特集2017.05

日本人として向き合う在沖米軍基地問題「沖縄報道」のここがおかしい
「デマ情報」がまかり通るのは、なぜ?

2017/05/17
インターネットをはじめとして、沖縄に関する「デマ情報」が流通するのはなぜか。背景にあるメディア業界の構造などについて、ジャーナリストの津田大介氏に聞いた。
津田 大介 ジャーナリスト
政治メディア『ポリタス』編集長

─インターネット上に沖縄に関するデマ情報が流通しています。どのように捉えていますか。

政治的な目的がはっきりしていると思います。安倍政権に対して明確な対決姿勢を示している自治体は沖縄県しかありません。政府としては、沖縄の世論が分断されるほど、自分たちのメリットが大きくなる。現政権を支持する人たちは、そういうことがわかっているので、世論を分断しようとする。そういう情報戦がネットを中心に繰り広げられているというのが僕の認識です。

政権を支援する側は、本土から派遣された機動隊と反対派とのぶつかり合いの場面をビデオに収めて、そのわずか一瞬だけを切り取って、「反対派は暴力集団」というプロパガンダを流す。けれど実際は、機動隊による強引な排除がきっかけになっている。

厄介なのは、政権を支援する側が流したものが全部間違っているわけではないことです。映像を見れば、確かにそのように見える場面がある。でも、それはごく一部に過ぎない。けれども、多くの人は辺野古や高江に実際に行くわけではないので、その情報がネット上で独り歩きしてしまうわけです。

─確信犯的に情報が拡散されているということですね。

そう思います。政権を支持する人たちにとって、基地建設の現場は、完全に政治運動の場になっています。悪意を持って発信された情報に対して、反対派が対応できていない状況があります。

─そうしたネット上の情報が地上波にも波及したのが、東京MXテレビの「ニュース女子」でした。テレビにまで拡散したのはなぜでしょうか。

テレビ業界はこれまでネットの情報を下に見ていました。それが今はテレビがネットの情報を後追いするようになりました。

それに加えて、テレビ業界には経営難という問題がある。今回の「ニュース女子」に関して言えば、MXテレビの最大スポンサーであるDHCが持ち込んだ番組で、テレビ局側が社内考査ではね返すことができなかったのでしょう。

しかし、この番組は偏っているだけではなくて、その内容がほとんどデマ情報で事実に基づかないものばかりでした。例えば、番組は基地反対派が救急車を止めたと放映したが、消防署に実際に問い合わせると、救急車は徐行したかもしれないという程度だった。自主的に徐行するのと「止めた」とでは、明らかに事実が異なります。MXテレビは、検証番組を放送しましたが、これも検証にならない単なる言い訳に過ぎない内容でした。

─デマ報道をさせないようにするにはどうすればよいでしょうか。

政治的な「右」「左」の主張は、自由だと思います。ですが、政治的な主張を補強するためにデマを使うことは許されません。

トランプ大統領当選の背景で、「フェイクニュース」が世論形成を後押ししたと言われていますが、僕は日本こそ「フェイクニュース」の先進国だと思っています。特定の政治的主張を強めるためにデマを流して固定化させる動きは、日本でこそ広がっていて、日常化している。だからこそ、僕は日本がこの問題を率先して解決しないといけないと思っています。

対処療法として考えているのは、ネットメディアの広告のあり方です。ネットメディアのビジネスモデルの中心は広告です。サイト上に広告が表示されて、アクセス数が増えるほど、お金が入る。デマであっても扇情的な情報を流すほど、アクセス数が増えて収入が増えるモデルなのです。しかし、それに対するペナルティーはない。

一番問題なのは、デマ情報でお金を稼いでいる人がいること。個々のサイトに広告を張り付けられないように、広告会社が悪質アカウントを認定するようにしないと問題は解決しないでしょう。

国外では、そうした対応が始まっています。例えば、コカ・コーラ社はYouTubeから広告を引き上げました。ヘイトスピーチの多いサイトに自動的に広告が挿入されてしまうと、ブランドイメージが毀損されてしまうからです。

もう一つ大切なのは、発信者情報をたどれるように通信事業者が、情報を保管しておくことです。現状では数カ月間で情報が消去されてしまい、デマやヘイトスピーチを垂れ流しても、逃げ切れてしまう。公的な役割を担う存在として通信事業者が責任を果たしていくべきです。同じようにツイッターなどのプラットフォーム事業者もアカウント凍結などの対処を行っていくべきです。

こうした対応は、表現の自由を侵すものではありません。ただ単に広告を張り付けられないようにするだけです。インターネットというメディアの大きな脆弱性を防ぐという意味でやらなければならない対応です。

─沖縄の側からは、どのような情報発信が有効になるでしょうか。

インターネット上の検索結果が、だいぶ汚されているので、なかなか難しい問題です。

沖縄の基地問題の本質は、国防というすべての国民がかかわる問題に対して、沖縄だけがそのコストを不当に押し付けられていることにあります。しかし、多くの人にとって、沖縄に負担を押し付けているという加害者意識はありません。だから、「沖縄は基地がないと経済が成り立たない」というような正しくない情報を利用して、罪の意識を感じずに済まそうとしているのでしょう。沖縄は負担を押し付けられた経緯などを伝えていかないといけない。

他方で沖縄にも基地が必要だと思う人もいます。そのような沖縄の複雑な世論を複雑なまま伝えることが必要だと思います。その複雑な問題を生み出したのは、紛れもなく本土の側なのですから。

─沖縄の問題に関心のある人は、どのように情報収集すべきでしょうか。

僕自身、ここ2年くらいですごく変化したことがあって、それは沖縄出身の知識人と話した時に、「お前は『琉球新報』と『沖縄タイムス』を毎日読んでいるか。読んでいなければ、お前は安保を語る資格はない」と言われました。読んでみると、この二紙は安保・軍事問題について異様に詳しい。基地賛成・反対かかわりなく、単純に詳しくて役に立つんですね。

沖縄の二紙は、政治的な立場ではなく、沖縄の立場で報道します。それは、カタールの衛星テレビ局「アルジャジーラ」が中東の目線で報道するのと同じことです。主張の左右の問題ではないことを本土は意識することが大切だと思います。

─「沖縄の二紙を潰せ」という発言もありました。

そのような発言をする人たちにとって、デマの情報は「ファクト」として流通していて、最初から正しいものだと思い込んでいるからそれを引用して恥をかくわけです。でも、その情報は謝罪もされないまま、右派ネットワークの中で温存され、繰り返し使われてしまう。

─個人でできることはありますか。

デマ情報やヘイトスピーチを見つけたら、地道にクレームを入れたり、プラットフォーム事業者に通報したりすることですね。その点では労働組合はデマ情報を見つけたら、それを否定する情報をきちんと組合員に伝えた方がよいのではないでしょうか。相手が組織的に情報を流しているとしたら、こちらも組織で対抗する必要があると思います。

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