特集2019.07

2025年の崖にどう向き合うか「ITエンジニアの労働実態調査」から見える客先常駐の実態

2019/07/12
情報労連「ITエンジニアの労働実態調査」では、客先常駐に関する調査を実施した。調査結果から見える客先常駐の実態を報告する。
齋藤 久子 情報労連中央執行委員

調査の背景

情報サービス産業は、今や企業活動や生活の基盤を支える重要な産業であり、あらゆる産業の発展や社会的課題への貢献が期待される一方、慢性的な人材不足や、長時間労働、メンタルヘルス不調などの課題も指摘されており、これら課題の解決が急務となっている。

情報労連では、情報サービス産業における労働実態や課題の把握を目的に、毎年「ITエンジニアの労働実態調査」(2019年で27回目)を実施している。本稿では、2018年調査で実施した「客先常駐の働き方」について取り上げる。

客先常駐の働き方

客先常駐とは、顧客の事業所に常駐して業務遂行する働き方のことで、セキュリティ上の制約をはじめ、顧客や協力会社との協業が求められるなどの背景から、情報サービス産業では客先常駐を行うことが珍しくない。

今回の調査では、8割の企業が「客先常駐者がいる」と答えており、そのうち、「8割を超える社員が客先常駐者として勤務している」と回答する企業が1割強あるなど、ほとんどの社員が顧客先に出ていて社内にいない、という企業も一部あることがわかった。また、客先常駐を「より増やしていきたい」「現状のまま継続したい」と回答した企業が約半数を占めており、今後も客先常駐という働き方が維持・継続されることが想定される。

なお、企業における最も多い常駐期間は2年以上(55.8%)が半数を占め、自社への出社頻度で最も多いケースは月1回程度(53.4%)が半数を占める結果となった。

客先常駐を取り巻く課題

次に、常駐先への自社の管理監督者の配置の有無を尋ねたところ、「常駐していないがたびたび訪問する」(45.8%)というケースが最も多く、これに「管理監督者が常駐している」(37.1%)が続く一方、「常駐しておらず、訪問も少ない」も1割見られた。

また、客先常駐者に対する時間外労働の管理について尋ねたところ、管理監督者の承認を事後的に行っている企業は約3割にのぼり、事前承認を前提に労働時間管理をしている企業に比べ、月60時間を超える時間外労働が発生しやすくなる、という傾向も見て取れた。

さらに、企業が客先常駐において課題と認識していることについては、「自社への帰属意識の醸成が難しい」(46.6%)、「繁忙に応じた柔軟な配置が難しい」(46.2%)、「メンタルヘルスなどの把握が難しい」(35.1%)、「長時間労働が発生しやすい」(29.1%)等が挙げられた(図表参照)。

出典:情報労連「ITエンジニアの労働実態調査」(2018年調査)

安心して働ける労働環境整備に向けて

客先常駐者の場合、自社から離れて勤務をしているために、管理には困難が伴うことが想定される。しかし、客先常駐というスタイルを採用する以上、遠隔地にいる労働者に対し、どのように安心して働ける労働環境を整備し、労働時間や業務を適切に管理していくのかについて、企業は責任を持って検討し、対策を打っていくことが求められる。

また、情報労連としても、情報サービス産業で働く労働者にふさわしい労働条件・労働環境の整備に向けて何をすべきなのか、調査結果等を足掛かりに、今後の政策論議につなげるとともに、政策の実現に向け、取り組みを推進していきたい。

〈注〉調査方法は、企業の人事担当者などによるExcelファイルの調査票への自記入式(集計対象の企業数は311社)。調査期間は2018年6月〜8月。
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