特集2018.11

通信産業のいま海賊版サイトの接続遮断を巡り議論紛糾
議論の経過を振り返る

2018/11/13
政府の「インターネット上の海賊版に関する検討会議」で海賊版サイトへの対応が議論されてきた。検討会では接続遮断を巡って、賛成派と反対派の意見が対立した。議論経過を振り返る。

4月に政府が緊急対策

政府の知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議は4月13日、インターネット上の海賊版サイトに対する緊急対策を決定した。この中で、インターネット接続事業者に対して、法制度整備が行われるまでの間の臨時的かつ緊急的な措置として、インターネット事業者の自主的な取り組みとして海賊版サイトの接続遮断を行うことが適当とする対策を確認した。

その後、NTTグループは4月23日、海賊版サイトについて接続遮断を実施すると表明。菅官房長官は4月24日の記者会見で、海賊版サイト対策を強化するため、法整備を急ぐ考えを示した。政府から名指しされた「漫画村」など3サイトは同月23日時点で閲覧できず、閉鎖状態になっていた。

政府は6月22日に法制化などを検討する「インターネット上の海賊版に関する検討会議」を政府の知的財産戦略本部の下に立ち上げた。9月中旬までに中間報告をまとめ、来年1月の通常国会に法案を提出する意向と報じられた。

賛成派と反対派の対立

検討会では、海賊版サイトの接続遮断を巡って、賛成派と反対派の意見が対立した。賛成派は、海賊版サイトによって著作権者などの権利が著しく損なわれていることや、運営管理者の特定が困難で侵害コンテンツの削除要請すらできない状況などを挙げて、接続遮断の必要性を訴えた。

一方で反対派は、接続遮断は憲法21条が定める通信の秘密の保護に抵触すると訴えた。特定サイトへの接続を遮断するにはインターネット接続業者が、すべての利用者が接続しようとするアクセス先を調べた上で指定のサイトを遮断する。このため、海賊版サイトを利用しない人の通信も監視されることになる。反対派は、これらは通信の秘密の侵害に当たると主張した。

現状では、児童ポルノに限定して接続遮断が実施されている。この対応は、ネット上で画像が拡散すれば被害の回復が困難であることなどを理由に「緊急避難」として行われている。通信の秘密を侵害する可能性のある法律は、厳格な違憲審査基準をクリアしなければ違憲となる疑いがある。この基準には、他に実効的な手段が存在しないか著しく困難といった要素があり、他に手段がないのかどうかなどが問題となった。10月15日に開かれた会合では、米国の司法制度を活用し、漫画村運営者の特定に成功した弁護士の資料が提出され、反対派から「現状でも対策が可能」という指摘があった。

検討会では、フィルタリングやインターネット広告のあり方の見直しなども議論された。

「とりまとめ」できず

10月15日の検討会では、「中間まとめ(案)」が事務局から提起されたが、法制化に反対の委員9人は連名で意見書を提出し、両論併記でのとりまとめに反対。議論が紛糾し、とりまとめが行われないまま、会議は無期延期となった。10月30日に開かれた知的財産戦略本部の「検証・評価・企画委員会コンテンツ分野会合」では検討会議の座長が法制化について中間とりまとめができなかった経緯を報告した。

情報労連は4月27日に書記長談話を発出、7月の定期全国大会でも政府やISP事業者等の対応を注視していくことを確認してきた。現状では今後の議論は見通せないが、引き続き動向を注視する。

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