トピックス2022.03

トップ対談 立憲民主党の針路を語る政権交代の選択肢になるために
立憲民主党が何をする政党なのかを示す

2022/03/15
2021年11月、立憲民主党の代表に泉健太議員が選出された。泉代表は、総選挙をどう振り返るのか。そして、立憲民主党は国民のために何を掲げ、何をしてくれる政党なのか。安藤委員長が泉代表に聞いた。
泉 健太 立憲民主党代表
安藤 京一 情報労連中央執行委員長

支持率は伸びる?

安藤立憲民主党は、昨年の総選挙で改選議席を下回る結果になりました。立憲民主党の政策内容が、多くの一般の有権者にまで広がりきらなかったことが、選挙結果に現れたと捉えています。

本日は、立憲民主党が政権交代の選択肢になるために党をどう導いていくのか、そのための重要な選挙となる参議院議員選挙に向けて戦略をどう描くのか、そのあたりのことを伺いたいと思います。

まず、立憲民主党の支持率が低迷している原因をどう捉えていますか?

目まぐるしい変化を遂げる情報通信産業の中で、組合員の雇用や労働条件を守る運動を続けてきた情報労連の皆さんにまず敬意を表します。

成長と分配という文脈では、立憲民主党は分配に偏った印象を持たれがちですが、私たちは成長の重要性もしっかり掲げています。特にデジタル分野の成長は、これからの日本に不可欠な要素です。情報労連の皆さんの産業政策、労働政策に期待していますし、連携を深めていきたいと考えています。

立憲民主党は2017年、約50議席という「過去最小の最大野党」としてスタートしてから、昨年の衆議院議員選挙では約240人の候補者を立てるところまで4年間で急成長を遂げました。その上で「政権選択選挙」と銘打ち、満を持して挑んだ選挙でしたが、まさかの「敗北」でした。

ですが、「敗北」には「まさか」はなく、必ず原因があります。一つは政策を打ち出す時期が選挙の直前になってしまったこと。そして、同じく直前に打ち出した野党連携や政権構想のあり方について、有権者の理解を得られなかったことがあると捉えています。

支持率については、執行部が代わったくらいでは、すぐには変わりません。しかし、臨時国会が始まってから、立憲民主党が政府の政策を転換させる場面が徐々に出てきています。18歳以下への「クーポン券」配布を現金でも可能にしたことや、オミクロン株の濃厚接触者の待機期間を10日から7日に短縮したこともそうです。

政策立案型政党として再起動し始めた新執行部の下で、政府の政策が変わりつつあります。そうした中で徐々にですが、支持率も一部メディアでは回復が見られています。

立憲民主党が培ってきた政策や路線そのものは、とてもいいものなので、これらを武器に国会で論戦していけば、支持率の回復につなげていける。立憲民主党はここから伸びる。そう思っています。

総選挙の反省点を語る

安藤昨年の総選挙では私も多くの選挙区で話を聞きました。コロナ対策をはじめ政治の重要性が認識されなければならないはずなのに、選挙区を回っても、盛り上がりをあまり感じませんでした。実際、蓋を開けたら戦後3番目の低投票率でした。

2009年の政権交代の前の民主党には、新しい社会をつくるという期待感や高揚感がありました。選挙区でマニフェストを配っても多くの人が手にとっていきました。今回の選挙にはそうした高揚感を感じませんでした。

つまり、立憲民主党に政権を任せてみようという期待感が生じなかった。菅政権から岸田政権に変わり、自民党政権が立憲民主党寄りの政策を打ち出したことで、政策の違いが見えづらくなり、また、共産党との関係でも、立憲民主党の政策が見えづらくなりました。その結果、立憲民主党がどのような社会をつくるのかが示しきれていなかったと思うのです。

執行部としては、衆議院議員選挙をどう総括したのか。ポイントを教えていただけますか。

まさにそのとおりで、私たちは「政権選択選挙」と銘打つことまではできましたが、自民党に代わる政権がどのような政権かまでを国民の皆さんに伝えきれませんでした。

市民連合や共産党との関係において、立憲民主党の独自政策を国民の皆さんに示しきれませんでした。共産党との関係では、単純な票の足し算ではもっと多くの選挙区で勝利できたはずでしたが、そうなりませんでした。候補者を一本化した効果はあったものの、そのことで政策の違いが見えづらくなるなどのマイナスの現象も起きました。

また、実際はそうではないのですが、立憲民主党は批判ばかり、反対ばかりというレッテル貼りを許してしまいました。立憲民主党は、野党第一党であり、自民党に対峙する存在として、政権の疑惑や不祥事、理不尽を許さないという立場で、さまざまな追及をしてきました。これは社会正義の実現という点で欠かせないことなのですが、安倍・菅政権の度重なる不祥事・疑惑ばかりが論戦のテーマになってしまったことで、立憲民主党の政策を国民に伝えきれませんでした。国民からすると自民党と常に闘っているけれど、自分たちのために何をしてくれるのかがわからない存在と映ってしまったのではないでしょうか。これも一つの反省点です。

ですから、新執行部としては、まずはどの党と連携するというより、立憲民主党は何を掲げている政党なのか、国民のために何をする党なのかということを示す必要があると考えています。

立憲民主党は何をする政党なのか

安藤同感です。立憲民主党が何をする政党なのかが問われているのだと思います。

情報労連では衆議院議員選挙後にNTT労組を除く組合員にアンケートを取りました。その結果を見ると、投票先の割合は、選挙区、比例区ともに自民党と立憲民主党が拮抗していました。

また、政治に期待する項目を複数回答で聞いたところ、「年金」や「子育て・教育」「景気対策」「コロナ対策」「医療・介護」といった項目が上位に上がりました。一方で「憲法」や「外交・安全保障」は低い結果でした。日常生活に関係することに多くの関心が集中していることがわかります。

裏を返せば、将来に対する不安の表れではないでしょうか。こうした課題に対して、立憲民主党が安心できる未来像を示していけるかが問われていると思います。

立憲民主党がめざす社会像や、有権者のために何をしてくれる政党なのかを教えていただけますか。

私は、自民党にはできない、「人を元気にする」「みんなが元気になる」、そういう社会をめざしたいと考えています。

今の日本社会を見渡したとき、人が元気な社会になっているでしょうか。社会に広がった格差や貧困、孤立や孤独。経済的な環境にかかわらず生きづらさを抱えている人がたくさんいます。

少子高齢化への対応や介護人材の不足、地方の衰退、バブル崩壊以降の経済の低迷──。こうした構造的な課題に自民党政権は応えきれていません。私たちは、そこに果敢にチャレンジする政党であることを訴えていきたいと考えています。

そのためにも、中間層を含め、多くの方に共感してもらえる経済・社会保障政策が重要だと考えています。例えば、子育て支援。子育て世帯を支える公的支援をもっと強化していくべきです。住環境の改善にも取り組みたいと考えています。都市部の過密を防ぎ、地方への分散を勧めつつ、ゼロエミッションを始め、住居の快適性を高め、持続可能な社会を構築していく。そのために公共交通や通信、医療や教育の環境も整えていく。暮らしを支える「ベーシック・サービス」を整えることで、皆さんの生活の質を高め、多くの方に共感してもらえる政策を打ち出していきます。

さらには、多様性を認め合い、一人ひとりが社会の中で能力を十分に発揮できる社会をつくること。ジェンダー平等の実現や、LGBTQの方の権利保障、選択的夫婦別姓制度の導入などもめざしていきたいと思います。

働く人のために何をする?

安藤働く者の立場に立つ政党として、働く人や労働組合の声を政治にどう反映いけるでしょうか。

私たちは、生活者・働く者の立場に立つ政党です。労働政策では、「同一価値労働同一賃金」の実現や、希望すれば正社員になれる社会の実現、最低賃金の引き上げなどを訴えています。

連合の皆さんとは定期的に政策協議を行っていますし、産別の皆さんから意見を伺っています。労働組合の皆さんの声を、政府や省庁に届け、一つでも多くの政策を実現させたいと考えています。

私から皆さんにお願いしたいのは、組合員の皆さんの声をもっと聞かせてください、ということ。国会議員でも自治体議員でも構いません。職場や地域、家庭で抱えている困りごとを聞かせてください。私たちは、その困りごとを一つずつ解決していく手伝いができます。投票したらそれで終わりではなく、生活改善のために議員をもっと使ってください。それは議員の励みにもなります。

立憲民主党の価値とは

安藤組合員の中には、政治活動の必要性は理解しても、その手段がなぜ立憲民主党なのかに疑問を持つ人もいます。情報労連がなぜ立憲民主党を応援するのか、組織内候補をそこから出すのかも問われるようになっています。組合の執行部としても、そこをきちんと説明しなければいけません。

労働組合には、組合員を代表するだけではなく、未組織の労働者も含めてすべての労働者を代表する視点をもった活動が求められています。社会的な不条理や人権、差別、格差などの問題、さらには平和、環境などの課題をパッケージとして捉え、どういう社会になれば暮らしやすい社会になるのかという運動論を確立し、だからこの政党と歩調を合わせるんだという論理を組み立てなければいけません。その点、いかがでしょうか。

立憲民主党の価値を皆さんにぜひ知っていただきたいと思います。

現状、野党第一党の立憲民主党としては、現政権とは異なる選択肢やオルタナティブを示していく役割を担っています。その視点は経営者や権力者の立場ではなく、生活者や働く人の立場に立つものです。政治に、経営者や権力者の視点しかなければ、働く人の権利が制限されたり、格差が広がったりしても、声を出せなくなってしまうかもしれません。そうならないためにも、生活者・働く人の立場に立った政党が必要です。

また、政権交代そのものにも非常に大きな役割があります。欧米では、政権交代を機に政策転換を図ることが一般的に行われています。同じ政権が長く続くと、政策の優先順位を変えられず、時代の要請に対処できません。実際、日本は低成長が続き、賃金も低迷し、世界の市場から取り残されつつあります。時代にあった日本に変えていくためにも、政権交代を利用して、政策の転換を図っていく必要があります。

政権交代のために立憲民主党に期待されているのは、党としての安心感や安定感、信頼感ではないかと捉えています。外交・安全保障や経済政策では、違いばかりを強調するのではなく、現政権から維持するものは維持していきます。その上で、変えるべきことを明確にし、訴えていきます。

将来的な理想像を掲げつつも、一朝一夕で実現しない課題も現実的にはたくさんあります。だからこそ、ロードマップを描き、政策を着実に一つずつ前に進める実現力を高めていきたいと思います。

日米安保体制や自衛隊など、政策的に整合性があると国民の皆さんから受け止めてもらえる形で政権構想を打ち出すことが必要だと考えています。

石橋みちひろ議員へのメッセージ

安藤最後に石橋みちひろ参議院議員および情報労連組合員へのメッセージをお願いします。

石橋みちひろさんは、情報通信政策、そして人権政策、働く方々の待遇改善に力を尽くしてきた議員です。私たちはその力を引き続き必要としています。

SDGsや「ビジネスと人権」が世界的なテーマになる中で、「人間らしい働きがいのある仕事」や人権を守ることは、企業の持続的な成長にも欠かせない時代になっています。

その中で、石橋議員の果たす役割はとても大きい。情報労連の皆さんには、そういう議員を応援していることを誇りにしてもらいたいと思います。

私は、新体制の下で立憲民主党のイメージをポジティブに変えていくつもりです。それが浸透すれば立憲民主党の支持率は上がっていくと思っています。愛されて親しまれる立憲民主党に変えていくので、引き続きご支援をお願いします。

安藤私たちも応援団として頑張っていくつもりです。本日は貴重なお時間をありがとうございました。

(対談:2月16日)

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