「無期転換ルール」にどう対応する?調査で見る非正規労働者の声
調査の概要
情報労連は2016年6~8月下旬にかけて、「2016パート・派遣等労働者生活アンケート」を実施した(連合調査の一部として実施)。
調査対象は、全国単組に対置する企業で働く非正規労働者(パート・派遣・有期契約労働者等、※組合員か否かは問わない)で、調査票を1245枚配布し、このうち989枚を回収した。回収率は79.4%。性別構成は男性3割、女性7割だった。
雇用期間と契約更新回数
雇用形態の比率を見ると、「契約社員・準社員・期間社員など」が72.7%で最も多く、「派遣社員・登録型」(11.1%)、「派遣社員・常用型」(8.1%)が続き、「パート・短時間社員・アルバイト」は5.9%だった。
雇用契約期間を聞いたところ、「1年」が31.7%で最も多く、次いで「3~5カ月」(24.1%)、「6~11カ月」(22.4%)、「1年を超える期間」(18.9%)と続いた。2012年調査と比較すると、「1年」の割合が65.3%から今回(31.7%)と大幅に減少していた。一方、「3~5カ月」が9.9%から今回(24.1%)と増加しており、契約期間が短期化していた。
契約更新回数は6.0回で2012年調査の7.1回より減少していた。
労働時間
週の所定内労働時間の平均は37時間33分で、「35時間以上」の割合が92.5%だった。「残業がある」と答えた人の割合は63.7%で、3人に2人の割合で残業があった。1週間の残業時間の平均値は3時間4分だった。
賃金と世帯収入
時給の平均値は1336円で、2014年調査(1251円)から85円上昇した。賃金は改善傾向にあるものの、勤続年数の長い層ほど賃金が「上がった」と答えた人の割合が少なくなっており(勤続2年以上54.1%、勤続10年以上28.9%)、長期勤続者への影響が小さい傾向にあった。
本人の年間収入の平均値は288万円で、世帯総収入は498万円だった。雇用形態別で見ると契約社員などの本人年間賃金の平均値は298万円で、パートなどは174万円、派遣社員登録型は273万円、派遣社員常用型は311万円だった。
世帯収入に占める本人の賃金収入は、「自分の賃金収入がすべて」(38.1%)、「世帯収入の大部分を占める」(10.2%)、「世帯収入の半分くらいを占める」(16.6%)となっており、これらを合わせた「主稼得者」の割合が3分の2を占める結果となった。
働き方の希望
現在の働き方を選んだ理由を聞いたところ、「正社員の仕事に就けなかった」が最も多く48.4%だった。
正社員への転換も含め、現在の働き方(雇用形態)を変えたいかをたずねたところ、「正社員に変わりたい」が54.5%と最も多く、半数以上を占めた。「無期雇用の非正社員に変わりたい」は11.6%で1割に過ぎなかった。
雇用形態別で見ると契約社員などは「正社員に変わりたい」が61.3%、「今のままでよい」(12.9%)となり、パートなどで見ると「正社員に変わりたい」は31.0%、「今のままでよい」は34.5%だった。
職場での不満
職場生活に対する不満・不安を聞いたところ、「最大の不満・不安」として回答が多かったのが「解雇や雇い止めがある」(18.4%)、「賃金が低い」(18.4%)だった。複数選択で選んでもらったところ、最も回答数が多かったのが「一時金・賞与がない・低い」だった。
諸制度の有無
賃金・手当制度の有無についてたずねた。通勤手当が「あり・内容や基準は正社員と同じ」は50.8%で、「あり・内容や基準は正社員と異なる」(16.7%)、「あり・正社員との違いは不明」(17.7%)で、合わせると85.2%だった。
一時金・賞与の支給が「あり・内容や基準は正社員と同じ」人の割合は4.8%と少なく、「あり・内容や基準は正社員と異なる」が58.6%と6割弱に上った。
「毎年賃金が上がる制度」に関しては、「あり・内容や基準は正社員と同じ」が3.7%、「あり・内容や基準は正社員と異なる」33.9%となり、一時金・賞与よりも少ない割合だった。
「正社員になれる制度」が「ある」の割合は64.3%と2014年調査に比べて15ポイント増加していた。しかし、「制度を利用しにくい」「やや利用しにくい」と答えた人の割合が4割弱に上っていることや、「制度がない・わからない」と答えた人も39.0%に上っていることから、制度の周知・浸透に課題があると言える結果となった。
情報労連の対応
情報労連は今年1月16日に開催した中央執行委員会で、政府の「同一労働同一賃金ガイドライン(案)」に対する考え方を確認。この中で、「政府が示した一定の考え方については今後の主体的な労使間論議に寄与するものと認識する」として、「本ガイドライン(案)を参照し職場における雇用形態間の待遇差の点検等を行う」とした。
情報労連は、本調査結果を踏まえ、情報通信業で働く有期契約等労働者の処遇改善や働き方改革に向けて、今後の取り組みにつなげていく。