トピックス2017.07

長妻昭衆議院議員に聞く
「年金」の不安と疑問

2017/07/21
情報労連は6月14日、「ミスター年金」こと長妻昭衆議院議員に「年金」に関する疑問をぶつける座談会を開催した。長妻議員が組合員の質問に答えた。

年金の仕組みを知ろう

─情報労連で組合員にアンケートを取ったところ、最も関心の高かった項目が年金でした。今日は年金に詳しい長妻議員に組合員の皆さんの疑問に答えていただきます。

中水自分が将来、年金を受け取る年齢になったときに、年金がきちんと支給されるのか不安です。

長妻最初に社会保険の全体像をお話ししましょう。社会保険とは簡単に言うと、個人や家族の悩みを、みんなの悩みにすることです。

例えば2000年にできた介護保険。制度ができる前は、介護の悩みは家族が抱える悩みでした。その悩みを、みんなの悩みとして40歳以上の人が保険料を出し合って支えあおうと創設されたのが介護保険です。

年金も社会保険です。年金は、長生きのリスクに対応する保険です。老後の悩みをみんなで共有しましょうという制度です。

よく話題になるのが、年金の世代間格差です。いま年金をもらっている高齢者に比べて、将来世代のもらえる年金額は少なくなるという不安です。世代間格差は金額だけに着目すれば確かにあるかもしれません。ただ、もっと広い視点で見ると見方も変わってきます。日本で皆年金制度ができたのは1961年です。いま年金を受給している世代の人たちの中には、若い頃に年金制度がなく、親に生活費を仕送りしていたという人たちがたくさんいました。年金制度ではなく、家族が高齢者のリスクを抱えていたのです。そう考えると、今の視点だけで世代間格差を語れません。

一方、将来にわたって年金制度が維持できるかという皆さんの心配も理解しています。これに対しては、日本の年金制度は積立方式ではなく賦課方式なので、将来的に年金財政が悪化した場合でも、税で賄えば年金制度は維持できると言うことは可能です。

とはいえ、現状の制度のままで将来的に維持できるのかという不安もあると思います。現在の制度では、年金が支給できないという事態は、国家によるデフォルトとされているので、税を投入してでも支給される仕組みになっています。

現在の年金には、所得代替率という仕組みがあって、年金受給額は現役世代の所得の半分を保障しますということになっています。その額を下回りそうになったときは、政府は仕組みのあり方を検討することになっています。その際に検討されるのは、税金を補充するのか、受給額を減らすのか、保険料を上げるか、支給年齢を引き上げるかといった方法になります。

所得代替率の計算方法にはカラクリがあって、かつ、年金積立金の利回りがかなり高い前提で設計されています。そうすると、実際に想定されている金額をもらえないという懸念が強まることに注意が必要です。

─低年金を背景に高齢者の生活保護受給率が高まっていますね。

生活保護を受給している世帯の約半数が高齢者世帯というショッキングなデータがあります。生活保護が年金の代わりになりつつある、ということです。このままでは、生活保護費がさらに増加していきます。私たちは、年金の最低保証機能が必要だと考えています。

「年金カット法案」の中身は?

平塚安倍政権が年金積立金(GPIF)の運用方法を変更しました。安定した運用が可能なのか不安に感じています。

長妻年金積立金は現在140兆円ほどあります。民主党政権では、国内外の株式に投資する割合は25%が上限でした。安倍政権はこれを一気に50%にまで引き上げました。

これについては、そもそも決定のあり方に問題があります。安倍政権は、被保険者の代表が入る厚生労働省の審議会ではなく、成長戦略を検討する諮問会議の中で決めました。私たちの大切な年金積立金を成長戦略に使うのはおかしいですし、被保険者の声を聴くことなく決めたことには大きな問題があります。

高代安倍政権が年金改革法を成立させました。法案の内容を教えてください。

長妻私たちは「年金カット法案」と呼んでいます。年金は保険料が主な財源ですから、賃金が下がると得られる保険料も減少します。一方、年金受給者からすると年金受給額が変わらないまま物価が上がると生活が苦しくなります。

ここがポイントで、これまでは物価が上がって、賃金が下がるという局面でも年金受給額は据え置きにしていました。「年金カット法案」は、この点を修正して、賃金が下がったら、物価が上がっても年金受給額を賃金に合わせて下げるようにしたのです。これによって、年金受給者の生活は苦しくなることが想定されます。

介護について聞く

川崎「消えた年金」問題は、その後どうなったのでしょうか。

長妻5000万件のデータを照合して、1459万人分、2.6兆円分の記録が元に戻りました。驚くべき数字で私たちが大騒ぎをしなかったら、これが見過ごされたままになっていました。

私が厚生労働大臣時代に、紙台帳の6億枚、8900万人分の記録を照合を指示しました。記録が抜けていた人には手紙を出しました。ただ、5000万件のうち2000万件のデータについては、いまだ照合できていません。当時の会社がなくなっているとか、連絡が取れないとか、粘り強くやっているものの、難易度が高いのも事実です。

高代将来的な親の介護が心配です。介護保険制度について民進党の考えを教えてください。

長妻民進党は先の通常国会で「介護崩壊防止法案」を提出しました。この法案では、軽度要介護者、要支援者に対する介護サービスを全国で差の出ないようにすることを義務付けたり、介護従事者の処遇改善などを盛り込んでいます。

川崎介護従事者の処遇改善はどのように行うのですか。

長妻介護という仕事にやりがいを持って働いている人はたくさんいますが、処遇の低さに理不尽さを感じている人もいます。介護従事者の処遇を改善するには財源が必要なので、さらなる税の投入を検討する必要があると考えています。

高代日本は、北欧のように負担は高くても、社会保障は手厚いという国ではないですね。

長妻日本は嫌税感がとても強い国です。給付と負担の関係は、これから非常に重要になってきます。安倍政権は消費税増税を2回延期しました。消費税に関しては逆進性が強いので、私たちは「給付付き税額控除」という仕組みを導入して、過度な負担にならないように提唱しています。

日本は、教育や子育て、介護などの悩みを、社会の悩みにするという考え方が強くなく、アメリカのような自己責任社会になっています。過度な自己責任論が日本社会を潰しているというのが私の問題意識です。

民進党は経済成長のための政策も提言しています。けれども、経済成長は手段であって、目的ではありません。経済成長は、あくまで安定した生活を送るための手段です。経済成長に役に立つ人だけを引き上げて、そうではない人は蚊帳の外。こういう社会にしてはいけない。私たちはすべての人を包み込む、ともに生きる社会をつくっていきたいと思います。

一同本日はありがとうございました。

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