特集2018.11

通信産業のいま通信インフラを支える通信建設業界
人手不足が課題
労働条件改善で魅力向上へ

2018/11/13
通信インフラを支えているのが通信建設業界だ。業界では今、人手不足が大きな課題となっている。現場の実態や労働組合の取り組みについて聞いた。
反田 丈裕 通建連合議長
情報労連副中央執行委員長

─通信建設各社の事業動向をどう捉えていますか。

発注元の設備投資は減少傾向です。「アクセス系」の利益が減少傾向の一方で、通信建設各社の収益構造は「モバイル系」工事が中心となってきました。ただ、「モバイル系」工事も大規模工事は少なく、小規模工事の積み重ねを利益につなげています。今後は、通信キャリアの新規参入や、携帯電話料金の値下げなどによる影響が通信建設業界に及ぶと想定されます。

一方、IoTや5G、AIといった新技術関連の工事の発注が期待されています。すでに5Gの導入が前倒しで実施されることになっていますが、2020年以降の展開は現時点では不透明です。通信建設業界では、こうした新技術の導入をはじめとした事業領域への展開とともに、老朽化した社会インフラへの対応などが課題となっています。

全体的な傾向で言えば、通信設備工事の設備投資は減少傾向で、新技術関連の発注は見込まれるものの、工事の小規模化などを背景に利益の創出が難しい状態にあります。

─そうした中で、働き方に関する課題は?

利益が出づらい構造にあっても、人手不足や事務作業の複雑化などを背景に業務は忙しくなっています。

さらに、人材確保と人材育成が通信建設業界の最も大きな課題となっています。人手不足の影響で、目の前の仕事をこなすのが精いっぱいで、人への投資、教育に手が回らない現状があります。

─現場の実態はどうですか。

他の建設業界と同じように通信建設業界も慢性的な人手不足です。今のところは、今いる人材で何とか乗り切っていますが、人手不足が今後も続けば、工事への影響は計りしれません。このままでは近い将来、工事をこなしきれなくなってしまう懸念があります。

どの現場も作業員の確保に苦慮しています。年間を通じて工事の量に波があると、繁忙期以外の時期に作業員が他産業に移ってしまうため、工事の平準化が一つの課題となっています。対策が行われていますが、年末や年度末に完成予定が集中してしまう傾向はあります。

さらに、新入社員の確保は、かなり厳しい状況です。建設業は「きつい、帰れない」などのイメージがあり、若者から敬遠されています。通信建設各社の元請けでも採用予定人数を確保できていません。一次請け以降の各社についてはさらに厳しい状況です。1〜2人を確保するのがやっとという声も聞こえてきます。

また、現場作業員の高齢化は安全面から課題視されています。

─労働時間はどうでしょうか。

過労死等のニュースが大きく取り上げられたことなどもあり、以前に比べれば、長時間労働対策は進んできました。しかし、業界全体を見渡せば、長時間労働が存在するのも事実です。「働き方改革関連法」が成立し、時間外労働の上限規制が設けられました。建設業については、5年の猶予期間があり、2024年4月から一般と同じ上限規制が適用されます。通信建設業界もこれを受けて大きく変わらなければなりません。

建設業界全般の課題は、休日が少ないことです。元請け、一次請け会社については週休2日制が導入されているものの、二次請け会社以降の現場作業員に関しては週休2日制が導入されていないケースがざらにあります。そうした現場では出来高によって収益が変わる構造があるので、休日返上で働く実態もあります。

背景には、工事単金の問題があります。十分な収入を得るために、より多くの工事をこなそうとする「時間圧」があることも否定できません。労働組合としては、安心して生活できる環境づくりが、今後の大きな課題だと感じています。

─安全労働も大きな課題です。

安全労働は私たちの最優先課題です。ここをおろそかにしてしまえば、企業経営も傾いてしまうことを訴えています。

人手不足は安全労働にもかかわっています。人手不足の現場では、安全教育をしっかり施せないまま新人が現場に投入されるという実態も散見されます。

─労働組合としてはどのような対応をしていますか?

労働災害の撲滅に向けては、春闘時期に「労働安全衛生強化期間」を設けて集中的に注意喚起を行っています。また、現場パトロール活動を実施しているほか、幹事会を中心に再発防止の観点から事故情報を共有するとともに、予防安全の観点から学習会を開催しています。メンタルヘルス対策として、ストレスチェックなどの取り組みも強化しています。

労働時間の問題に対しては、6月と11月の第2土曜日を一斉に休工日にする「一斉安全休工日」を建設産業労働組合懇話会(通称「建設産労懇」)の仲間とともに建設業界全体として取り組んでいます。この休工日については来年4月からステップアップした取り組みにすべく、検討を開始しています。

─通信建設産業の魅力向上のための取り組みを始めたと伺いました。

2017年度から幹事会メンバーを中心に、魅力ある通信建設業界に向けて議論を始めました。具体的には「政策」「安全」「組織拡大強化」「情報宣伝」という四つのワーキンググループを立ち上げ、課題の整理などを行っています。来年の定期大会までに業界の「魅力」について整理を図りたいと考えています。

通信建設業界の魅力向上のためには、休日や賃金、職場環境、知名度などの改善が急務だと考えています。とりわけ、休日の確保は、人材確保のためにも重要です。通建連合の各加盟組合ではこの間の春闘で若手社員の賃金引き上げを勝ち取ってきましたが、若手人材の獲得のためには、休日の確保が必要です。

休日の確保や労働時間対策のためにも、組織拡大が求められます。通建連合には現在、74企業、45労働組合、約1万6700人の仲間が加入しています。しかし、未組織のグループ企業はおよそ100社あり、加盟組合でも非正規労働者の組織化はこれからの状態です。過半数を割ってしまっている事業場も少なからずあります。今後、労働時間の上限規制や、休日の確保のためにも、過半数は確実に確保しなければなりません。

─通信建設業界の魅力をどのようにアピールしたいですか。

大手通信キャリアの認知度は高いのですが、通信建設業界の認知度は残念ながら高くありません。通信インフラを一手に構築できるノウハウや、世界にも引けを取らない高い技術力は胸を張れるものです。また、災害復旧にも迅速に対応しています。通信インフラを支えているという責任と誇りが、やりがいと魅力につながっています。労働組合としては、組織拡大などを通じて、多重下請け問題にも対応し、「格差のない」業界をめざしたい。すべての仲間の労働環境を改善することで、この業界の魅力を社会にアピールしていきます。

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