渋谷龍一のドラゴンノート2021.05

【第4編】パートナー〜そろそろ「オトコ社会」に気付きましたか〜男性学

2021/05/18

これまで書いてきた、あるいは書いていないけれど女性たちのホンネが伝える「オトコ社会」は、女性にとって極めて生きづらい社会です。それをどう乗り越えるのか?

そこに進む前に気になることがあるので寄り道しましょう。「男性学」です。男性学は、女性はつらいかもしれないが男性だってつらいんだ、男性にとっても生きづらい社会なんだ、ということを教えてくれます。

男性が仕事ではなく家事育児や介護を担いたい場合でも、それが許されない社会を問題視しているのです。じゃあ、そうすりゃいいじゃん、と思うかもしれませんが、そう進ませない男性のムラの同調圧力にもすごいものがありますよ。

だから、男性学が社会に向ける視点は、どうせ男性がやることだから、また上から目線なのかな、と女性が毛嫌いすべきものではありません。女性の苦境の裏側から男性に目を向けて同じ原因に立ち向かう点で、女性にとっても有益です。

それは多くの男性が男性学についていけないことからもよくわかります。男性学は最近の流行ではなく、古くからありますが、男性学が思うようには社会は変わっていません。つまり、男性学もずっと微力なのです。

それでも、男性学は潜在的に大きな武器を持っています。第一に、男性の側で仲間を集められるため、長時間労働と短時間労働、仕事と家事育児介護、正社員と非正規などを組み込んだ日本のキホン(第18話)を乗り越えるためのルートを増やせることです。

第二に、男性の側からわが家の子どもの教育を変える可能性を生み出すことです。社会を変えるのなら、腰を据えてこれまでの教育を疑うことは必須です。男の子、女の子を変えていくときに男性が抵抗して妨害しない唯一の死角が男性学です。

男性が女性より優位な「オトコ社会」で男性自身が男性を変えようという営みですから、異論や紆余曲折がありましょうが、期待を寄せてよいはずです。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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