コロナ禍で露呈した社会の危機
次への備えを万全に
執筆時点、政権をかけた第49回衆議院議員選挙戦の真っただ中である。本誌がお手元に届く時には、選挙も終わり、国民から負託された政権がスタートしている。現時点、選挙の行方はわからないが、今は、情報労連の組織を挙げて全力で取り組むのみだ。選挙結果を踏まえ、今後の政治活動に向けたコメントについては次号とする。
さて、「新型コロナウイルス」は、第5波と呼ばれた爆発的な感染状態が収まりをみせており、10月から緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が全国一斉で解除され、街には人々のにぎわいや飲食店の明かりが戻りつつあり、平常を取り戻す動きが出てきている。
10月下旬の今日時点での感染者数は、対前週を下回る日が続いており、入院・療養者数や重症者もピーク時から大幅に減っている。しばらくぶりの低い数字に安堵を覚えるのは私だけではないだろう。
急減の要因をめぐっては、ワクチン接種の進展が奏功したのは間違いないようだが、専門家の間にもさまざまな見解がみられる。この間の行動制限や自粛などの影響から落ち込んだ経済・消費の回復を図ることは重要であるが、接種が進んだ国で感染が再拡大している例もあり、拙速的な全面解除は禁物だろう。専門家からは、今冬にも第6波がくると言及されており、警戒を怠らず第6波への備えを確実に行う必要がある。
忘れてならないのは、第5波の中でさまざまな危機的状況が起こったことだ。朝日新聞の調査では、8月末までに自宅療養中などで亡くなった人が、全国で206人に上り、第5波が本格化した8月が最も多かったと報じられた。東京都では、8月以降、自宅療養中の死者が53人に上ったそうである。妊娠8カ月の女性が感染を理由に複数の病院から入院を断られ、自宅で出産したが、新生児は亡くなるという痛ましい出来事もあった。
課題解決へ労使協議をフォロー
また、長引くコロナ禍で経済の落ち込みも深刻となっている。東京商工リサーチによると、コロナ関連による企業の破綻は9月に単月として過去最多の160件に達し、累計で2000件を超えた。厚労省からは、解雇や雇い止め(見込みを含む)は11万7047人に達すると報告されている。表に出ている数値以上に、学費が払えず大学を辞めた学生や自主廃業件数は過去最多となるなど「コロナ難民」と呼ばれるまでに深刻な問題が生じている。政治の役割が極めて重要であり、選挙後、政治が真っ先に取り組まなければいけない課題である。この間、緊急事態宣言下で5カ月間も実質的な国会審議が行われず、政治が機能不全となっている。コロナ禍で起こったことを検証し、次への備えに万全を期す必要がある。
一方で、感染状況が落ち着いている時に、コロナ禍で滞っている課題解決を探る好機でもある。情報労連においては、加盟組合が属する会社業績の立て直しを最優先に、当該組合の労使協議などを積極的にフォローしていきたい。また、秋期の重要な時期となることから、感染に十分な防止策を図りながら、コミュニケーション活動などの組織強化の取り組みを展開していくこととする。