渋谷龍一のドラゴンノート2017.12

【第2編】働く~もう「非正規社会」だって わかっていますか~非正規就労はなぜ社会問題に

2017/12/14

非正規労働者という言葉にはネガティブな語感が残り、問題あり、ということで非正規「問題」という言い方が使われています。

非正規といっても、正社員ではない人たちのことで、アルバイトとかパートタイマーや、あるいは定年退職した後の嘱託社員とか、ある仕事だけを専属でやる契約社員です。1985年の「労働者派遣法」の制定以降は派遣労働者も出現しました。派遣が加わったあたりから、大きく増え始めましたが、まだ多くの正社員が働く傍らで少数の非正規がいる、という構図だったのです。

ところが、正社員より非正規の賃金が安く済むから、企業が非正規を増やそうと躍起になります。正社員にしかできない仕事と非正規ができる仕事に分けて、正社員を減らしたのです。

企業は人件費が節約できるので苦しさから逃れられるのですが、働く方は、たまったものではありません。正社員の仕事が少なくなって奪い合いになりますし、非正規になると賃金が非常に低いので困ります。正社員から非正規になるのは簡単ですが、非正規から正社員になるのは困難を極めます。非正規の賃金で正社員の生活はできないので、助けてくれる人がいなければ窮地に陥ります。例えば、フリーターやシングルマザーの多くはきゅうきゅうと生活しています。

非正規で働いている人で困っていないのは、親や夫や子どもに養育されている人です。学生、主婦、現役引退者などです。学生なら、卒業後も親を頼るか、正社員になるまで食いつなぐか、結婚して扶養されるかなどになります。苦境が予見されているから、学生たちは一心不乱に正社員になろうとしますし、家族も「非正規なんかになったらだめ」と言い出すのです。

働く人々の半数が非正規になりつつあります。日本はとっくに非正規社会なのに、無理やり覆そうとして被害を大きくしていませんか。非正規にならないようにではなく、非正規で堂々と生活できる社会をつくる勇気が問われています。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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