渋谷龍一のドラゴンノート2018.04

【第2編】働く~もう「非正規社会」だって わかっていますか~「非正規」は自然消滅

2018/04/16

「日本から非正規という言葉を一掃します」。安倍晋三首相が威勢よく宣言したのですが、何も変わっていないようです。しかも、声高に連呼しなくても、その呼び方は勝手に消えていきます。

数年後には非正規が正社員を上回り、少数派になっていく正社員を正社員と呼んでよいものか疑念がわきます。すでにいくつかの職場では正社員というのが不思議な呼び方になっているのです。

チェーン展開するレストランでは、1人の正社員が何店舗も管理していて、数値上は正社員は1店舗1人未満です。例えば、50人の非正規と1人に満たない正社員のファミレスでは通常の労働者は50人の方ですから、非正規と正規を入れ替えて呼ばないと間違いでしょう。

また増加中の限定正社員は、目いっぱい働くのに何の制約もないという非現実的な正社員に、若干の現実性を持たせた「制約社員」です。働く側からみた制約社員を企業は契約社員と呼ぶのですから、限定正社員を、その数を組み入れたら非正規比率がもっと高まります。

非正規の増加傾向は止まりませんから、将来は、正社員以外の労働者は、あなたはこういう契約、別のあなたはこういう契約という感じで、すべて契約社員になるのは目に見えています。

みんな契約社員になれば非正規という言葉は、首相が意気込まなくても自然に消滅していきます。しかし、呼び方の問題ではなく、根底に何があるのかを考えるべきです。

正社員への転換や限定正社員の導入で増え続ける非正規を減らすことに努力を払う体裁で、いつまで持つのでしょうか。何が何でも正社員を堅守することに疑いを持たないままでよいのでしょうか。多数派の非正規の立場からみれば、非正規で十分に暮らしてゆける方策を考える過程で、女性や母親の立場を見定めることが大切です。どれほど正社員を守らないのかに応じて、どんな契約であっても通用するはずの「同一労働同一賃金」の行方が決まります。正社員か同一賃金か。非正規社会の声なき声の本音です。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
『女性活躍「不可能」社会ニッポン原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)で2016年貧困ジャーナリズム賞を受賞。
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