4月スタート!あなたの職場の準備は?働き方改革関連法情報サービス企業での「働き方改革」
客先常駐、多重下請けなどのはざまで
客先常駐の現場
「1人で常駐する職場を減らす方向に進んでいます」
客先常駐を展開する情報サービス企業X社で働くAさんは、自社の近年の状況についてこう解説する。「常駐先に従業員が1人だと休みが取りづらかったり、負担を分散できなかったりするからです。それが働き方改革の一環になっています」と話す。
X社では、かつて「デスマーチ」がたびたび起こり、従業員が月100時間労働するような長時間労働に追い込まれていた。36協定の特別条項も120時間で締結していた時期もあった。現在は単月で80時間が最長で、年間630時間で36協定を締結している。かつてのような超長時間労働も減少した。
時間外労働が減少した要因は、自社請負のシステム開発をやめたことだ。要件定義での行き違いや、発注先からの無理な仕様変更、バグの発生などで長時間残業が発生し、赤字の要因となっていた。そのためX社は、自社請負の開発をやめ、SESや人材派遣に事業の中心を切り替えた。常駐先は大手企業が多い。それにより長時間労働は減少した。さらに、1〜2人の少数での客先常駐をなるべく減らすことなどで労働環境の改善を図っている。
多重下請けと「働き方改革」
X社は、客先常駐する従業員が大半を占める。「働き方改革」が求められる中、同社の従業員は客先での業務効率化にも取り組んでいる。「どうしたら効率よく定時の中で仕事ができるか、業務の洗い出しをしています」とCさんは語る。
だが、効率化が求められる背景には、顧客からのコスト削減圧力もある。
「弊社が二次請けになる仕事で、一次請け企業から毎年、コスト削減を求められる現場もあります。そうした現場では、かける人数を減らすか、作業の効率化を無理にでもしなければなりません。やるべき業務量は変わらないので、作業を詰め込み過ぎて、ミスや品質低下の原因になって困っています」とCさんは打ち明ける。
一方、Aさんの常駐先は一次請け。「お客さんと直接、折衝できるので調整が利きやすいです。間に挟むとその分、『下』にしわ寄せが来ますからね」とAさんは話す。それでも、従来の取引関係や営業力の格差などから仕事を引き受けなければならない現状もある。
「元請け企業は発注する段階で、費用をある程度上乗せしているかもしれませんが、多重下請けで『下』に流れるほど、その費用は少なくなっています。おそらく元請けにとって、一次請け以下の状況は『ブラックボックス』。下請け企業は苦しんでいるということを知ってほしいですね」とBさんは言う。「働き方改革」では、自社の取り組みだけではなく、関係企業も含めた取引関係の適正化も求められている。
労使が情報を共有して協議
同じく情報サービス企業のY社は、企業内に「働き方改革」を推進する部署を設け、時間外労働の削減に取り組んでいる。背景には、特定部門で月100時間を超える時間外労働が頻発していたことにあった。
Y社では、会議ルールの設定やプロジェクト不調対策などを進めた。取引先を担当役員が訪問し、自社の「働き方改革」を説明することもした。その結果、全社の月平均の残業時間は3年間で8時間ほど減少した。
また、3年ほど前からは、労使協議会で全社の残業時間を毎月チェックしている。月80時間を超える事例があれば、該当する従業員の状況をプロジェクトや人員配置の状況を含めて会社が労働組合に説明する。労働組合もデータや職場の情報を見ながら、時間外労働が多い職場の状況の確認を求めている。労使協議会では議事録を作成し、翌月の協議会で状況が改善されていなければ、再度説明を求める。
特定部門に長時間労働が偏っていることから、労働組合は会社の事業バランスを平準化するようにも訴えている。具体的には、他部門を成長させることで残業の多い部門の負担を減らすことを狙いとし、従業員のスキル向上などを会社に求めている。同時に、業務の属人化を避けるための人材配置や人材育成などの課題も会社と協議している。残業時間の減少に伴う残業代の還元策は今後の課題となっている。
Y社では、労使協議会を頻繁に開催し労使が情報を共有しながら、時間外労働の削減を進めている。時間外労働の上限規制の導入で労働時間の把握などがさらに求められる中で、労使が情報を共有する意義は、「働き方改革」をスムーズに進める上でも大きいと言える。