特集2018.07

IT業界の実態をもっと知ろう「デジタル化」と「価値創造」で進む「協業」スタイル
プロジェクトの一体感が成功のカギに

2018/07/13
ITを企業の将来を左右するような価値創造に活用しようとする企業が増えている。ユーザー企業の動向とベンダー企業への期待を聞いた。
西村 光司 一般社団法人
日本情報システム・ユーザー協会
(JUAS)常務理事 事務局長

「価値創造」に投資の動き

最近の傾向としてユーザー企業では、AIやIoTを活用した価値創造の取り組みが進んでいます。ITの活用方法も、業務の効率化やプロセスの見直しといった従来の使い方だけではなく、企業の将来を左右するような価値創造に活用しようとする企業が増えています。

また、ユーザー企業でのIT部門と事業部門の連携も従来以上に深まってきています。IT投資も、従来の支出をなるべく抑制し、「デジタル化」に投資を振り向ける企業も多くなってきました。ユーザー企業がベンダー企業からIT人材を中途で採用し、価値創造の分野に振り分けるような動きも見られます。

JUASでユーザー企業に「デジタル化」に関するアンケートを取りました。従来ほどベンダー企業とだけ組む企業が多くなく、バリエーションが増えています。ベンダー企業にとっては、大型開発を受注して、保守・運用で利益を得ていくという従来型のビジネスモデルを見直す必要も出てきているのかもしれません。

とはいえ、新しい技術の活用は、現状の事業に関連のある場合がほとんどです。そのため現行のシステムとの連携が課題となっています。現在動いている基幹システムを保守・メンテナンスし、安定稼働させるのにも相当の労力がかかります。そこに「デジタル化」の取り組みが上乗せされるため、忙しい状況が続いています。

「協業」スタイルの広がり

新しい価値を創造するため、従来のような受託開発ではなく、ユーザー企業とベンダー企業が「協業」するケースも活発化しています。ユーザー企業が大型プロジェクトを発注し、開発から運用・保守までベンダー企業にお願いするような方法ではなく、開発の初期段階からベンダー企業がユーザー企業に入り込んで「協業」するようなケースです。

ただその一方で、従来の大型開発の需要も一定程度あるので、「協業」のスタイルが一気に進むかというとそうとも言えません。

「協業」のスタイルでは、完成したシステムを納品してもらう請負の形式より、コミュニケーションを取りながら開発を進める準委任契約の方が向いていると言えそうです。その場合、成果物への責任をユーザー企業とベンダー企業でどのように分担するかという整理が必要になるでしょう。

プロジェクト全体の一体感を

ユーザー企業もプロジェクト全体を見渡したマネジメントが一層求められるようになります。元請け・一次請け企業に発注したら終わりではなく、プロジェクト全体の一体感を出すマネジメントが必要でしょう。プロジェクトには就業規則の異なる企業の従業員が一緒になって働きます。例えば、発注企業が水曜日を「ノー残業デー」に設定していれば、プロジェクトに参加するメンバー全員も同じように「ノー残業デー」にする。各社のマネジャー同士が相談してそうすることも可能です。プロジェクトを工数だけで管理するのではなく、人を見て、パフォーマンスが発揮できるように運営していくべきでしょう。その方がユーザー企業にとっても、品質の高いシステムがより早くリリースできます。

そのためにはユーザー企業の担当者のスキルアップも大切です。新しい技術への理解を深めたり、プロジェクトマネジメントの知見を高めたり。プロジェクトを成功させるためにユーザー企業にもさまざまな努力や工夫が求められます。

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