【第2編】働く〜もう「非正規社会」だって わかっていますか〜非正規社会の「縮図」が労働組合にも
非正規問題を解決するために、どうすればよいのか。最も多い回答は、非正規を守り、救うための労働法の整備となりますが、現実には労働法を守らせる労働組合が必要です。衰退していても、軽視されることが多くても、労組に期待するしかありません。しかし最近、本当に期待できるのか、という疑念を体感することになりました。
ある地方都市で開催された住民集会のシンポジウムにパネリストとして登壇しました。メンバーの中に、地元の非正規労組の女性非専従役員Aさん、ナショナルセンター(労組の全国組織)の女性専従役員Bさんがいました。
Aさんの話は、就業が不安定であることから始まり、低い労働条件や社会保険への未加入など、非正規に積み上げられた課題、というより「働き方改革」とか女性活躍の美名とはいかに無縁であるかの惨状の報告でした。続くBさんは、企業で働く正社員女性が活躍する可能性を語り、あきらめず好機を生かすつもりで能力を発揮すべきという意見でした。どちらの話も体験談に基づくもので共感できるのですが、全然かみ合っていません。
非正規と正規だからかみ合わないというだけではない、とすぐ気付きました。「日本のキホン」を思い出してください。「日本のキホン」を持ち出し、男女関係から正規非正規を考えて話をつながないから、AさんとBさんの話はかみ合わないのです。注目すべきは職場ではなく実は家庭で、男女関係が下敷きになっているのに、目先の職場のことで精いっぱい。政府から「働き方改革」と問われても無理に付き合わず、「暮らし方改革」のことですね、と裏側にある大切な自分の生活の話をしないから、違和感が満々になるのです。
お二人に「労組こそ男社会なのでは」と水を向けると、話は見事にかみ合ったのでした。女性のユニオンが活躍する原動力にも思い至りました。「日本のキホン」に裏打ちされた非正規社会の縮図が労組に持ち込まれているうちは、期待を半減せざるを得ないのです。
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。