渋谷龍一のドラゴンノート2021.08-09

【第5編】働く・2〜「F型」で考えてみましょうか〜ジョブ型?

2021/08/16

2020年1月、経営者団体の会長が、これまでの日本の雇用の仕組みを見直すと発表し、「ジョブ型」を提起しました。これを受けてジョブ型の切り替えを公表する大企業が次々に出てきました。

ジョブ型は、一言でいうと職務を軸に、雇用や働き方を管理する世界標準の手法です。ジョブ型と対比すれば、日本企業は、労働者を人事部が自在に管理するメンバーとして扱う「メンバーシップ型」と呼ぶことができます。日本では、メンバーとして囲いこんだ労働者に対してさまざまな仕事、さまざまな勤務地に就かせて働かせる。いわば「無限定正社員」のやり方です。

つまり、ジョブ型(JB)は「就職」で、メンバーシップ型(MS)は「就社」(日本では日常会話では就職と言うので紛らわしいのですが)ということになります。この2つのタイプは濱口桂一郎さんが命名しました。

しかし、JBにシフトしたという企業は、MSのまま成果主義にしただけで、JBとは関係ないよ、と濱口さんは嘆きます。そりゃ、そうでしょう。極論ですが、配置転換がなく当然転勤もなく、上司から仕事ぶりや成果の評価を受けることもなく、職場の中で勤続期間が長い順に昇進することも多いのがJBですから。

シリーズ第5編は、第2編「働く」から続く「働く・2」にします。コロナ禍もあって、経営者団体や企業は、やたらジョブ型路線を敷こうとしているようです。でも、JBに切り替わるわけではなし、できっこない。

それなのになぜ? それをあなたが考えることに大きな意義があります。人ごとみたいに言わないで、働くあなたをどう扱おうとしているのか、これまでのシリーズで学んだことを振り返りながら、自分ごとにしてみてください。JB騒ぎは、実はいろいろなことがあらわになるので、本当のことを知るチャンスです。

渋谷 龍一 (しぶや りゅういち) 労働ジャーナリスト
日本労働ペンクラブ会員。主著に『女性活躍「不可能」社会ニッポン 原点は「丸子警報器主婦パート事件」にあった!』(旬報社)がある。
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