労働組合って何するところ?何をしている?組合員の悩みに向き合う際のポイントは?
Q どうしたら組合員から悩みを寄せてもらえますか?
労働組合には職場組織があり、現場単位に担当者が配置され、職場の日々の変化を体感しています。この仕組みこそが、労働組合の発信源であり情報源であり力の源泉です。ここが肝です。
今の時代、情報は何でも手に入るし、スマホで人とつながっている気分だし、株価は高いし、転職も普通だ、だから労働者もスマートに生きられる、というのは幻想です。労働相談の仕事をしていると、労働者を道具と同じ「モノ」と見なし簡単に使い捨てるという、200年前から変わらぬひどい現実をつくづく感じます。ハラスメントは「自分も使い捨てにされるかも」という恐怖の裏返し。弱い者がより弱い者をいじめるという悲劇は、このひどい現実がある限りあなたの職場でも起こり得ます。
Q 悩みを聴くときの態度はどうしたら良いですか?
「傾聴・受容・共感」です。相談事は労働組合からすれば日常でしょうが、相談者は労働組合に相談する時点で、すでに必死です。だから相談は一期一会、真剣勝負です。でも急いではいけません。組合役員は、実は相談者のことを「何も知らない」のです。相談に当たって、組合役員は「何も知らない」ことを自覚し、話を丁寧に聴く、内容をそのまま受け入れる、相談者の気持ちになることです。コメントやアドバイスが先走っては心の底を見透かされます。ただし、このスキルの会得には相当の訓練が必要です。
Q 悩みをどのように解決に結び付けたらよいですか?
組合員の悩みはさまざまですが、組合役員とはいえ全能ではありません。そこで組合役員は当事者でありコーディネーターである必要があります。組合役員は、相談内容を、(1)労働組合内で解決できるか(2)会社との交渉が必要か(3)外部の専門家の力が必要か(4)労働組合が関与する問題か否か─などについて交通整理し然るべきところにつなぐ「知識」が必要です。
知識の第一は、主な労働協約や就業規則、ハラスメントに関する社内ルールなどです。労働法に関しては、都道府県労働局などが発信する、ポケット労働法などが役立ちます。
第二はつなぐ先です。上部組織、福祉団体、労金、顧問弁護士、産業医、委託先の精神科医、行政の窓口などがあげられますが、大切なことはつなぐ先の担当者とできるだけ顔見知りになることです。
Q 悩みの背景にある課題を分析する力は何ですか?
「会社の恥は労働組合の恥」「不正を許さない」という信念です。悩みの陰に不正あり、不正の陰になれ合いあり。社内で労働法違反などが発生すれば「労働組合は何をしていたんだ」と必ず指弾されます。その時、労働組合が不正をうやむやにするなら、一発で組合員の信頼を失います。不正を許さないという信念で見つめれば必ず課題が見えます。そして、不正を許さない仕組みを会社との間でつくることです。それが、結局は会社を守ることになります、事例を挙げるまでもありません。労災も同じ、労災は会社の恥だが労働組合の恥です。
Q 労働組合が信頼されるためには何が必要ですか?
「愛」です。憲法で保障された労働組合の団体交渉権はだてではありません。労働組合に対する国民の期待に基づく力です。相談内容に合理的理由がある場合に、労働組合がその力を行使せず、「会社の責任でうまくやっておけ」とか「慣行だから仕方がない」では済まされません。
労働条件の不条理な格差、労働法違反、ハラスメント、不適切な取引慣行など、「不正を許さない」責務が労働組合にはあります。なぜなら労働組合の理念は「すべての労働者の人間的尊厳を守ること」だからです。それは「愛」と表現するほかありません。