特集2019.01-02

政治とのつながりを見つめ直すいくつかのメッセージ労働組合の運動が「無期転換ルール」に魂を吹き込む

2019/01/15
政治と働くこととのかかわりはどうなっているのだろうか。「無期転換ルール」をテーマにそのかかわり方を取材した。法律に魂を吹き込むために一人でも多くの働く人が労働組合の仲間に加わることが大切だ。

「雇用政策」を確立し労使協議

2013年4月に改正労働契約法が施行されてから5年。2018年4月から「無期転換ルール」が本格的に動き始めた。「無期転換ルール」は、民主党政権時に有期契約労働者の雇用安定を目的に導入された。働く現場と政治は、どのようにつながっているだろうか。

NTT労働組合は2016年2月の中央委員会で「雇用の安心・安定に向けたNTT労組の雇用政策」を確立した。主な項目は▼雇用の原則は「期間の定めのない直接雇用」を基本とし、NTTグループにおける雇用制度の実態を踏まえ、雇用の安定・確保に取り組む▼有期雇用者については正社員(無期雇用)への登用・拡大を第一義とし、その上で無期雇用への転換に取り組む─とする内容だ。NTT労働組合はこの「雇用政策」に基づいて労使間論議を進めてきた。

NTT労働組合の柳浦淳史中央執行委員は、「雇用政策」を定めた背景を次のように説明する。

「NTT労組では、法施行以前から、雇用労働政策について組織的検討を進めてきました。2014・2015春闘の結果から、有期契約社員を含む雇用形態の位置付けや役割などについて、労使間での認識合わせが必要になったことなどもあり、『雇用政策』の確立に至りました」

NTT労働組合には、事業会社などに対応した六つの「企業本部」がある。各企業本部は、「NTT労組の雇用政策」に基づき、対置するNTTグループ各社と人員政策論議を深める中で、無期転換の検討を求めてきた。

「会社によっては、無期転換の対象者が1万人を超える状況にありました。法改正の動向を意識しつつ、今後の事業をも展望した戦略的な対応を企業本部から会社側へ求め、それぞれの職場で無期転換の仕組みを整備してきました」と柳浦中央執行委員は振り返る。

具体的な対応は企業本部ごとに異なるが、労使の議論の結果、新たな無期雇用制度と正社員登用の仕組みをセットで整備した上で、2018年4月に先駆けて無期転換への対応をスタートさせた会社もある。

NTTグループの各社では、対象者の大半が、無期雇用への転換を選択しているという。改正された労働契約法が、労使協議を通じてより効果的に、雇用の安定をもたらす方向で作用している。

無期転換の現場の声

「契約更新がいつ終わるかという不安はありました。それがなくなったのは大きいです」

都内にあるNTTのグループ会社で、無期契約の月給制社員として働く村山さん(仮名)は、無期転換で生じた安心感をこう話す。

「ただ、それ以外のところではまだメリットを感じていません」と村山さんは付け加える。改正労働契約法では、対象者の雇用期間を有期から無期に転換するだけで労働条件を引き上げなくても法違反にはならない。村山さんもそのケースの一人だ。

無期転換による安心感は確かにある一方で、村山さんは無期転換に伴う不安も口にする。「無期になったことで仕事に対する上司からのプレッシャーが大きくなりました。契約社員は厳しい処遇の中で働いていて、生活的にも余裕がありません。その中で『がんばれ、がんばれ』とだけ言われても…。契約更新の不安がなくなったのはありがたいのですが、(労働条件が)一生このままなのかもしれないという不安もあります」

他方、NTTの別のグループ会社で働く片山さん(仮名)はこう話す。「年に1回来る契約書が来なくなりました。その安心感はあると思います」。片山さんも無期雇用に対する安心感は認めつつも、自身に無期転換申込権が生じても行使しなかった。「契約終了が怖いというのはありましたが、無期転換してもそれ以外の労働条件で変化がなかったので…。無期になったらそこから給料が上がらないかもしれないという不安がありました」と説明する。片山さんは地域限定の正社員に登用され、処遇が上がった。

片山さんの職場では多くの有期契約社員が無期転換した。だが、雇い止めの心配が従来少ない職場だったため、無期転換した社員の多くにその実感が少ないと片山さんは解説する。「(無期転換で)何が変わったんだろうねというのが正直な話としてあって、無期転換で給料がよくなるかなと話はしています」と語る。

村山さんと片山さん、二人の話からは、無期化から一歩進み、労働条件の引き上げが課題になっていることがわかる。

加入率の高さがカギに

NTT労働組合は現在(2018年12月時点)、無期契約社員の福利厚生の見直しを労使で議論している。「無期になったからこそ、長期間働くために必要な労働条件の積み上げが必要という考え方の下、会社と交渉しています」と柳浦中央執行委員は話す。

そこで重要になるのが、無期契約社員の労働組合への加入率だ。「無期契約社員の福利厚生の改善を会社と交渉してきましたが、足元では対象になっている人たちの仲間づくりが道半ばです。これでは会社に対して説得力を欠いてしまいます」と仲間づくりを担当する大方幹子中央執行委員は説明する。NTT労働組合にはすでに約7800人の「無期組合員」がいるが、その一方でまだ多くの未加入者がいることから、同労組は昨年10〜12月にかけて、無期契約社員の仲間づくりの取り組みを集中的に強化した。労働組合は、一人でも多くの人が労働組合に加入していることが交渉力の強化につながるとして組合加入を積極的に呼び掛けている。

「組合の意見を会社に反映させるためにも、一人ひとりにアタックする意気込みで仲間づくりに取り組んでいます。可能な限り少人数の単位で説明会を開催するなどして、丁寧に呼び掛けています」と、大方中央執行委員は話す。

もちろん、NTT労働組合は「サポート手当」の創設をはじめ、未加入の有期契約社員の労働条件の底上げにも取り組んできた。有期契約社員の雇用不安が少ないのも、労使交渉の長年の積み重ねによるものだ。ただ、組合がたとえ成果を勝ち取っても、未加入の人たちからすれば「組合に入っていても、入っていなくても同じ」になってしまう。労働組合の活動をいかに伝えていくかが大切だと言えそうだ。


労働契約法の改正は、無期転換を後押しした。そこに労働組合が魂を吹き込むことで、法律が生きたものとして職場に反映される。社会的に無期転換の回避を目的とした雇い止めも生じている中で、労働組合の存在は重要だ。

法改正だけでは足りない部分を補い、労働条件を向上していくのも労働組合の役割だ。そのためにも、一人でも多くの働く仲間が労働組合に加わることが大切となる。政治の場での法制定の運動と職場での労働組合活動。この二つが車の両輪となることで、働きやすい職場が生み出される。

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