特集2017.10

労使コミュニケーション再考労使コミュニケーションの実態は?
「団体交渉」で本音が言えないことも

2017/10/05
加盟組合の組合役員に集まってもらい、労使コミュニケーションの実態について語ってもらった。会社との協議・交渉での課題は何だろうか。

─簡単な自己紹介を。

A組合支部で書記長を務めていました。人事担当者とは月1回の「36交渉」があって、それ以外にも何かあればその都度、人事担当者と折衝していました。

B組合員数300人ほどの単組で委員長をしています。人事総務の担当者とは、会社の規定変更などがあれば、その都度対応しています。年に数回、経営層を交えた労使協議も行っています。

C単組の書記長をしています。組合員数は50人程度です。今年4月から2カ月に1回、会社と定期協議するようになりました。小さい会社なので、同じ建物にいる社長に何かあれば直接、話を持ち込んでいます。

─労使コミュニケーションの実態は?

B団体交渉の場では正直、本音は言えないですね。事前折衝では、人事担当者には本音を言えるのですが、副社長がいる場だと難しいですね。以前は、人事担当者との折衝の内容が副社長に伝わっていないという課題があったので、人事担当者には副社長に事前折衝の内容を意識的に伝えてもらうようにしたのですが、交渉の場となると、なかなか……。

団体交渉では、目の前に各部の上司が座っているので、発言の仕方に気を付けないと、痛い目にあうかも、と気になってしまいます。サラリーマンなので……。

A人事担当者とは日常的にコミュニケーションを取っていますが、経営層と直接話をする機会はほとんどありませんでした。団体交渉は、「確認の場」といった感じで、そこで決まる内容は、その前段の事前折衝ですべて確認していました。

人事担当者は、経営層と労働組合の間の「伝達役」といった感じで、双方の言い分の仲介役になっていました。

C会社の規模が小さいので、何かあれば社長にすぐ相談していました。2カ月に1回の定期協議では賃金からレクリエーションの話まで、いろいろしています。ただ、議題が毎回、同じようなものになってしまうのが課題ですね。会社側は「検討している」「努力している」という回答が多くて、なかなか前に進みません。

年末や春闘交渉時には、労働時間の棚卸しをして、改善策などを会社と協議しています。

─課題はありますか?

B人事担当者も現場出身なので、職場の実態はわかっていると思います。残業削減のワーキンググループをつくったり、安全対策協議会で検討したりしています。ただ、繁忙期と通常期の差が激しくて対応が難しいのが実態です。

C企業は繁忙期に合わせて人を雇いませんからね。残業があるのが通常で、繁忙期になると残業が増える、という。労働組合の役割は36協定のチェックですね。

A年3回、職場オルグを展開していますが、忙しくて参加できない組合員が半分くらいいます。残業時間はパソコンのログで確認していますが、一度、管理職が残業時間を減らすようにログの改ざんを指示したことがあって……。それは組合員から報告があって、すぐに会社に掛け合って対応し、改善させました。

─日頃の事前折衝の積み上げが大切ですね。現場の声をどのように伝えていますか?

Bアンケートに答えてくれる組合員は多いです。ただ、それをどう使うかで悩むこともあります。交渉はケンカではなく、対話だと思っているので、ストレートに伝えるのが難しいこともあります。

ただ、以前に副委員長が強い口調で会社に迫ったことが一度あって、それで労働条件を改善するために会社が動いたことがありました。本音をぶつけると、いい効果がある場合もあるんだなって。

Cうちの場合は、労働組合側から査定にもう少し差をつけてほしいと提案したことがありました。人によって仕事のペースが全然違うから、差をつけてほしいという声もあったんですね。

B会社にどうモノが言えるか立場によっても変わりますよね。組合員の立場だと発言しやすいですが、役職に就くとそれだけ責任も生じるので。委員長の立場で発言すると、会社から「それは組合員の総意か」と聞かれると、発言を躊躇してしまうこともあります。

C言いたいことをはっきり言ってしまう人が委員長だと、それを抑える人がいなくなってしまいますよね。私は、はっきり言ってしまうので、書記長をやっています。

A事前折衝が大切なので、本番の交渉は双方の報告で終わりです。人事担当者との日常的なコミュニケーションの中で、現場の実態を伝えています。

─組合員へのフィードバックはどうしていますか?

B協議・交渉の議事は、組合員にメールで配信しています。

C協議があった後は、組合員を集めて報告しています。この間は、春闘でも結果を出しているので、そんなにたくさん意見が出るわけではありません。ボーナスより基本給を上げた方が、退職金などに跳ね返って結果的に得になるんですけどね。その辺がわかっていない組合員もいます。

─情報労連に対する要望は?

A春闘では、グループ会社への発注額などを見越して交渉してもらえるとうれしいですね。

労使コミュニケーションという点では、今回のように他社の皆さんがどのように交渉しているのかがわかると刺激になります。特に、日々、人事担当者と接している執行部の皆さんと意見交換したいですね。

B組合員からの期待もありますし、会社との交渉ではプレッシャーを感じます。責任が大きい仕事です。会社業務が8時に終わった後に議案書を書くこともありますし、組合役員のワーク・ライフ・バランスが課題です。実際、組合の三役をやりたいという人がいなくて。組合役員のやりがいを見いだせる環境づくりに協力してもらえるとうれしいです。

─企業内労働組合の難しさを感じますか?

B会社の中での立ち位置があるので、会社によく見られたいという人は組合活動に携わらないという傾向があります。

C三十数年前は、安い賃金で長時間残業していたから、組合で交渉して賃金が上がっていくという労働組合活動の実感がありました。けれど、今の人はそういう土台があった上で入社するので、労働組合のありがたみを感じないんですね。非組合員でも一時金の月数は、同じものが反映されますし。若い人たちに組合活動をバトンタッチするのに、とても難しさを感じています。

A企業別組合のいいところは、組合員の顔が見える環境で活動できることだと思います。逆に嫌なことも聞こえてきますが……。でも、そういった声をすぐに改善につなげられるところが役員のやりがいになっていると思います。

─本日はありがとうございました。

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