通信産業のいま発展する中国の情報通信産業
中国国防郵電工会などと交流
2000万人の産別労組
情報労連は9月17〜20日、中央本部のメンバー5人を中国の北京と上海に派遣、中国国防郵電工会などと交流・意見交換を行った。一連の行動で、中国における情報通信産業の現状を把握した。
初日の17日は、北京市内で中国国防郵電工会の楊主席らと会談した。中国国防郵電工会は、(1)国防・科学(2)情報通信(3)郵便(4)電機・電子─の労働者を組織する産業別労働組合。中華全国総工会(ナショナルセンター、組合員数約3億200万人、2016年9月時点)の指導の下で活動しており、2000万人の組合員を擁する。会談では中国の情報通信産業の現状や工会の組織拡大などについてレクチャーを受けるとともに、技術者の人材育成などについて意見を交わした。
中国国防郵電工会の説明によると、中国では2013年末から4Gが展開されており、利用者数は11億ユーザー、カバー率は73.5%。都市部と農村部の社会・経済格差解消のために情報通信の中国全土への普及が必須との政府の考え方の下、農村部のインフラ整備が進められている。また、インターネット料金の低廉化や多数のアプリ開発・運営により、モバイルデータとネット業務が急激に増加している現状について説明があった。
工会の活動としては、技術者の技能大会を開催するなどして、労働者の技能教育に力を入れているとの説明を受けた。
「世界の工場」から「製造強国」へ
翌18日には、日本大使館を訪問し意見交換した。ここでは、中国が中長期戦略として、「世界の工場」から高いイノベーション能力やブランド力を併せ持つ「製造強国」へと転換を図るとする「中国製造2025」などについて説明を受けた。また、中国における労働市場の動向についてのレクチャーも受けた。中国の就業人口は約7億7640万人で、うち都市部に約4億2462万人、農民工(農村から都市部への出稼ぎ労働者)は約2億8652万人となっており、農民工は増加傾向にある。ナショナルセンターである中華全国総工会は中国で唯一の労働組合だが、組織率は37.3%となっており、組織拡大に力を入れている。
世界最大の移動通信企業
19日には、北京市内で中国移動(チャイナモバイル)を訪問し、中国移動北京支社工会のメンバーと会談した。中国移動はユーザー数約8億8000万人に及ぶ世界最大の通信会社。会談では、主に工会の活動に関する説明を受けた。
同社の北京支社には約7400人が勤務しており、工会は北京市内に37の支部を持っている。工会は企業とともに人材育成活動の一環として、成績優秀者を4カ月に1回、表彰する活動を展開している。また、福利厚生は工会を中心に行われており、社内にはジムや卓球台など設備が無料で利用できる工会の施設「職工の家」が設置されている。
翌20日には、上海市内で中国のIT企業である万達情報(WONDERS INFORMATION)を訪問した。万達情報は約4億人の健康情報や、約10億人の社会保険情報を管理する情報システム企業で、公共サービスの電子申請や健康管理、教育、交通など幅広い分野でクラウドサービスなどを展開している。
意見交換では、技術者の人材育成やシステム開発の手法、ITエンジニアの労働時間などがテーマとなった。同社では、技術力向上のために、(1)社内の研究開発センターにおける研修(2)特定の大学と協力関係を結んだ人材育成─などに取り組んでいる。また、IT業界における下請け構造に関しては、派遣や請負契約での労働は存在するが、同じ建物・フロア内では、同一の雇用形態の労働者しか配置しないようにするなどの対応の説明を受けた。ITエンジニアの転職に関して同社では転職後の復職を認めているが、1回限りとしている。
工会がアプリを開発
また、同日には上海市総工会から同会の活動についてレクチャーを受けた。上海市総工会の組織人員は約700万人、120の地域組織と産別が加盟している。日常的に上海市、裁判所などと連携し、労働者の権利擁護、法律相談サービス、生涯教育プロジェクト、労働者の技能向上などに取り組んでいる。また、上海市総工会では、組合員・労働者向けのスマホアプリを開発し、オンラインによる加入申請や相談なども受け付けている。インターネットプラットフォームを利用して働く請負労働者が増えていることから、そうした労働者の組織拡大にも取り組んでいるとの説明も受けた。
中国の情報通信産業は、三つのインターネット企業「BAT」(Baidu、Alibaba、Tencent)に象徴されるように著しい発展を遂げており、世界最大の移動通信会社「チャイナモバイル」、通信機器メーカーの「ファーウェイ」のような巨大企業が通信を支えている。日本と仕組みは異なるが、労働組合の規模は日本と比べると桁違いに大きい。発展する中国の情報通信産業および労働動向を深く知ることは今後ますます重要になる。