「無期転換ルール」にどう対応する?春闘など労使間論議を経て「NTT労組の雇用政策」を確立
労使の主張に隔たり
多様化する雇用環境は、NTTグループも同様で、約4割が有期雇用者であり、雇用の安定に向けた無期転換ルールの確立は重要な取り組みと認識している。
しかしながら、有期雇用者への処遇改善については、労使双方の主張に懸隔があり、その一つが春闘交渉の結果として現れている。したがって、NTT労組は、組織としての雇用政策の確立を第一義とし、その中で無期雇用への転換を拡大していくとの政策を確立した。
はじめに、その背景について触れておきたい。
2014、2015春闘においては、すべての雇用形態に対し月例賃金改善を要求し、正社員については一定の改善が図られたものの、有期雇用者については、総じて「財務状況や競争力確保の観点から組合要求に応じられない」とする会社主張との溝が埋まらず、ゼロ回答となった。この結果に至る労使間論議においては、有期雇用の位置付け、役割等、春闘前段での企業本部労使間の人員政策論議を通じた、定義付けが重要であるとの認識にある。
また、NTTグループ中期経営戦略「新たなステージをめざして 2.0」の具現化に向けて、NTTグループトータルとしての人財の確保・配置・育成を意識した政策検討が必要であることに加え、有期雇用者が契約を反復更新(通算5年超え)した労働者の申し込みにより、無期労働契約へ転換できる『改正労働契約法』や『改正労働者派遣法』をはじめとした労働関係法への対応が求められている。
したがって、これらの状況を踏まえ、NTTグループすべての労働者を対象とする「雇用政策」を確立し、各事業会社等に対峙する企業本部の人員政策につなげることが有益であるとの判断に立ったものである。
ニーズの多様化を政策に反映
その上で、これらの経緯を踏まえた、NTT労働組合としての具体的対処について述べたい。
私たちは、NTT労組の雇用政策の柱を、「雇用の原則は、期間の定めない直接雇用」を基本とした。したがって、各組織は、NTTグループにおける雇用制度の実態を踏まえ、雇用の安定・確保に取り組むとともに、労働関係法の改正等への対応は、この政策の考え方をもって進めることとし、有期雇用者については、正社員(無期雇用)への登用を第一義に、雇用の安定・確保に向け、無期雇用への転換にも取り組むとしたものである。
また、「NTT労組の雇用政策」の確立に基づく労使対応の結果、持株会社はNTTグループを取り巻く事業・経営環境の変化に対応した多様な人材を安定的に確保していくため、働く上でのニーズや価値観の多様性を踏まえ、柔軟な働き方と十分な能力発揮が可能となる無期雇用における職務・勤務地を限定した社員や、高度な専門分野に特化した社員を拡大するとともに、一時的・プロジェクト的な人材確保は、有期雇用や派遣等の形態を活用する「NTTグループトータルでの人材確保に向けた雇用の考え方」が示され労使間整理を図ってきた。
前述した「NTT労組の雇用政策」や、中央労使間の論議経過を踏まえ、具体的対応は、現在、各組織で論議が展開されている。中央本部は、働く者の多様なニーズ等を勘案した雇用スキームを示すことが現場段階の論議を進化させ、ひいては雇用の安心・安定と労働条件の維持・向上につながるものと認識する。また、有期雇用や派遣労働者等の雇用管理の適正化に向け、引き続き労働組合としてのチェック機能を果たしていく考えである。