特集2017.05

日本人として向き合う在沖米軍基地問題辺野古新基地建設問題に「第三の道」を
基地をつくらなくてもいい選択肢を示す

2017/05/17
シンクタンク「新外交イニシアティブ」が「今こそ辺野古に代わる選択を」と題した提言集を今年2月に発表し、辺野古に代わる選択肢を示した。執筆者の一人である半田滋氏に提言内容のポイントなどを聞いた。
半田 滋 東京新聞論説兼編集委員

辺野古に代わる選択肢

辺野古新基地建設の問題は、沖縄県と日米両政府が互いの主張を譲らないこう着状態が続いている。沖縄県が新基地建設を拒否し続けているにもかかわらず、日米両政府は基地建設の方針を変えていない。この事態を打開するには、三者が納得できる選択肢を示すことが必要だ。「新外交イニシアティブ」の提言は、こうした考え方に基づいている。

提言のポイントの一つは、「海兵隊」の姿を正しく知ることだ。沖縄の海兵隊は、2006年の米軍再編ロードマップで定員ベース1万8000人のうち、主に司令部の約8000人とその家族9000人がグアムに移転することになっていた。これに対して沖縄県民は、事件・事故が多い実戦部隊の移転を望んだが、日本政府は抑止力の低下を理由に、実戦部隊の残留を望んだ。

ところが、2012年5月の「2プラス2」での見直しでは、司令部ではなく実戦部隊9000人の移転が決まり、沖縄に残るのは2000人規模の第31海兵遠征隊(31MEU)だけということになった。海兵隊の主力である第4海兵連隊がグアムに移転し、第12海兵連隊も海外に移転することになり、実戦部隊の大半が国外に移転することになったということだ。

それでも辺野古に新基地建設が必要なのは、31MEUが利用するからだと日本政府は理由付けている。しかし、06年と12年以降では議論の環境が変化している。31MEUは、1年のうち半分は、アジア太平洋地域の各拠点をローテーションしていて、沖縄にはいない。それならば、辺野古に基地をつくるのではなく、沖縄を除いた新たなローテーションで運用すれば、沖縄の基地負担を軽減できる。それにより米軍のアジア太平洋地域でのプレゼンスが低下することもない。

日米両政府と沖縄の思い

日本政府が辺野古を唯一の選択肢という姿勢を変えない背景には、アメリカの要望もあると考えている。辺野古への基地建設は、アメリカの一貫した要求だったのではないか。

1996年のSACO合意で普天間基地の移転先が沖縄本島東海岸沖に決まったが、なぜそこになったのか。歴史をひも解くとアメリカ政府は1960年代にキャンプシュワブの沖合に埋め立て式の滑走路をつくる計画をしていた。この計画はベトナム戦争の泥沼化に伴う国防費の不足で棚上げされた。これが普天間基地移設のベース案になったのではないか。アメリカからすれば当時は自費でつくるはずだった基地が、今度は日本政府が費用を負担してくれることになった。このような「棚ぼた」の話を手放したくないという本音があるのだろう。

日本政府の側からすると、森本防衛大臣(当時)が2012年に「軍事的には沖縄でなくてもよいが、政治的に考えると沖縄が最適の地域だ」と述べたように、沖縄以外の受け入れ先を探すことをしなかった。その結果が現在につながっている。

しかしその一方で、沖縄県議会は昨年の元海兵隊員による殺人事件を受けて、海兵隊撤退を求める決議をしている。沖縄県民は、新基地建設反対の民意を繰り返し示していて、県民の忍耐も限界に達している。

この事態は、アメリカ側にとって、沖縄との関係を悪化させるリスクとなる。状況がさらに悪化すれば米軍にとって「虎の子」の嘉手納基地へマイナスの影響が及ぶことも懸念される。これは、米軍にとっても避けたい事態だ。

ワシントン発の行動が重要

このように三者の思いがある中で、今回の提言は、第三の道を示し、三者が協議のテーブルに着ける内容をめざした。

この提言は、日米安保体制における日本の役割を放棄するものではなくて、日本も役割を果たす覚悟があることを示している。それは、自衛隊と海兵隊が人道支援と災害救援に関して、日米協働の組織を創設すること。もう一つは、移動の即応性を担保するために、海兵隊に対して日本が高速輸送船を提供するということだ。

前者に関しては、人道支援・災害救援活動のために沖縄に連絡調整センターを設置し、海兵隊司令部が各国代表と共同訓練の連絡調整をする。これにより、アジア太平洋地域における日米同盟のプレゼンスが高まると考えている。

後者に関しては、2005年の米軍再編中間報告の15項目の中に、高速輸送船の提供が入っていて、アメリカの要望の一つでもある。費用は、辺野古の埋め立て費用として見込まれている3500億円を充てることができる。また、この費用を31MEUの移転先のインフラ整備に充てることも提言している。

この提言を実現させるための本丸はワシントンにあると言っていい。沖縄で世論を高めながら、ワシントンでのロビー活動を展開し、ワシントン発で日本政府に働き掛ける狙いがある。これまでの日米交渉の経過を見るとアメリカ側の提案の方が実現可能性が高いからだ。沖縄とワシントンで声を高めながら、日本政府を挟み撃ちにしたいと考えている。

トランプ政権の影響

在沖米軍基地に関する日本社会の関心は高いとは言えない。だが、トランプ政権に移行したことで、日本社会全体にかかわる、より大枠の問題が生じてくると思う。それはアメリカからのさらなる武器輸入と日本の防衛費にかかわる問題だ。

安倍首相とトランプ大統領の日米共同声明を見ると、外交や防衛に関して、日本の任務・能力・役割を見直すと明記されていて、これまでよりも踏み込んだ内容となっている。トランプ大統領が日米貿易の不均衡を訴える一方で、日本では安倍政権が防衛費を増大させている。この結果、アメリカ製の武器の購入を求める圧力が高まる懸念はある。

実際、自衛隊がアメリカ政府から購入する武器の金額はここ数年間で3倍にも増えている。その購入方式はFMS(フォーリン・ミリタリー・セールス=対外有償軍事援助)と呼ばれるもので、この方式は、武器の価格や納期が見積もりに過ぎず、アメリカ側が一方的に契約を解除でき、料金は前払いというアメリカ側に有利なものになっている。さらには、安保法制の成立によってアメリカの戦争に今以上に協力を求められる懸念もある。

また、辺野古新基地の建設費は1兆円に上るとみられている。使われるのは、私たちの税金だ。防衛費の増大が社会保障費の削減につながる懸念すらある中で、私たちはこの問題に無関心ではいられないはずだ。このような観点からも問題意識を持ってほしい。

今こそ辺野古に代わる選択を
新外交イニシアティブ(ND)からの提言

シンクタンク「新外交イニシアティブ」が2017年2月に発表した提言。海兵隊の運用自体を見直すことにより沖縄県内はもとより日本国内への新しい基地の建設なしに、普天間基地の返還を可能とする方法を提言している。具体的な方法として、現行の米軍再編計画を見直し、第31海兵遠征隊(31MEU)の拠点を沖縄以外に移転することや、日米が合同で人道支援・災害救援活動を行い、その連絡調整センターを沖縄に設置することなどを提言している。

新外交イニシアティブが今年2月に発表した提言「今こそ辺野古に代わる選択を」
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