トピックス2021.05

労働安全衛生
高年齢者の労働災害を防ぐテレワークのメンタルヘルス対策
労働安全衛生は情報労連運動の結集軸
「組織労働者は未組織労働者のために」

2021/05/18
1962年に情報労連の前身である「電通共闘」が結成された背景には、未組織の通信建設労働者の労働安全衛生の問題があった。以来、情報労連は労働安全衛生を運動の基軸として、さまざまな活動を展開してきた。
髙代 守 情報労連中央執行委員

60〜70年代に死亡事故が多発

情報労連の労働安全衛生の取り組みは、1962年の組織結成(当時「電通共闘」)の主要な、あるいは中心的な原動力でした。当時、劣悪を極めた労働条件下にあった通信建設労働者は、その多くが未組織労働者であり、組織化の結集軸となりました。

1960年代後半から1970年代後半にかけては、毎年30〜50人の死亡事故が発生していました。そうした状況下、電通共闘は、「産業実態調査報告書──電気通信工事を中心とする調査結果と政策提起──」を1973年に報告。事故原因を労働者内部の矛盾に転嫁させない「不注意論の克服」や、産別として危険な作業現場そのものを電気通信産業からなくすなどの立場の確立しました。

また、電通共闘は、多発する死亡事故に対して政治闘争を展開。その結果、同年「安全対策審議会」が、国、発注者である電電公社(当時)の労使、元請労使などの参加により整備されました。

安全労働の今日的課題

翻って、2014年度から本年3月末までの死亡事故状況については、表のとおりです。高所からの転落が原因の約半数を占め、被災者はほぼ未組織労働者です。現場第一線の安全意識喚起、基本動作の遵守等を含めた第一線へのアプローチのさらなる強化が今日的課題です。

また、近年では、通信設備以外における死亡事故も発生しています。情報労連は、「建物建築工事等安全対策協議会」を立ち上げ、建物維持管理業務等を含めた安全労働確立に取り組みを強化しています。

死亡事故を含めた人身事故は減少傾向にありますが、「ゼロ災」にはいまだ道半ばです。とりわけ過去の類似事故が再発していることに対して、本年1月に現場第一線一人ひとりの安全労働の実践・徹底につなげる取り組みとして「パートナーシップセミナー」を開催し、労使一体となった労働安全の取り組み強化を図りました。

安全対策審議会からスタートした情報労連と発注者労使、元請け労使、通建連合を構成とする安全対策推進機構は、その後、安全対策協議会、各地方における安全対策連絡会へとその協議体組織を拡大させ、今も安全労働の確立に向けた取り組みを展開しています。

メンタルヘルスとテレワーク

情報労連は2000年以降、メンタルヘルス対策を具体化してきました。グローバル化やインターネットなどの技術革新等により、労働者を取り巻く環境は大きく変化しています。これまでの物理的な環境面での課題から人と人との関係環境についての課題が顕在化する中、情報労連では「安全で安心して働ける」職場環境の構築に向けて取り組み、労働安全衛生強化月間を通じた意識喚起などに取り組んでいます。

また、コロナ対応をきっかけに急速に普及したテレワーク勤務の心身両面での課題把握とその改善に向けて、ICT産業の主要産別としての情報労連の役割が期待されていることから、取り組みの前進を図っていきます。

2012年のロンドンオリンピックで死亡事故がゼロであった英国の労働安全管理体制や、同国における建設規則等の考察を行った通建連合・梅田貴史事務局長の論文「通信建設業における労働安全衛生の確立に向けて」は、情報労連の今後の労働安全衛生運動を進めるに当たって多くの示唆を与えてくれます。

超少子高齢化社会でも、多くの人が働きたい、働き続けたいと思える「働く場」の構築に向けて、情報労連結成時の「組織労働者は未組織労働者のために」を通奏低音として胸に抱き、運動の前進を図っていきます。

表 【2014年度〜2020年度(2021年3月末現在)の死亡事故】
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