特集2017.08-09

「無期転換ルール」にどう対応する?4年連続ベア獲得など処遇改善
正社員登用の拡大などをめざす

2017/08/30
KDDI労組では、有期契約労働者の組織化を進めるとともに、4年連続のベア獲得など処遇改善を進めてきた。正社員登用や無期契約での採用拡大に取り組んでいく。
柴原 准二 KDDI労働組合事務局長

将来に対する不安明らかに

KDDIで働く有期契約社員は、一般事務全般を担う事務契約社員(約500人)、主に家電量販店で携帯電話の販売等に従事するセールスアドバイザー※(約2000人)、お客様の通信料金等の相談対応を行う料金アドバイザー(約150人)という三つの職種があり、KDDI組合員全体の約25%を占めている。

従前、これらの業務は派遣社員や業務委託で担っていたが、従事者のモチベーション向上や会社の事業施策等をお客様と接する最前線まで伝えるためには、当該業務の従事者を直接雇用にすべきとの会社判断があり、2012年から順次、直接雇用の有期契約社員へと切り替えを行ってきた。

2012年1月に会社(KDDI)とユニオン・ショップ協定を締結後、新たに直接雇用となった当該社員を組織化し、職場でのコミュニケーションの促進を図るとともに、労働条件等の処遇改善に向けた対話を強化していく中で、契約社員である組合員からは、雇用に対する将来への不安や、経験を重ねても賃金や労働条件に反映されないといった制度・処遇に対しての不満が明らかとなった。

4年連続ベアなど処遇改善を実現

これらの組合員の不安や不満などを解消し、労働条件の底上げ・格差是正を継続的に図っていくために、2014春闘以降、有期契約社員の処遇改善に重きを置いた取り組みを進めてきた。

2017春闘では、4年連続となる有期契約社員のベアを獲得、とりわけ、一般事務全般を担う事務契約社員は、過去3年のベアを合わせると、この4年で約2万5000円の積み上げが図れた。

また、賞与(一時金)については、昨年12月に政府から示された「同一労働同一賃金ガイドライン案」の考え方を踏まえ、総合職等の正社員や有期契約社員の職種を問わず、すべての職種において同一の支給月数を要求した。これは、「同一労働同一賃金ガイドライン案」が、正規雇用と非正規雇用という雇用形態にかかわらない「均等・均衡待遇の確保」をめざすものであり、職種の役割の違いによる処遇差は、すでに月例賃金によって設定されていることから、賞与において会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合は、同一にするべきとの考えに賛同し、実践したものである。

2017春闘交渉では、残念ながら、労組として満足のいく結果には至らなかったものの、有期契約社員の賞与(一時金)について、前年を上回る妥結額を獲得できたことは一定の成果であったと考えている。また、職種ごとに生じているさまざまな労働条件の差について労使間で協議を行い、一部の項目について正社員との同一化を図った。今後の「同一労働同一賃金ガイドライン案」の法制化等も見据え、不合理な差分の解消に向けて労使間での具体的な協議を進めていくこととしている。

正社員登用のさらなる拡大を

急速な人口減少や少子高齢化による携帯電話市場の変化、廉価なサービスを提供するさまざまな事業者の参入等によって、通信業界を取り巻く環境はこれまで以上に激変している。その一方で、同業種の人材確保は業界全体の課題でもあり、優秀な人材確保は経営上の重要な戦略の一つにもなっている。

本年4月から有期雇用である料金アドバイザーを対象とした正社員登用制度を導入し、KDDIにおけるすべての有期契約社員に対する正社員登用への道筋を開くことはできたが、これまでの正社員登用の実績等を踏まえると、必ずしも門戸が広いわけではない。労組として、正社員登用のさらなる拡大を図っていくとともに、有期雇用でなく、無期雇用での採用拡大も求めていくこととしている。

今後も安定した雇用の確保、労働条件や処遇の継続的な改善に向けて、常日頃から組合員の声を集約し、春闘時期などに限定することなく、労使間で意思疎通を図り、認識を共有していくことで課題解決に取り組んでいく。

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