特集2018.11

通信産業のいま台風被害からの災害復旧
通信を支える働く人たち

2018/11/13
地震や台風、豪雨などの災害が続く日本。災害復旧の現場では、通信を支える働く人たちの活躍がある。台風21号被害の復旧作業に当たったミライト・テクノロジーズ大阪技術センタで話を聞いた。

台風21号の被害

9月4日、非常に強い勢力の台風21号が徳島県南部に上陸した。その後、同日14時ごろに兵庫県神戸市に再び上陸、近畿地方を通過した。台風が通過した地域は、猛烈な風と雨に襲われた。関西国際空港では最大風速46.5メートル、 最大瞬間風速58.1メートルを記録。四国地方や近畿地方では猛烈な風を観測し、観測史上第1位のところもあった。

消防庁によると台風21号の被害は、死者14人、重傷者46人、家屋被害は全壊26棟、半壊189棟、一部損壊5万83棟となった(10月2日現在、第8報)。関西国際空港と対岸を結ぶ連絡橋にタンカーが衝突し、空港が一時孤立する事態も起きた。

通信設備にも被害が及んだ。NTT西日本によると台風21号による関西エリアの故障の件数受け付けは9月29日現在で3万8697件に上り、電柱・ケーブルの被災数は、電柱の倒壊・折損・傾斜で789件、通信ケーブルの切断・垂れ下がり等で3208件に上った(9月28日現在)。

通信設備の復旧はすぐさま始まった。今回、堺市や泉南市などを含む南大阪エリアの保守を担当するミライト・テクノロジーズ大阪技術センタで復旧作業の舞台裏を聞いた。

倒れた電柱の撤去

「猛烈な台風だっただけにどれほどの被害があるのか把握することも困難でした」。こう振り返るのは、同技術センタの中部昌幸センタ長だ。同センタでは台風が通過した当日の4日から、翌日以降の復旧体制について検討を始めた。ただ、その時点で被害の全容は見えていなかったという。

とはいえ、警察などの行政機関などからは、4日時点から電柱が倒れて道路をふさいでいるなどの連絡が入っていた。24時間体制で待機している保守班が4日夜から被害状況の確認を始めた。明けて5日になると、NTTから故障対応情報が次々と舞い込み、同センタは、故障受け付けの電話が鳴りっぱなしの状況になった。「どこから手を付けるべきか頭を悩ませながら、対応に奔走しました」と中部センタ長は当時の状況を振り返る。

5日の作業は、道路をふさいでいる電柱の撤去と復旧から始まった、と同センタの花光貴之さんは語る。緊急車両の通行などのために、交通経路の早急な確保が求められた。また、暴風で家屋に倒れ込んだ電柱の撤去作業も優先して行われた。

通常、電柱を交換する場合は、立った状態のままの電柱を引き上げて、新しい電柱と交換する。しかし、倒壊した電柱の交換には通常の作業よりも労力が伴う。「倒れた電柱のケーブルを取り外して、仮の電柱に掛け、その後、本番の電柱を立てます。普段よりも手間が掛かりますし、危険も伴います」と花光さんは解説する。

電柱の交換は5人体制で行う。通常であれば1日で交換できる本数は1日に2〜3本だが、今回の台風被害では、同センタの担当エリア内だけでおよそ100本の電柱を建て直した。

電柱やケーブルなどの通信設備は「アクセス系」と呼ばれる。アクセス系の故障被害件数は今回の台風被害で約1000件に上った。

日増しに増える復旧対応

通信建設の現場では、「アクセス系」のほかに「ユーザ系」と呼ばれる作業もある。個人や企業に配線されている通信設備のことだ。この故障情報も次々と寄せられた。「ユーザ系」の故障修理件数は5000件に上った。通常、1日で対応できる「ユーザ系」の件数は20〜30件ほどなので、今回の被害の件数の多さがわかる。

「ユーザ系」の故障申告は台風通過後、日増しに増えていった。台風通過直後は停電への対応が優先されていたが、それが解消され、固定電話やネットワークシステムの故障に気付く人が増え、問い合わせが増えたためだ。未解消の件数がピークに達したのは、台風が通過してから2〜3週間が経過した後だった。

「ユーザ系」の復旧作業も、現場の確認作業から始まる。今回の台風被害の場合、「ユーザ系」の復旧作業でも、現場を確認すると実際は「アクセス系」に故障が生じている場合も少なくなかったと、花光さんは解説する。暴風などによって、ケーブルが見えない場所で傷ついているケースなどがあるからだという。また、「アクセス系」を含め、交通量が少ない山間部などでは、時間がたってから通信設備の故障が申告されるケースも少なくない。そのため、台風通過から1カ月が経過した10月中旬になっても関連した申告が寄せられていると中部センタ長は話す。

こうした状況に対応するために、ミライト・テクノロジーズでは、他地域から応援の社員を派遣するなどして、総がかり体制で復旧作業に当たった。その結果、10月11日現在、「ユーザ系」の未解消の故障件数は230件程度にまで減少した。

関西国際空港の復旧作業

「アクセス系」「ユーザ系」の復旧工事に当たる中で、関西国際空港の復旧作業にも同時並行で対応した。台風21号では、空港と対岸を結ぶ連絡橋にタンカーが衝突し、橋桁がずれる被害が生じた。この衝突で空港と対岸を結ぶ通信ケーブルも切断された。この復旧作業に当たるため、ミライト・テクノロジーズ本社や同センタの社員らは、4日の夜には現場を確認。翌5日には復旧のルートを確定して、6日に一時復旧させた。

さらに、翌週の12日に壊れた橋桁が撤去されることになると、その前日に回線の切り替え作業を行った。この日は、日中の空港業務が一部復旧していたこともあって、回線の切り替え作業は深夜に行われた。作業は11日の23時から翌朝の8時を期限にして急ピッチで進められた。「作業時間内に終わるか不安はありましたが、可能な作業は前もって進めておくことで、12日の朝6時前には作業を終えることができました」と同センタの梅垣雅さんは振り返る。この日は、合計で300心の光ケーブル2条の切り替えが行われた。

通信を支える働く人たち

「多くの復旧作業に対応しなければならないため、作業工程などの調整が大変だった」と中部センタ長は振り返る。次々と寄せられる復旧対応で、同センタの社員や応援に駆け付けた社員、協力会社の社員たちは多忙な日々を過ごしてきた。そして、復旧作業は台風の通過後1カ月を過ぎても続いていた。また、災害復旧への対応が積み重なれば通常の工事にも影響が及ぶ。台風被害は長期的に影響を及ぼすと言える。

通信は、水道や電気、ガスなどと並ぶライフラインの一つだ。日常の安定した通信の提供はもちろんのこと、災害時の早急な復旧などが求められる。災害復旧の裏側には通信建設の現場で働く人たちのこうした活躍がある。(10月11日取材)

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