに練った企画なのにスルーされたり、前例がないと否定されます。居心地が悪いのではなく、居場所がないのです。

なぜ、こんなに我慢しなくてはならないのだろう。女性組合員が増えてきたのに、男性型組織から脱却する方向に行かない。令和時代なのに昭和のまま。クミジョが増えないのもクミジョの責任のような言い方をされる。

令和時代も労組の衰退が止まらないけれど、その本当の原因は、労組が変われないことにある。すぐ近くにいる女性にすら対処できない。クミジョは、崖っぷちでそれに気付いています。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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