特集2019.03

4月スタート!あなたの職場の準備は?働き方改革関連法36協定を侮るなかれ
法改正後の新様式をチェック

2019/03/14
改正労働基準法が今年4月から施行されるのにあたり、36協定届の様式が新しくなります。労働組合として気を付けるポイントは?内容をチェックしましょう。
中島 豊一 情報労連アドバイザー
特定社会保険労務士

36協定は侮れない

基本的人権を保障する日本では、相手の時間を勝手に奪い、拘束することは許されません。時間外労働は、労働者を拘束し自由時間を奪う行為です。そのため、労働基準法32条違反には懲役を含む厳しい罰則が科せられています。

しかし次の要件を満たす時には、使用者は、時間外労働を命じても罰せられません。それは「(1)就業規則などで、業務上の都合により時間外労働を命じることがある旨を明示してあること(2)業務上の必要性があること(3)36協定を締結し労働基準監督署に届出ていること」の三つであり、一つでも欠くことは許されません。時間外労働時間が、36協定で定めた上限時間を超えた場合は罰則が科せられることに注意が必要です。

残業しなければ会社が回らないし雇用が守られないという主張もあります。しかし、その考えは「甘え」です。経営者は「切る時は切る」という強固な信念で経営しています。変化の激しい現代は、労働者のエンプロイヤビリティを高めることが、会社を革新し雇用を守ることにつながります。つまり労働者にとっては自分を「安売り」しないことが大切です。そのためにも、労働者の「実質的平等」を確保する(労働力のダンピングを許さない)労働基準法(以下、法)が不可欠です。36協定は時間外労働の上限を規定する大切な法規定です。36協定を侮ってはいけないのはそのためです。

36協定届を点検する

改正労働基準法の施行にあたり、36協定届の様式が新しくなります。その内容をチェックしましょう。

1. 労使協定である36協定「書」と労働基準監督署に届け出る36協定「届」は別物です。ただし36協定届に労働者の過半数代表者の「署名」または「記名・押印」があれば労使協定書を兼ねることができます。

2. 36協定届が労使協定書を兼ねるときは、労使協定の有効期間を定めます。労使協定の有効期間を1年間とすべき法的根拠はありませんが、1年間とすることが望ましいとされます。ただし、労使協定の有効期間がどうであれ、時間外労働の1年間の上限時間を計算する際の起算日は、その1年間においては当初設定した日を変更することはできません。

3. 前2項の場合、36協定届が労使協定書でもあることから、36協定届の欄外に労使協定の内容を記載することは何ら問題ありません。

4. 労使協定により時間外労働を命じる必要のある業務と時間外労働の上限時間を、法定限度時間以内で定め、「様式9号(掲載略)」(様式一覧参照)により届け出ます。この上限時間は、1日、1カ月、1年の期間で定めます。それ以外の期間で定めることはできません。この協定で定めた上限時間を超えた時は労基法32条違反となります。

5. 法定上限時間(単月100時間未満および平均80時間以内)の要件を確認するチェック欄が設けられました。チェック漏れの協定届は無効です。ここにチェックを入れたにもかかわらず法に違反したときは、労使ともに確信犯だと言われても反論できません。

6. 法定限度時間を超えて時間外労働を命じる必要がある場合は、特別条項を締結し、「様式9号の2」により届け出ます。これは2枚つづり4ページであり、1枚目が一般の協定届、2枚目が特別条項です(特別条項は次ページ記載例参照)。原則1枚目で協定した時間が上限時間になりますが、年6回までは特別条項で協定した時間を上限時間とすることができます。

様式一覧

様式9号   一般条項(特別条項なし)

様式9号の2 特別条項あり

様式9号の3 新技術・新商品等の研究開発業務

様式9号の4 建設、自動車運転、医師、製糖

様式9号の5 事業場外みなし労働時間制の付記

様式9号の6 労使委員会決議届

様式9号の7 労働時間等設定改善委員会決議届

様式3号の3 フレックスタイム制

特別条項をチェック

ここでは、特別条項の留意点をチェックしておきましょう。

(1)労働させることができる業務内容は、従来から具体的に記入する必要がありましたが、法改正後は具体性が徹底され、例えば単なる「業務の都合」などは認められない可能性があります。労働側が業務の必要性を厳しく点検する必要があります。

(2)特別条項の上限枠は、「休日労働を含め単月100時間未満」「休日労働を含め2〜6カ月平均で80時間以内」まで設定することができますが、情報労連では過労死認定ライン等を意識し、休日労働を含め月75時間以内での締結をめざします。

(3)特別条項により時間外労働を命じる場合、例えば労働側に事前通知するなどの、労使間の手続きを定めておきます。

(4)特別条項により時間外労働を命じた労働者に対する健康確保措置を定めます。具体的には、2枚目の裏面に、10項目の健康確保措置が列挙されているので、その中から自社で採用する項目を選定し、その番号と具体的施策を記入します。措置は、一つだけに絞る必要はありません。健康確保に向けた必要な措置について労使で協議してください。さらにその実施状況を記録し、当該年度を含め4年間保存しなければいけません。

(5)特別条項付を締結していたとしても、特別条項の上限時間を超えた場合、回数制限を超えた場合、協定されている手続きを踏まずに法定限度時間を超えて時間外労働を行わせた場合は、労基法32条違反となります。

時間把握の義務化も

改正労働安全衛生法により、管理者を含め労働時間を把握する措置が義務付けられました。

1. 管理監督者、事業場外みなし労働時間制、専門型・企画型裁量労働制、新技術等の研究開発業務に従事する労働者の労働時間を把握しなければなりません(高度プロフェッショナル制度は労働基準法により「健康管理時間」を把握)。

2. 1カ月の時間外労働時間が80時間を超えた前1項の労働者には、その旨を必ず通知しなければなりません。

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