日本人として向き合う在沖米軍基地問題辺野古反対派リーダーの長期勾留と人権
「表現の自由」奪う動きに警戒を
世界的な緊急行動を展開
米軍基地反対運動のリーダーである沖縄平和運動センターの山城博治さんが2016年10月17日、有刺鉄線1本を切ったとして器物損壊の現行犯で逮捕された。その後、10月20日に公務執行妨害と傷害の容疑で再逮捕され、翌年3月18日に保釈されるまで、およそ5カ月間にわたって長期に勾留された。これに対して、国際人権団体であるアムネスティ・インターナショナルが釈放を求める緊急行動を世界的に展開した。
アムネスティ・インターナショナル日本の山口薫さんは、「沖縄の米軍基地問題を巡ってはここ数年、機動隊との摩擦が激しくなるなどしていたため注視してきました。その中で反対派のリーダーである山城さんが逮捕され、勾留が長期化していました。これはおかしいということで国際事務局の調査員へ連絡し、その後調査を経て支援が決まりました」と話す。
アムネスティ・インターナショナル本部は今年1月26日、山城さんの釈放を求めるアージェント・アクション(緊急行動)を発表した。そして、翌27日には日本支部が声明を発表した。
大きな反響
日本支部声明は、山城さんの長期勾留について、「国際人権基準は、公判前に釈放することを前提としており、このような拘禁は身体の自由への侵害である」と非難、加えて山城さんが家族とも面会できない状態が続いたことから、被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)にのっとっておらず、「家族の訪問は保障されるべきである」とした。山口さんは、「逮捕の状況から証拠隠滅の恐れが極めて低いにもかかわらず、5カ月間も勾留したことはまったく理解できません」と指摘する。
さらに日本支部声明は、「山城さんの逮捕・拘禁が運動への萎縮効果を生むおそれがあることに懸念を表明する」として、「表現の自由」の観点からも問題があると指摘した。山口さんは「今回のような勾留が受け入れられてしまえば、人権活動家が次々と長期勾留されることになってしまいます。そうすれば、運動が萎縮する作用も生まれます。こうした不当な勾留は許されないという姿勢をアピールする必要があった」と話す。
アムネスティ・インターナショナル日本が表現の自由に関するケースで緊急行動を展開したのは、2004年の「立川反戦ビラ配布事件」以来2例目。それほど異例の事態ということだ。海外からの反応も強かった。その反応について山口さんは「日本は安全なイメージがあるので、すごく驚かれました。とりわけアジアの支部がすぐに対応してくれ、台湾支部をはじめ大使館に要請文書を出すなどの対応をとってくれました」と話す。キャンペーンは日本のマスメディアでも大きく取り上げられ、長期勾留の問題が社会に認識されるきっかけの一つとなった。
表現の自由を守る
「非暴力で政治的なメッセージを発信する場を政府が保障するということは、表現の自由を守ることです。他人に迷惑がかかるというのではなく、人権の一つなのです」と山口さんと述べる。続けて、「私たちが一番重視しているのは、お互いに意見を言える場がきちんと保障されているということ。そのような表現の自由が確保されていることです」と訴える。世界では、SNSで政治的な発言をすると、国家反乱罪などで逮捕される活動家が増えていると山口さんは指摘する。
アムネスティ・インターナショナル日本は3月28日、「共謀罪」に反対する声明を発表した。声明は、「政府に対し、声を上げることが許される社会が、表現の自由を守る健全な民主主義社会の在り方である」と指摘。山口さんは、「共謀罪が成立すれば、市民の発信力が奪われることにつながりかねません。表現の自由そのものを奪おうとする動きへの警戒が必要です」と警鐘を鳴らす。共謀罪の成立は、基地反対運動をはじめとした「表現の自由」を侵害することが強く懸念されている。表現の自由を確保する不断の努力を続けなければ、市民が発言することすらままならない社会が訪れてしまう。その危機は目の前にある。