労働組合って何するところ?何をしている?[座談会] 労働組合役員をやってみてどうですか?
組合役員になろうと思ったきっかけ
井部a/c unionの井部と申します。編集プロダクションの会社に勤めています。組合員数は19人です。昨年3月から組合の委員長になりました。
上城日本コムシス労組の上城です。執行委員になって1年ちょっとです。組合役員になろうと思ったきっかけは、職場の先輩に声を掛けられたことです。ちょうどそのとき違う仕事にチャレンジしたいと思っていたところだったので、即答でOKしました。
野井NTT労組西日本本部の野井です。入社6年目で、組合の執行委員になって3年目です。組合役員になろうと思ったきっかけは、分会の役員の方に声を掛けてもらったことです。新人の頃は仕事のミスも結構あって、そんなとき職場のグループリーダーだった分会の役員の人にお世話になりました。その人が「ゴミ拾いに行こう」とか「平和活動に参加してみないか」と声を掛けてくれて。お世話になっている人だし、全部行きますと返事をしていたら、いつの間にか今に至る、という感じです(笑)。
苦労すること、仕事とのバランスは?
─組合役員をやって苦労することは何ですか?
野井対話会などに行ったときに、過去の経緯を知っていないと先輩社員の質問に答えられないことですね。10年とか、20年前の制度変更のことを聞かれるので、勉強しなくちゃというプレッシャーはあります。
上城普段の仕事をしながら組合活動をしているので、両方を天秤に掛けないといけない場面もあります。労働組合の仕事は、組合員全体のための仕事という意識があるので、なるべく優先しようとしていますが、少し苦労する場面もありますね。
井部私たちの労使では、制度改革をかれこれ8年くらいやっています。仕事が忙しくて、なかなか進まないというのが悩みです。
─普段の業務と組合活動と、生活のバランスはどうですか?
上城休日に組合のイベントがあると家族から「何の用事?」と聞かれることはありますが、今のところ年に1回くらいなので問題はありません。
井部昨年1年間、連合東京中南ブロック地協で、女性委員会のメンバーになりました。その集まりはアフター5にあることが多かったのですが、私の業界はもともと長時間労働になる傾向があるので、組合活動をしても家に帰る時間は仕事をしているときと同じでした。むしろ、「今日は連合の集まりがあるから帰ります」といった感じで、仕事の時間は短くなりました。頭の切り替えができたり、他の組合とのつながりができたり、勉強になったりと、いい経験になりました。
野井休日に組合活動が入ることもありますが、会社のスポーツチームの観戦とかは単純に楽しいですし、組合活動でさまざまな経験ができるのは、お得感がありますね。
組合活動のいいところ、やりがい
─組合活動の長所はどんなところですか?
野井いろいろな人に出会えたり、いろいろな場所に行けたり、勉強できたりすることですね。会社以外のことを知るいい機会になります。政治とか平和とか、社会的なことも組合活動を通じて関心を持つようになりました。私が政治の話をするようになって親も驚いていました。それと、会社や共済の制度に詳しくなれます。
上城率直に思い浮かぶのは、人とのつながりが広がることです。会社の仕事だけだと同じ部署の人しか出会わないところを、組合活動に携わると各部署のことがわかって「お得」かなと。
井部私たちの組合は歴史が浅く、交渉などの経験も少ないため、他労組との交流から学ぶことがたくさんあります。困ったときに相談できるのも心強いです。私は、自分の仕事でお客さまである労働組合の機関紙づくりも手伝っています。その中で「組合役員になると人とのつながりが広がる」という話はよく出てくるのですが、実感があまりありませんでした。でも、自分が組合活動をやってみると、うまく言えないのですが、つながりの大切さが身に染みました。体感することでわかるんですね。
─組合役員としてのやりがいはどんなことですか?やっていてよかったと感じるのはどんなときですか?
井部前執行部のときに、イベント後の懇親会で「執行部の皆さん、ありがとう」と書かれたケーキをサプライズで用意してもらったことがあって、それはうれしかったですね。
上城組合の活動を組合員に知ってもらいたいという気持ちがあるので、例えばレク活動でも身近な人に片っ端から声を掛けて参加を促しています。なかなか参加してくれませんが、自分が執行部にいる間に少しでも広げていきたいです。
野井交渉担当をやらせてもらっているので、職場とか組合員の声を交渉に反映できることが一番のやりがいです。交渉の最中に、「あの人、こんなことで困っていたな」とか、「こういう要望があったな」とか思い出して、そういう声を会社に伝えるところにやりがいを感じます。
労働組合に対する印象の変化
─組合活動に携わって労働組合の印象が変わりましたか?
野井意外と柔軟なところだと思いました。労働組合って何するところか最初は全然わからなくて、「おじさんが集まって何するの?」みたいなイメージがあったのですが、意見を伝えてみると意外と柔軟に受け入れてもらえます。要望のすべてがすぐに実現するわけではありませんが、そういう認識は変わりました。
上城私も一組合員のときは労働組合が何をしているのか全然わかりませんでした。「困っていることがありますか」と聞かれても、組合に伝えたところで何も変わらないと思っていました。でも、自分が組合役員になってみると、そうやって意見を聞くということは、一人ひとりの意見をくみ上げようとしているんだなと思いました。私も、声を上げてくれる人の意見を大切にしたいと思います。
井部私は、入社1年目から賃金のことで組合に助けてもらって、そのときから組合の大切さを実感していました。委員長になってから気付いたのは、組合員の時に執行部の活動にもっと協力できていればよかったなと。
─最後に、社会的に労働組合を広げていくために何が必要だと思いますか?
井部何の不満もなく生き生きと働ける会社であれば、労働組合はいらないかもしれませんが、そんな完璧な会社はないですよね。この先、何があるかわからない、そういうときに頼れる存在があるといいと思います。
野井新入社員向けの説明会でレクチャーしたときに伝えたのは、「なくても困らない組織だったら、労働組合はもうなくなっている」ということでした。私たちの組合の組織率が高いのも、必要な仕事をしてきたからだと思います。それを踏まえて、社会人だから自分で判断してほしいと伝えました。組合がなければ、会社が勝手に物事を決めてしまうので、それに歯止めをかけるのが私たちの役割だと考えています。
上城会社に一人で立ち向かっても意見を聞いてもらえません。何かを伝えたいときは組合の仲間と一緒に一致団結する必要があると思います。
─本日は貴重なお話をありがとうございました。私たちも組合の意義を伝えていけるよう努力していきます。