自分の道を選ぶ権利
成長する自由を手放さない
友人・知人の「新しいチャレンジ」の話を聞く機会が増えた。転職、副業開始、大学院進学などである。新型コロナウイルスによる変化で人生を考え直した人たちだ。
「35歳転職限界説」という言葉があったが、年収や役職にこだわらなければ、転職は可能ではある。先日もアラフィフにしてIT企業をやめ、アグリビジネスへの転身を考えている友人の話を聞いた。これからの人生は選択肢を「広げる」よりも「絞る」ことが大切だと考えたのだという。第一次産業は社会の柱であり、彼の昔からの夢だった。胸が熱くなった。
現在育休中のエアライン勤務の女性は、育休から復帰後は、母親と連携して新たなビジネスを立ち上げるのだという。むしろ、CAの仕事が副業になりそうな勢いだ。インフラ企業勤務の男性は、2度目の大学院進学を果たす。働くうちに、新たに学びたいことができたのだという。働きながら、新たな選択肢を手に入れることもできる。
思えば、私自身、何年かに一度、異動や転職など「変化」を自ら創り出してきた。会社員時代の勤務先は、「社内転職制度」を導入していた。求人情報が開示され、応募者が異動先に「内定」すると現部署には異動の拒否権はなかった。この制度が導入される前からキャリアに関する面談や研修は充実していた。だんだん、数年に一度、組織の外に出ることも含め次のステージを探すようになっていた。
「自分の人生は、自分で決める」。少年漫画やJ-POPでよく登場するフレーズだ。「生きること」と「働くこと」は密接につながっている。それぞれ自分の意志で選択できることが理想ではあるが、必ずしもそうはならない。組織の論理での異動などもあり得る。ずっとプレーヤーとして活躍したくても、管理職に抜てきされるかもしれない。ワーク・ライフ・バランスの観点からも、テレワークの普及からも転勤は見直されつつあるが、それでも日本、いや地球、近い将来には宇宙のどこかに行く可能性があるのが会社員なのだ。
皆さんの勤務先には「選択肢」、つまり事業部や職種、働き方などを選択する権利が用意されているだろうか。現状、希望する仕事をするだけの知識や能力がないのなら、トレーニングの機会はあるだろうか。
「働く喜び」というものは、ときに使用者側に悪用されてきた。昨今、話題となる「明るく楽しいブラック企業」などがそうだ。「やる気に満ちあふれた職場」は素晴らしいが、マインドコントロールによって実現し、結果、働きすぎてしまうのは問題ではある。
とはいえ、労働者として仕事を通じた幸福を実現することは権利の一つである。与えられる喜びだけではなく、幸せに働くための選択肢が必要だ。退職しなくても、社内でやりたいことが実現できるのなら、人材の定着にもつながる。
さて、皆さんはどのように働きたいのか。その働き方の選択肢を勤務先は用意しているのか。幸せに働きたいという思いを自粛してはいけない。それはあなたの当然の権利なのだ。職場を変えるためにも、あなた自身が職業生活を通じて幸福を追求する権利、成長する自由にもっと貪欲でなくてはならないのだ。