特集2018.11

通信産業のいま苦情の縮減とES向上を2本柱に
「携帯ショップ」業界団体に聞く

2018/11/13
携帯電話販売代理店の業界団体が2014年に設立された。協会では苦情の縮減とES向上を2本柱に活動を展開している。取り組みについて話を聞いた。
治良 博史 一般社団法人 全国携帯電話販売代理店協会
理事 会長補佐

協会設立の背景

一般社団法人全国携帯電話販売代理店協会は、2014年12月に設立された比較的新しい業界団体です。

この時期に設立したのには理由があります。2012年ごろ、携帯電話業界では、番号ポータビリティ制などによって顧客の奪い合い競争が激しくなりました。また、スマートフォンの台頭により、端末の高度化・サービスの多様化を背景に、当時、消費生活センターには通信業界に関する多くの苦情相談が寄せられるようになっていました。総務省の電気通信事業政策部会でも実態調査を含めて対策が検討され始めました。

この中で、携帯電話販売店における「クーリング・オフ制」の導入が議題に上りました。「クーリング・オフ制」は通信販売など非対面で契約する分野を想定した制度です。一方、携帯電話販売店では、ショップスタッフが対面販売でお客さまに説明し納得の上で契約してもらいます。仮に「クーリング・オフ制」が導入されると携帯電話販売店のオペレーションが立ちいかなくなるという懸念がありました。

そこで、携帯電話販売代理店としてどう対応すべきかを検討しました。私たちは自分たちの力で業務品質を向上させるべきという認識に至り、その結果、大手広域代理店12社が集まり、業界団体を設立することにしました。

私たちはまず、業務の適正化とお客さまからの苦情の縮減を取り組みの大きな柱に据えました。そして、過剰な販売合戦の中で生じていた販売店スタッフの労働環境の悪化という事態に対応するために、従業員満足度(ES)の向上も取り組みの柱に据え、この2本柱で活動していくことを決めました。

苦情縮減の取り組み

苦情の縮減を進めるために、私たちはまず苦情データを集約するシステムを開発しました。現在では約3400店舗からデータを集めています。その結果、店長や通信キャリアなどに対応がエスカレートする苦情の件数は、月に3700〜3800件ほど集まってきます。店舗のロケーションによって苦情の頻度に偏りはありますが、全体の傾向はつかめます。

このシステムでは、現場の知恵を苦情縮減や業務改善につなげるためにアイデアなどを自由記述できる「改善提案」欄を設けました。改善提案は月に1000〜1200件寄せられます。私たちはこのデータ収集を基に通信キャリアと「苦情対策分科会」を月1回開催し、各通信キャリアとともに業務改善を進めています。こうした取り組みの結果、通信業界に寄せられる苦情の件数は、総務省のデータで2015年をピークに減少に転じました。少しずつですが、取り組みの成果が出始めていると感じています。

従業員満足度の向上へ

もう一つの柱であるES向上に向けては、協会内に「定着率向上委員会」を設置しています。過剰な販売合戦を背景にショップスタッフの離職率が上昇し、十分な教育を受けられない新人が店頭に立ち、定着しないという悪循環も一部で生じていました。そのため、私たちは定着率向上の重要なファクターは、新人時の研修にあると考え、全国規模で新人研修を実施することにしました。一昨年からスタートし、昨年度は年10回ほど開催しました。1泊2日でマナーをはじめ店頭対応などを研修しています。代理店の枠を超えて実施しているため、職場の枠を超えた仲間ができることが、その後の業務での心の支えになっているようです。さらに協会では、3年目の中堅層や、店長、マネジャーを対象とした研修も実施しています。

また、協会では、ショップの定休日やお正月休みといった労働環境などについても通信キャリアと定期的に協議し、働く環境整備に取り組んでいます。

携帯ショップの展望

私たちは、携帯電話販売業界の今後の動向に大きな関心を寄せています。携帯電話端末のインターネット販売などが広がれば、ショップの発揮すべき機能も変わってきます。「モノ」を販売するだけではなく、「コト」を体験してもらうサービスの展開も必要でしょう。「スマホあんしんドック」など、お客さまの来店頻度を高める取り組みなどにも力を入れていきたいと考えています。

また、私たちは一般財団法人マルチメディア振興センター(FMMC)と連携して、「e−ネットキャラバン」に力を入れています。この活動は、子どもたちにインターネットの安心・安全利用を啓発する活動です。全国携帯電話販売代理店協会では、約1400人のショップスタッフがe−ネットキャラバンの講師認定を受け、全国の小中高学校などで講座を実施しています。今年もすでに400回以上実施しています。

この活動に参加したショップスタッフは、子どもたちとの触れ合いや社会貢献の意識などから、モチベーションをアップさせていて、ES向上の一助となっています。こうした活動を通じて、地域との接点を増やしていくことも大切だと考えています。お客さまの満足度が上がるサービスを展開するため、今後も業務品質の向上とES向上に努めてまいりたいと考えています。

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