常見陽平のはたらく道2021.06

会社の男女平等
若者に追いついているか?

2021/06/14
男女平等に関する若者の意識は昔とはすでに違う。その意識に会社や社会は追いついているのだろうか。

「男女平等」に対する若者の関心、熱を日々感じている。大学教員として、日々学生と接しているが、普段の会話でもよくこの話題が飛び出す。今年に入ってからも、女性蔑視と取られかねない政治家の発言や、CMが「炎上事案」となった。

就職先を選ぶ際も、男女関係なく「生活との両立」を重視する声があがる。「若いうちは仕事に没頭するべきだ」「若者が働く意欲が薄いだなんて」という見方もあるかもしれないが、これが現実だ。必ずしも報われないのにもかかわらず、全身全霊を込めて働くことが正しいのかどうかこそ疑うべきである。

「男女平等」というと、女性の地位向上がわが国にとって課題である。ただ、会社や社会における男性のあり方にも問題がある。誰に対しても優しく、尊重される環境を期待していると感じる。一方、いまだに「長男だから、就職先は親元に帰らなくては」などという「男らしさ」に縛られた声も聞くのだが。

卒業論文で関連した研究などをテーマに選ぶ学生が増えている。本学部の学生の卒論テーマをみても「男女によるランドセルの色の違い」「男性育休」「下着と女性らしさ」「女性議員」「女性ラッパー」など、何らかのかたちで男女平等に関係したテーマが挙がっている。

一方、社会はどう動いているか。5月のある日、ヤフートピックスで「住友生命が女性管理職50%に。25年度末には役員登用も」という記事を見かけた。4月に就任した新社長が意気込みを語っていた。

なるほど、時代の先端をいく取り組みにも見える。数値目標や期日を掲げたことを評価する人もいることだろう。

ただ、私は率直に「遅い」と感じた。なぜならば、同社は以前から「女性が活躍する企業」としてブランディングを続けてきたからだ。約10年前には青山のおしゃれなカフェを、貸切にして産休・育休から復帰した女性社員と女子学生が交流する「女子会セミナー」を開催していた。これまでもさまざまな取り組みをしてきたのにもかかわらず、今さらこの目標を掲げるのはむしろ敗北宣言ではないか。

ある経団連企業の労組関係者は、勤務先のダイバーシティー推進に対して苦言を呈していた。これらの策を打ち出してはいるものの、あくまで株主やメディアにアピールするための、見栄えだけを考えたものではないかという問題提起していた。私もそう思う。

一方、男女平等に関して配慮が足りないCMなどの炎上事件もよく起こっている。明らかに問題があるものもあれば、賛否が分かれるものもある。中には「これのどこが問題か」と疑問が呈される場合もある。価値観も揺らいでいる。

もっとも、男女平等関連に関して触れるとたたかれるという風潮もよくない。結局、たたかれないための対策になってしまう。本末転倒だ。

若者たちの男女平等に対する意識は高まっている。会社と社会は追いついているか。これまでも問題意識は共有され、さまざまな策が実行されてきた。新たな施策の「やってる感」が演出されるが、これまでどうだったのかを振り返りたい。まずは自分の職場は男女平等だと言えるのか。議論を進めよう。

常見 陽平 (つねみ ようへい) 千葉商科大学 准教授。働き方評論家。ProFuture株式会社 HR総研 客員研究員。ソーシャルメディアリスク研究所 客員研究員。『僕たちはガンダムのジムである』(日本経済新聞出版社)、『「就活」と日本社会』(NHKブックス)、『なぜ、残業はなくならないのか』 (祥伝社)など著書多数。
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